金市場ニュース

ニュースレター(2025年1月17日)トランプ大統領就任を前に金価格は週間の上昇、ポンドとユーロと人民元建ては史上最高値へ

私は本日まで日本に滞在していますので、英国からのニュースは今週までお休みさせていただきます。

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格(午後3時)と比較すると、0.91%高でトロイオンスあたり2712ドルと週間のじょうしょうで、ほぼひと月ぶりの高さへ上昇しています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格(午後12時)と比較して、0.87%高のトロイオンスあたり30.62ドルと週間の上昇となっています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から1.97%安でトロイオンスあたり943ドルと週間で下げています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA PMパラジウム価格(午後2時)から0.28%安でトロイオンスあたり949ドルと週間の下げとなっています。

今週のの金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、来週月曜日のトランプ次期大統領の就任を前に、関税を含む高インフレ的政策への懸念から金は安全資産の需要で上昇し、ポンド建てとユーロ建て、そして人民元建てでは史上最高値を更新し、銀、プラチナ、パラジウムは、景気後退の懸念からもほぼ前週終値、もしくはそれを下げて終わる傾向となっています。

また、今週は米卸売物価指数と米消費者物価指数が発表され、若干鈍化したことが見られたことからも、また、ウォラーFRB理事が早期の利下げの可能性に言及したことで、FRBの利下げ観測も広がっている模様です。

そこで、今週のチャートは、FOMCメンバーの今年末の金利予想(赤点線)と市場の予想(青)、そして、ドル建て金価格(深緑)のチャートをお届けしましょう。市場の予想がFOMCメンバーの予想に近づく中で、金価格は他の要因からもより大きく上昇していることが見られます。

FOMCメンバーと市場の年末政策金利予想とドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

なお、貴金属業界の注目はトランプ次期大統領が、貴金属へも10%等の何らかのの関税を課するのかということですが、そこで、現物の世界の中心地であるロンドンの現物価格のベンチマークのLBMA価格とニューヨークが中心の先物価格の差が広がりつつあることです。

通常この価格に差が出た場合は、地金現物をロンドンからニューヨークへ輸送して裁定取引が行われてその差が減少しますが、関税が課される場合は、その取引が効率よくできなくなるという懸念です。この件については、来週以降貴金属に関税が課されるのかも含めてお伝えします。

今週の金相場について

月曜日金相場は、前週の上げ基調を受け継いでトロイオンスあたり2693ドルへと上昇し、英国ポンドとユーロ建てで新高値をそれぞれトロイオンスあたり2219ポンド、2637ユーロと更新後、ドルと長期金利がそれぞれ26か月と15か月ぶりの高さへ上昇する中で、全ての通貨建てで上げ幅を失って下げて、2670ドルで終えていました。

ドルと長期金利が上昇していた背景は、前週金曜日の米雇用統計が予想を上回り、トランプ新政権の経済政策がよりインフレを引き起こすものという観測で、FRBによる利下げが遅れる観測が広がっていることからですが、来週発足する新政権への懸念は金の安全資産の需要を高めてサポートとなっていました。

そこで、金と長期金利の歴史的な負の相関関係が薄れていました。

火曜日金相場は、米卸売物価指数が予想を若干下回ったことで、前日の下げ幅を多少取り戻して、トロイオンスあたり2672ドルへ上昇して終えていました。

同日発表された米卸売物価指数は、前年同月比3.3%と前回の3.0%を上回ったものの予想の3.4%を下回り、前月比でも0.2%と前回の0.4%と予想の0.3%も下回っていました。 そこで、翌日の米消費者物価指数の発表の前に、長期金利が4.8%と15か月ぶりの高さ、ドルもまた26か月ぶりの高さを維持する中で、多少前日の下げ幅を削っていました。

水曜日日金相場は市場注目の消費者物価指数が、まちまちであり、一部予想を上回ったことからも、発表後一時トロイオンスあたり2677ドルまで下げたものの、その後戻して2695ドルで終えていました。

米消費者物価指数は前月比0.4%と予想と前回の0.3%を上回り、前年同月比2.9%と予想と同水準で前回の2.7%から上昇していました。しかし、コアにおいては前月比0.2%と予想と同水準で前回0.3%から下げ、前年同月比でも3.2%と前回と予想の3.3%を下回っていました。

