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2024年金・銀価格予測: 金2342ドル、銀29ドル

ブリオンボールト・ユーザーの貴金属投資に関する傾向と見通しが最新の投資家調査で明らかになりました。
 
2024年の金価格は上昇し続けると、多くの専門家が述べています。
 
それは、欧米の中央銀行が利下げを開始し、新興市場の中央銀行が記録的な量の金地金を購入し続け、地政学的緊張が主要国間の対立に発展しないまでも悪化することで、金価格は今年の史上最高値を更新するというものです。
 
そして、ブリオンボールトのユーザーも同じように見ていることが最新のアンケート結果で明らかとなりました。
 
ブリオンボールトを利用して貴金属に投資をしている人々は、12ヶ月後の2024年末の金価格はトロイオンスあたり2342ドルへと上昇すると予想しています。
 
強気すぎるでしょうか?確かにそうかもしれません。
 
しかし、ブリオンボールトの顧客は、昨年末のアンケートで、今年末の価格予想をほぼ的中させていたのです。
 
過去5年間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
当時、金はトロイオンスあたり1800ドル以下で取引されていました。
 
そのために、今日の価格2037ドルに対して、昨年末に予想した2012ドルは、とても賢明なものに見えます。
 
今年、金価格が直面した大きなネガティブ要因を考えると、それはさらに注目に値します。
 
米連邦準備制度理事会(FRB)が主導して実質金利が少なくとも1950年以来最も速いペースで上昇したにもかかわらず、金価格は今年上昇していました。
 
本来金利を生まない資産である金は、金利が上昇するとその価値を失う傾向があります。
 
年平均で見ると、2023年の米FRBの主要金利は、インフレを考慮すると7%ポイントも急上昇しています。これは1981年の実質金利引き上げを上回る急騰となります。1981年は、深刻な景気後退の代償として、それ以前の10年間の2桁のインフレを抑えるためにこのような急激な利上げが実施されていました。
 
この年、米国の実質金利が6%ポイント上昇したことにより、金地金の価値は32%も急落し、ブリオンボールトが100年間の歴史的データを分析した結果、最も大きな実質的な損失となっていました。
 
しかし、2023年には、それとは対照的に、金の実質価格は上昇し、年平均で3%以上上昇しているのです。
 
実質金価格と実質米政策金利のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
どのようにして、金は実質金利の急騰というネガティブ要因を克服したのでしょうか?
 
通常、宝飾品、小型の金地金、金貨などの需要に支えられ、金価格は民間投資需要の水準と強い正の相関関係を示す傾向があります。
 
しかし、2023年、小型の金地金への資金流入は、記録的な実質金価格の高騰と過去20年で最も高い金利によって頭を抑えられていました。
 
例えば、かつて世界の小売金消費を牽引していたドイツの金貨と小型金地金の需要は、投資家の売却分を差し引くと80%も落ち込み、英国と欧州に上場されている金で裏付けされた上場信託ファンドの総規模は11%近く縮小し、北米に上場されている商品は5%近く縮小しています。
 
では誰が買っていたのでしょうか?それは中央銀行です。
 
鉱業業界のワールド・ゴールド・カウンシルが発表した推計では、中央銀行による売却量を差し引いたネットの購入量は、全体の減少分の2倍近くとなっています。
 
実際、ブリオンボールトの分析によると、今年の中央銀行の需要は、世界の新規鉱山供給のほぼ3分の1に匹敵し、1963年以来の新規鉱山生産量に占める割合としては最高値に達しています。
 
これは、第二次世界大戦後のブレトンウッズ協定の下で、金地金が世界の通貨システムを支えていた1963年以降で最も高い割合となります。
 
中央銀行の金需要と実質金価格 出典元 ブリオンボールト
 
これとは対照的に、民間投資は2023年には新規鉱山供給量のわずか25%にまで減少していました。
 
これは、2020年のコロナ危機時の半分以下の水準であり、金価格が1980年代初めの暴落以来最悪の暴落を記録した2013年以来の低い割合に落ち込んでいます。
 
言い換えれば、民間資本は金の史上最高値を更新した価格に対して、実際に暴落しているかのように反応しているのです。一方、中央銀行は、金が世界の通貨システムの要として復活したかのように金を買っているのです。
 
実際、2023年の中央銀行の金需要は、世界のGDPに占める割合で見ると、さらに顕著であり、過去12ヶ月間で0.07%まで上昇し、少なくとも1960年以来、経済資源に占める割合が最も高い2022年の中央銀行の金購入の推定レベルを上回ったこととなります。
 
この民間よりも公的機関の金購入が顕著となった傾向は、来年も金価格を支え、上昇させるのでしょうか。
 
ブリオンボールトの最新のアンケートに回答した投資家は、そのように考えています。
 
10人に1人以上の回答者が、公的部門による金地金購入に牽引される需給が、価格に最も大きな影響を与えると考えています。
 
これは、年2回行われているアンケートの過去10年間で最大の回答数でした。
 
しかし、2023年半ばに実施した世論調査の33.0%から減少したとはいえ、25.0%の回答が主要中央銀行による「金融政策」が、金価格に最も大きな影響を与えると答えています。
 
つまり、米連邦準備制度理事会(FRB)自身を含め、誰もが2024年の利下げを想定しているということです。
 
そして、来年金価格に最も大きな影響を与えるものとして、22.0%の票を集めたのは「地政学」となっていました。
 
この要因は、2023年半ばの調査では17.3%でした。そして、「地政学」に次いで、「政府支出(と政府赤字の規模)」が20.8%となっていました。
 
これらをまとめると、ブリオンボールトのユーザーによると、中央銀行、財務省、国防省(及び攻撃)の「政策」は、2024年の貴金属価格の大きな牽引役として際立っているということです。
 
それでは、「インフレ」はどうでしょうか?昨年の今頃は、5票のうち1票近くが最も大きな影響力を持っていると答えたインフレは、わずか9.0%に沈み、貴金属への積極的な投資家の見解では、重要な要因としては後退していたのです。
 
ちなみに、ブリオンボールトの最新のアンケートで、2,002人のユーザーの平均的な予想によると、銀地金は、来年トロイオンスあたり29ドルとなるとのことです。これは、より工業的に有用な貴金属である銀は、中央銀行の需要を享受することなくこの上昇率を達成すると予想されているのです。
 
これが、実際に貴金属に投資家をしている人々による2024年の予想となります。この結果に関しては12ヵ月後に再び振り返ってみることとしましょう。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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