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【金投資家インデックス】欧米の投資家は金価格高騰で利益確定を進める

中国が金を購入し、欧米の投資家が金を売却する中、金価格は史上最高値を更新しています。
 
欧米の投資家は、ヘッジファンドによる投機的な取引と、中国の中央銀行による継続的な需要によって、金価格が全ての主要通貨で過去最高値を更新したことを受けて、世界有数のオンライン地金現物市場を提供するブリオンボールトを利用して、3月に顧客全体で購入量を2倍以上上回る売却が行われ、記録的な利益確定が進むこととなりました。
 
このように、記録的な売却が行われたにもかかわらず、ブリオンボールトの顧客が保有している金地金は、32億ドル(4850億円)を超え、過去最高を更新ていました。
 
ブリオンボールトのリサーチディレクターであるエィドリアン・アッシュは、「これまでの金地金売却者数のピークは、金地金価格が急騰した時で、それらは全て、政治的、金融的なストレスが高まった時であり、投資家の需要に拍車をかけていました。」と現在の状況と過去の例を比較して述べていました。
 
「対照的に、金の史上最高値の更新は、外部からのきっかけが無い中でもたらされています。この間中国を筆頭とする新興市場国からの現物に対する絶え間ない需要が、欧米の投資家による記録的な利益確定の売却を補って余り、この上昇トレンドの底力を物語っている。」と続けていました。
 
先月、金価格は8.1%急騰し、この1年間でも最も速いペースの上昇となり、トロイオンスあたり2214ドルと、(英国ポンド建てで8.5%高の1752ポンド、ユーロ建てで8.7%高の2050ユーロ、日本円建てで9.1%高の10,777円)の新記録を達成していました。また、ドル建てでは、3月の20営業日中に9回の最高値を記録していました。
 
ブリオンボールトで金地金を購入する個人投資家の9割が西欧もしくは北米に居住していますが、月間で売却を上回る購入をした、月間購入者数は前月比3.4%減少し、12月以来最も低い水準となっていました。
 
対照的に、月間の売却者数は前月比95.1%増加し、2023年3月(米国地銀危機)、2011年8月(米国債務格下げ、ユーロ債務危機、英国暴動)、2022年3月(ロシアのウクライナ全面侵攻)、2016年6月(英国がEU離脱を決めた国民投票)際の売却者数を上回っていました。
 
その結果、個人投資家が実際にブリオンボールトで行った取引データをベースに算出された指標である金投資家インデックスは47.5となり、2016年7月以来最も速いペースで急落し、2月から4.0ポイント低下していました。
 
2009年10月以来産出されているこの指数は、月間の購入者数が売却者数と完全に一致した場合は50.0となります。この指数は、2020年3月にコロナ危機が発生した際に65.9に達し、2011年9月に金価格が世界金融危機のピークを記録した際に71.7という最高値を記録しています。
 
金投資家インデックスは、過去2度だけ金の月間売却者数が購入者数を上回ったことを記録しています。(2010年2月の48.8、2019年6月の49.1)
 
金投資家インデックスと金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
2005年4月からサービスを提供しているブリオンボールトにおける金地金購入の購入量は、3月に0.7トンとなり、過去12ヶ月の平均から4.5%増加していました。しかし、売却量は倍以上の100.3%増となり、合計1.6トン以上となっていました。
 
そこで、個人投資家は992kgの金を清算したことになり、これは前回の記録的な流出であった2019年6月よりも28.0%多く、6,880万ドル(104億円)相当となっていました。
 
これにより、ブリオンボールトにおける投資家の金地金保有量は45.5トンとなり、2020年以降で最小となり、過去最高であった昨年8月の保有量から5.5%減少していました。しかしながら、これらの投資家の金地金保有評価額は、ドル建てでは過去7ヶ月で7.7%増加し、3月には過去最高の32億ドルとなりました。(ポンド建てでは8.1%増の25億ポンド、ユーロ建てでは8.3%増の30億ユーロ、日本円建てでは6.8%増の4910億円)
 
「中国を筆頭とする中央銀行が金を購入することで価格を押し上げる中、欧米の投資家の利益確定の売却は進み、史上最高値で利益を得ています。しかし、これはポートフォリオのリバランスであり、全てを売却しているわけではありません。それは、顧客が未だ保有している金地金も過去最高値まで上昇しているからです。2024年の非常に不確実な見通しがどのような政治的、金融的危機をもたらそうとも、それに備える投資の保険としての金の魅力は衰えていないのです。」とエイドリアンは述べています。
 
金と同様、銀も先月は価格が急騰し、月間終値としては4年ぶりの高値となるトロイオンスあたり24.54ドル(英国ポンド建てで10.2%高の19.46ポンド、ユーロ建てで10.3%高の22.76ユーロ*)となっていました。
 
そのため、ブリオンボールトの3月の銀の月間の売却者数は、前月から倍増し、108.7%増となり、2021年2月にソーシャルメディア上による投稿でシルバーをショートスクイーズ(#silversqueeze)しようとした際の、銀価格が30ドルに1セント届かない8年ぶりの高値をつけた時以来の多さとなっていました。
 
その当時、銀投資家インデックスは61.0となり、2012年の新年以来8番目に高い数値となりました。しかし、先月は5.1ポイント減の45.0と過去最低を更新し、過去12ヶ月で4回目の月間売却者数が購入者数を上回ったことを示していました。
 
その結果、銀地金の総保有量は2.4%減の1,199.8トンとなり、2021年4月以来の低水準となり、過去最高であった2022年10月からは5.3%減少していました。
 
これとは対照的に、ブリオンボールトのユーザーの銀地金保有評価額は、11.8%増の8億7800万ドルとなっていました。(ポンド建てでは11.0%増の7億5000万ポンド、ユーロ建てでは11.8%増の8億7800万ユーロ)
 
エイドリアン・アッシュは今後の見通しとして次のようにコメントしている。

「金の突然な急騰の史上最高値により、短期的には価格の伸びが厳しいものとなるかもしれない。そして、特にアジアの消費大国の需要が、季節的な要因から小康状態に向かう夏に近づくにつれて、市場は欧米の投資家から戻ってくる大量の地金を吸収するのに苦労するかもしれない。

 アジアの最大の金消費国やそれに次ぐ国々は、短期的には価格に敏感ではあるものの、消費者は過去に、このような状況下で繰り返し金価格上昇に慣れてきた。欧米とその他の国々の間に平和と信頼が生まれるまでは、新興市場の中央銀行からの需要は続きそうであり、中国人民銀行はどのような価格でも金の購入を止めることはないようだ。」

 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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