ニュースレター(2023年12月22日)金価格はインフレ鈍化を示すデータで史上最高値に次ぐ高値へ上昇
私は来週から休暇をいただき、1月は日本に入ります。そこで、来週は年間のまとめのニュースレターを30日にお届けし、1月の3週間は簡易的なニュースレターをお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり2068ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から1.79%高で2週連続の上昇で史上最高値をつけた12月4日以来の高さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から1.12%高のトロイオンスあたり24.46ドルと2週連続の週間の上げで、12月初旬以来の高さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から2.28%高のトロイオンスあたり979ドルと2週連続の週間の上昇で8月末以来の高さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は9.61%高のトロイオンスあたり1238ドルと2週連続の週間の上昇で10月初旬以来高さとなっています。
金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週は貴金属は、FRBの金利引き下げ観測が広がる中で、ドルインデックスと長期金利が5か月ぶりの低さへと下げる中で、全般上昇することとなりました。
先の観測の広がりは、前週のFOMC後発表されたメンバーによる金利予想の平均値が来年の25ベーシスポイントを3回引き下げるというものであったことに加え、パウエルFRB議長の利下げを議論したというコメント、そして、前週後半から週末にかけては、その観測をけん制する高官のコメントが続いていたものの、週半ばから利下げを肯定する高官のコメントも伝えられて、再び観測が広がることとなりました。
それに加えて、昨日の米第3四半期GDPが予想を下回り、本日の米FRBがインフレデータとして注目する個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが若干ながら前回と予想を下回っていたことで、クリスマス休暇目前で薄商いの中で価格を押し上げているようです。
そこで、本日のFEDWatchツールでは、市場はすでに来年年末までに25ベーシスポイントの利下げが平均的に6.2回、そして7回行われるとの予想の確率が最も多く36.5%となっています。
なお、パラジウムが前週25%高となった背景として、英国のロシアへのさらなる経済制裁がパラジウムを含めていないものの背景となっているとブルームバーグの記者は分析していましたが、今週もその上げ基調は続いています。
ちなみに、弊社では年に2回夏と暮れにお客様にアンケートにお答えいただいていますが、前月のアンケートでは来年の価格予想をお願いし、下記のように結果が出ていますので、ここでお伝えします。
なお、前年度の今年年末の価格予想は2012ドルというもので、そのアンケート時点では1800ドルを推移していたことからも、11%高と当時はかなり強気な予想となっていましたが、実際には本日の価格よりも50ドル以上低いものとなっています。
アンケート結果の詳細については2024年金・銀価格予測: 金2342ドル、銀29ドルの記事をご覧ください。
今週の金相場の動きと背景について
月曜日金相場は、前週のFOMC後の2024年の利下げ観測の上昇水準からさらに上昇して一時トロイオンスあたり2023ドルをつけた後、2027ドルで終えていました。
これは、パウエルFRB議長がFOMC後の記者会見で2024年の利下げが議論されたと述べたのに対し、欧州中銀の高官の翌年の利下げ議論は行われていないというコメントからも、ドルインデクスが下げていたことが背景となりました。
また、同日イエメンの親イラン武装組織フーシ派が商船への攻撃を続けていたことで、英石油大手BPが、紅海経由の石油輸送を全面的に停止すると発表したことも、金市場の手掛かり材料になったとも一部アナリストに分析されています。
火曜日金相場は、ドルと長期金利が下げる中で、トロイオンスあたり2046ドルまで一時上昇した後に、2039ドルで終えていました。
前週金曜日から週末にかけては、FRB高官の早期の利下げ観測をけん制するコメントが多く出ている中、同日は比較的ハト派的コメントが出ていたことからも、ドルが7月末、長期金利が8月初旬以来の低さへ下げていることが金の上昇の背景となりました。
このコメントはバーキン・が、リッチモンド連銀総裁が、利下げに前向きと明言しなかったものの、経済が期待通りに推移すれば利下げは否定しない姿勢を表明していたこと等でした。
なお、同日日本銀行は緩和的金融政策の継続を金融政策決定会合後に発表し、日本円が対ドル数週間ぶりの低さへ弱含んだことで、日本円は12月初旬以来の高さのgあたり9466円まで一時上昇して9432円前後を推移していました。
水曜日金相場は、8月初旬以来の低さへ下げたドルが調整の動きからも上昇する中で、トロイオンスあたり2027ドルへ一時下げた後に、2033ドルで終えていました。
また同日は英国の消費者物価指数が発表され、前年同月比3.9%と前回の4.6%と予想の4.4%をも下回り、イングランド銀行の早期の利下げ観測が広がり、またドイツの生産者物価指数が予想を下回ったことも欧州中銀の早期の利下げ観測を広げることとなり、ポンドとユーロが対ドル下げたことも、ドルを押し上げた要因となっていました。
しかし、同日株価が全般下げ、安全資産として米国債が買われて、長期金利が同日も下げて7月下旬の低さへ下げていたことは、金のサポートとはなっていた模様です。
木曜日金相場は、ドルインデックスが7月末以来の低さへ下げる中で長期金利が若干上昇していたものの7月末以来の低さを推移し、トロイオンスあたり2053ドルへ上昇して終えていました。
同日は市場注目の米第3四半期GDPが発表されて4.9%と予想と前回の5.2%を下回り、第3四半期GDP個人消費とそのコアもそれぞれ予想と前回を下回り、フィラデルフィア連銀製造業景気指数もまた、予想と前回を大きく下回るものであったことで、米経済のスローダウンが示唆されたことで、FRBの利下げ観測が広がることとなりました。
また、前日来年FOMCの投票権を持っていないもののハーカー・フィラデルフィア連銀総裁が差し迫っていないものの利下げに前向きとする姿勢を示したことが伝えられていたこともサポートとなっていたようでした。
本日金曜日金相場は、市場注目のFRBがインフレデータとして重要視している個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが発表されて、予想を下回っていたことで、FRBの早期の利下げ観測が広がり、トロイオンスあたり2069ドルと、12月初旬の史上最高値の日以来の高さを一時つけて2066ドル前後を推移しています。
このデータは、前年同月比3.2%で前月比0.1%と共に予想の3.3%と0.2%を下回っていました。そこで、ドルインデックスと米長期金利は共に5か月ぶりの低値をつけています。