そこで、結果は市場予想ほどの高インフレではなかったということで、ドルと長期金利が若干下げ、金を押し上げていました。

木曜日金相場は、ウォラーFRB理事のハト派的コメントを受けて、長期金利が15か月ぶりの高さから、米ドルが26か月ぶりの高さから若干下げ、来週月曜日のトランプ政権発足を前に、トロイオンスあたり2724ドルとひと月ぶりの高さへ一時上昇して2714ドルへ戻して終えていました。

ウォラー理事はCNBCに対し、インフレデータが良好であれば、2025年前半に再び金利を引き下げる可能性があると述べ、また、同日発表された米小売売上高は予想を下回り、新規失業保険申請件数は予想を上回っていました。

そこで、FRBの利下げ観測が再び広がると共に、トランプ政権発足を前に、金の需要が高まっていた模様です。

なお、同日ユーロ建てとポンド建て、そして人民元建て金価格は、それぞれトロイオンスあたり2645ユーロと2230ポンド、そしてgあたり636.95元と史上最高値をつけていました。

本日金曜日金相場は、前日の上げ幅を戻して、ロンドン時間昼過ぎにトロイオンスあたり2704ドルまで下げて推移しています。

本日は、トランプ次期米大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を行い、世界最大の経済大国である2国間の関係の基調となる可能性があるとの見出しもあり、リスクオン基調となっており、S&P500種株価指数は1%近く上昇し、ベンチマークとなる株価指数は選挙週以来、週ベースで最大の上昇となる傾向です。

そこで、金の上げ幅は抑えられている模様です。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、今週月曜日に1月7日までのデータが発表されて、1月20日のトランプ氏の大統領就任を前に関税等の政策への懸念から、また中国の中銀が金準備を増加させていたことからも、貴金属価格が全般上昇している中で、金と銀は強気ポジションを増加させ、プラチナとパラジウムは弱気ポジションを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6.6%増で605トンと3週ぶりに増加して前週の7月初旬以来の低さから増加していたこと。価格は1.5%高でトロイオンスあたり2650ドルへ上げ、建玉は4.8%増と前週の2月初旬の低さから増加していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、52.2%増で3983トンと3週ぶりに増加し、前週の3月初旬以来の低さから増加していたこと。価格は前週比4.6%高で、トロイオンスあたり30.24ドルと上げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングで、1.4%減で9.2トンと前週の12月3日以来の高さから減少していたこと。価格は前週比4.3%高でトロイオンスあたり953ドルへ上げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに11.0%増で39.2トンと9月上旬以来の高さへ増加していたこと。価格は2.1%高でトロイオンスあたり928ドルと前週の4月上旬以来の低さから上げていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに6.6トン(0.80%)減少して868.78トンと、12月19日以来の低さでで週間の減少傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.0トン(0.25%)増で394.19トンと2月上旬以来の高さで、週間の増加傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに103.4トン(0.72%)増で14,410.72トンと週間の増加傾向で、12月初旬の高さ水準であること。
  • 金銀比価は、今週89台後半ばで始まり、本日88台後半で終える傾向。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1709~1764を推移していること。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は、12月18日からプレミアムに転換し、12月24日に一日ディスカウント以外はプレミアムであったものの、今週水曜日にディスカウントへ転換し、本日4ドルで終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格は8月19日からディスカウントであったものの12月20日からプレミアムに転換し、今週の平均は13.98ドルと前週の7月半ば以来の高さの14.70ドルから下げていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までに週間で、金は24.4%増で11月末以来の高さ、銀は1.4%増で12月半ば以来の高さ、プラチナは5.7%減で11月下旬以来の低さ、パラジウムは10.5%増で12月半ば以来の高さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は1月15日から正の相関関係で0.16と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は1月13日から正の関係で、0.77と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は1月16日から負の関係で、0.03と前週から関係を弱めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は米卸売物価指数が火曜日、米消費者物価指数が水曜日に発表され、市場は注目していました。来週は月曜日にトランプ氏が大統領に就任し、新たな政権が中国、カナダ、メキシコや他の国へ関税を課すこととなるか等、注目することとなります。その他日本銀行の金融政策発表が金曜日に行われ、同日は主要国の製造業とサービス部門のPMIそして、米ミシガン大学消費者態度指数等も重要となります。

詳細は 主要経済指標(2025年1月20日~24日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週は日本に滞在中ですので、お休みとさせていただきます。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