金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年8月22日)パウエル議長の発言で金価格が3370ドル超えの急騰

金価格は金曜日、1%以上急騰しました。

これは、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が、同議長のジャクソンホール経済会議での最後と見られている基調講演で、来月の利下げを示唆したことを受けたことからでした。

パウエル議長は、「変化する経済リスクがFRBの利下げの正当性を高めている」と述べ、労働市場が冷え込み、ドナルド・トランプ大統領の関税がインフレを押し上げていることに警鐘を鳴らす内容となっていました。

スイスの精錬・金融グループMKSパンプ社のメタル戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、「パウエル議長は、投資家が予想していたよりもはるかにハト派的なサインを示した」とコメントしていました。

ドル指数(米ドルの主要通貨に対する価値を示す指標)は講演直後に0.8%下落し、5日間での最安値を記録。一方、米国10年物国債利回り(政府債務や多くの商業融資コストの基準金利)は5ベーシスポイント低下し、1週間ぶりの低水準となっていました。

主要米株指数は1%以上上昇。S&P500は1.3%上昇し、5日続落に歯止めをかけ、ナスダック総合指数とダウ工業株30種平均もそれぞれ1.6%上昇していました。

スポット金価格は最大1.2%上昇し、1週間ぶりの高値であるトロイオンスあたり3377ドルに達し、50日移動平均線の3,346ドルと100日移動平均線の3,316ドルの狭いレンジを突破していました。

ドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

FRBの利上げ・利下げを決定する連邦公開市場委員会(FOMC)が9月に利下げを行う確率は、前営業日に75%と見られていましたが、講演直後には90%以上に上昇していました。

パウエル議長はこの年次会議向けに用意した発言で次のように述べていました。

「失業率やその他の労働市場指標の安定により、政策スタンスの変更を慎重に検討することが可能である。しかし、政策金利が制約的な水準にある中、基準見通しとリスクの変化に応じて政策スタンスの調整が適切となる場合もある。」

米労働省(DOL)が木曜日に発表した報告によると、先週新規失業保険申請件数が約3か月ぶりに最大の伸びを示し、前週の失業給付受給者数も約4年ぶりの高水準に達していました。

これは7月の米雇用統計が予想外に弱かったことに続くもので、これによりトランプ大統領は労働統計局長を解任し、「頑固な馬鹿」パウエルの辞任を再び要求していていました。

カンザスシティ連邦準備銀行のジェフ・シュミット総裁(2025年FOMC投票メンバー)は木曜日、労働市場リスクよりもインフレリスクの方がわずかに高いと考えているが、政策金利は次回利下げを検討する上で適切な水準にあると述べていました。

シュミット総裁は「最大雇用と物価安定という二重の目標に近づくにつれ、政策金利をどの水準にすべきかの微調整判断はより難しくなる」とも指摘していました。

7月のFOMC議事録(5会合連続で政策金利を据え置き)は水曜日に公表され、ほとんどのFRB関係者が労働市場への懸念よりもインフレリスクを重視していることが示されていました。

FRBが重視するインフレ指標は来週公表され、米雇用統計はその翌週に発表予定で、FOMCは9月16~17日に会合を開きます。

このインフレ指標である個人消費支出(PCE)コア・デフレーターは来週発表予定ですが、7月は5か月ぶりの高水準2.9%に上昇すると見込まれています(6月は2.7%)。この指標は4月に4年ぶりの低水準2.6%まで下落していましたが、その後上昇傾向にある。

クリーブランド連邦準備銀行のベス・ハマック総裁(今年はFOMC非投票メンバー)は、前回会合で「明日判断しなければならない場合、利緩和は支持しない」と述べていました。

「過去1年でインフレが高く、上昇傾向にある」とハマック総裁はその理由として説明していました。

S&Pグローバルの速報8月製造業購買担当者景気指数(PMI)は木曜日に発表され、米製造業は3年以上ぶりの速い拡大ペースで成長しており、強い需要が持続的なインフレ圧力を生んでいることが示されていました。

それに対し、米国の7月生産者物価指数(PPI)は3年ぶりの速さで上昇、一方で消費者物価指数(CPI)は横ばいとなっていました。

トランプ大統領は金曜日、バイデン大統領が2022年に任命したFRB理事リサ・クック(FOMCの投票メンバー)に対し、今週ビル・パルテ氏(トランプの盟友で連邦住宅金融庁長官)による住宅ローン詐欺の告発を受けて辞任しない場合は解任すると発表していました。

クック理事は木曜日、「中央銀行から辞めさせられるような脅されるつもりはない」と述べ、「正確な情報を収集し、正当な質問に回答して事実を提供する」と説明していました。

米下院金融サービス委員会の民主党議員は、「トランプ氏は、FRB初の黒人女性理事を追い出し、自分の指示に従う資格のない忠実な人物に置き換えるために明白な嘘を作り上げている」と非難しています。

トランプ大統領の初期政権で副大統領を務めたマイク・ペンス氏は木曜日、クック理事に対する告発が利下げ圧力の一環でないことを望むと述べた。

一方、英国ポンドおよびユーロ建ての金価格はそれぞれ1週間ぶりの高値であるトロイオンスあたり2495ポンド、2881ユーロまで上昇していました。

産業用途が全需要の約60%を占める銀価格は金曜日3.7%急騰し、1か月ぶりの高値38.94ドルとなっていました。

この銀の上昇により、金と銀の相対価格を示す金銀比価は、87を下回り、過去4週間で最も低い水準となっていました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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