なお、この価格水準は、LBMAのPM価格としては史上最高値となります。
その他の市場のニュ―ス
- 原油価格がイエメンの反政府勢力フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返し、石油大手や海運大手各社が相次いで紅海を経由した輸送を一時停止したことを受けて、今週ほぼ5%高と2か月ぶりの週間の上げ幅をつけたこと。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週金曜日に最新データの12月12日分が発表され、金価格が翌日のFOMC後の発表を前に下げていた際に、金と銀で強気ポジションを減少させる中、プラチナとパラジウムでは、弱気ポジションを減少させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは9週連続でネットロングで16%減の346トンと2週連続で減少していたこと。この間建玉は2.1%減と3週連続で減少して10月初旬の低さとなっていたこと。価格は前週比2.1%安でトロイオンスあたり1980.55ドルと11月14日以来の低い水準ではあったこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、9週連続でネットロングで61%減の1388トンと11月7日以来の低さとなっていたこと。価格は5.4%安でトロイオンスあたり22.96ドルと11月14日以来の低さとなっていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、2週連続でネットショートであったものの86%減で0.3トンとなっていたこと。価格は前週比1.4%高でトロイオンスあたり921ドルと2週ぶりに上昇していたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは引き続きネットショートで、5.7%減の31トンと減少していたこと。価格は前週比1.6%高でトロイオンスあたり980ドルと前週の2018年8月以来の低さから上昇していたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの1週間で1.4トン(0.2%)減で878.25トンと2週連続の週間の減少傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で全く変化がなく398.90トンと11月16日以来の高い水準。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で14.25トン(0.1%)増で、13,719.87トンと3週連続の週間の増加傾向。
- 金銀比価は、今週84台半ばで始まり、本日83台後半へ下げて終える傾向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、1071ドルで始まり、1085ドルへと若干上昇して終える傾向。しかし、この水準は記録が始まった1990年の初旬以来の高さ。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは228で始まり、本日253ドルへと10月半ば以来の高さへ上昇して終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週平均は38ドルと44ドルから下げていたこと。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、木曜日までで前週平均比で、金は32%減で8月初旬以来の低さ、銀は38%減と前年12月末以来の低さ、プラチナは9%減で2週ぶりの低さ、パラジウムは13%減でやはり2週ぶりの低さ。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月27日に負の相関関係となり、-0.39と弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は11月21日から負の相関関係へ転換して-0.51と若干関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は正の相関関係に11月27日に転換し、0.12と関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は日本銀行の金融政策決定会合や主要国のインフレ関連データが発表されて、市場は注目していましたが、来週は欧米がクリスマス休暇に入り、主要経済指標も限れられていますが、薄商いであることから、市場のボラティリティが高まる可能性はあります。
詳細は主要経済指標(2023年12月25日~29日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2023年12月18日~22日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2023年12月25日~29日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2023年12月18日)米FRBが2024年の利下げ観測をけん制する中で金は堅固に推移
- 2024年金・銀価格予測: 金2342ドル、銀29ドル
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、引き続きイスラエルとハマス紛争及びウクライナ戦争について、今月も行われているジュニアドクターのストライキ、また経済面では今週英国のインフレが予想以上に下げていたことや本日第3四半期のGDPがマイナスで2四半期連続の場合はリセッションとなることから大きく伝えられています。
そのような中、年末恒例の今年のトップニュースが大衆紙等で紹介されていますので、いくつかの新聞でトップ5に入っているニュースについてご紹介しましょう。
- チャールズ国王の戴冠式
- ボリス・ジョンソン元首相が国会議員を辞職したこと
- イングランド女子サッカーチームがワールドカップで決勝に進出したこと
- トランプ前大統領の逮捕写真
- AIの台頭
その他、ビートルズが最後の新曲「ナウ・アンド・ゼン」を発表したこと、エルトン・ジョンが英国最大の野外ミュージックフェスティバルのGlastonburyでヘッドラインを飾ったこと、ツィターがXと名前を変更したこと等が取り上げられていました。
そして、BBCが主催した一般投票によって選ばれる最も今年活躍したスポーツ選手としては、イングランド女子サッカーチームのゴールキーパーのMery Earps氏が選ばれていました。
この賞を受賞した女性スポーツ選手は2人目で、昨年のやはりイングランド女子サッカー選手のBeth Mead氏に次ぐ快挙であるようです。
このようなことからも、イングランド女子サッカーチームのワールドカップ準優勝は英国の人々にとって2023年でも最も記憶に残るイベントの一つであったようです。
それでは、素晴らしいクリスマスをお過ごしください。