ニュースレター(2020年12月4日)リスクオンのドル安で金が3週間ぶりに上昇に転じ、工業用途需要の高い銀とプラチナは更に急騰
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1843.30ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.6%高と先週月曜日のアストラゼネカワクチンニュースによる急落時の水準へと戻しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり24.21ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4.65%高で、金同様に先週月曜日の下げ幅をほぼ取り戻し、3週連続の週間の下げを止める傾向です。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1062.44ドルと前週金曜日のLBMA価格から11.95%高で下記のチャートでも分かるように2016年9月以来の高さとなっています。
今週金相場は月曜日に世界株価が史上最高の月間上げ幅を記録する中で5ヶ月ぶりの下げを見せた後に、2年半ぶりのドル安からも上昇に転じています。この間、工業用途需要の割合が半数以上と高い銀とプラチナは、特に脱炭素化で需要が伸びると思われていることからも大きな上げ幅を見せています。
それは、銀の工業用途需要はこの数年一貫して全体の50%を超える水準で、プラチナは60%ほどと金の10%以下とは比率がかなり異なり、コロナワクチン実用化が進むことによる経済回復は銀とプラチナにとってはサポート要因となります。また、この工業用途の中でも、銀は太陽光発電のパネル素材として使われること、そしてプラチナは水素経済に不可欠な燃料電池自動車やグリーン水素生産にも使われることが改めて注目されていることが先の価格の動きの背景となっている模様です。
それでは、日々の動きとその背景をまとめてみましょう。
月曜日は中国の経済指標の製造業PMIが3年ぶりの早いペースの拡大を見せたことから、そしてコロナワクチンの早期実用化期待からも世界株価が上昇し、MSCIワールドインデックスは11月の上げ幅が11%と史上最高となり、ドルインデックスは月間で2.7%下げるという典型的なリスクオン基調となっていました。
このような中で、本来安全資産と言われている金が5ヶ月ぶりの水準へ下げていたのは、今年記録的な水準で資産が流入していた金のETFの残高がコロナワクチンのニュース以来減少を続けているなどの内部要因、そして下げることでさらなる下げを呼ぶというもので、この動きが一段落すると反転するだろうというのが多くのアナリストの分析でした。
火曜日金相場は上昇を初め、トロイオンスあたり1816ドルと前日終値から2%上昇し、ほぼ先週金曜日の下げ幅を取り戻していました。
この間も世界株式は上昇し、このリスクオン基調はドルを2年を超える低値へ下げて、金のサポートとなり、3週間の下げ後の自律的反発に加えて1800ドルを超えることで更なる上げも出ることになりました。
なお、テクニカル面から見ると、金価格は200日移動平均線(1801ドル)を割り、RSI(相対力指数)が売られすぎといわれている30を割っていたことも、反転の要因と分析されていました。
水曜日金相場は前日の上げ基調を受け継いで0.8%高のトロイオンスあたり1828ドルで終えていました。
同日は市場注目のADP全国雇用者数が予想を下回る307,000人と7月以来の低い水準であったことと、前日米株価指数が史上最高値を出したことで利益確定の売りが起きて米株価が一時下げていました。しかし、その後下げ幅を取り戻しドルインデックスは2年半ぶりの低さへと下げていたことからも、金を押し上げていました。
そのような中、米国の追加経済対策案の協議が米大統領選後始まったものの、与野党の隔たりが大きいことはリスクオン基調を多少後退させていました。
木曜日金相場は、米株価指数が3日連続で史上最高値を更新する中で、3日連続の続伸でトロイオンスあたり1841ドルへと上昇し終えていました。
株価上昇の背景は米追加経済対策への早期成立期待の広がり、米新規失業保険申請件数の改善やISM非製造業景況指数が予想よりも悪化していなかった事等からで、ドルインデックスは引き続き2年半ぶりの低さへと下げて金をサポートしていました。
本日金曜日は、市場注目の米雇用統計が発表され、予想の46.9万人と前回修正値の61万人を大きく下回る24.5万人であったことから、さらなる追加刺激策期待で株価が上昇し、ドルが下げて、長期金利が上昇しています。
そこで、金相場は先のニュースで一時トロイオンスあたり1848ドルまで上昇したものの、長期金利の上昇が金の頭を抑えた模様で前日比下げて1834ドル前後を推移しています。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日24日に、前日にオックスフォード大学とアストラゼネカのコロナワクチンのニュースで貴金属価格が下げた際に、プラチナを除き全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、14.52%減の326トンと昨年5月以来の低さへ下げていたこと。また建玉は9週連続で100万枚を割って、昨年6月以来の低い水準となっていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.2%減の6,545トンではあるものの、前週を除けば7月21日以来の高さであること。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比67.23%増の16.6トンと3週連続で増加して、9月15日以来の高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.08%減で12トンと2週連続の下げであるものの、その下げ幅は限定的なものであること。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で5トン(0.4%)減で1190トンと4週連続の週間の減少傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で4.45トン(0.8%)減で524トンと、前週週間で増加後に週間の減少の傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週91トン(0.54%)増で17,053トンとファイザーのワクチンのニュース以来3週連続の週間の下げ後、初めて増加傾向であること。 -
金銀比価は、月曜日に金が急落時に80まで上げて銀割安傾向であったものの、その後本日までで76台前半まで銀割安傾向を解消していること。 -
上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は-23.05とコロナワクチンのニュースが入る前の11月初旬の週以来の高さとなっていたこと。 -
コメックス及びNYMEXの金、銀、プラチナの取引量は、週間で金と銀が前週の取引量からそれぞれ減少する中で、今週11%を超えて価格が上昇しているプラチナは、9月末に価格が大幅に下げた際以来の高さへと増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は重要指標とイベントとしては、木曜日のECBの政策金利発表、そして水曜日の中国、木曜日の米国の消費者物価指数などがあります。
その他、今週英国当局がファイザーとビオンテックのコロナワクチンを承認しましたが、その他の国での承認ニュースや実用化スケジュール等は注目材料となります。
また、米国大統領選後再開された追加経済対策の議会協議の行方も引き続き市場は注目することとなります。
経済指標の詳細日程は主要経済指標(2020年12月7日~11日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年11月30日~12月4日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年12月7日~11日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年11月30日)ワクチンのニュースで株式市場が強い月間の上昇をする中で金はドル安にも関わらず急落 -
【金投資家インデックス】金価格の急落は記録的な売却を促したものの、 コロナ禍以降のリスク懸念からも購入も急増
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、2日にイングランドのロックダウンが解除されたこと、そして昨日はファイザーとビオンテックのコロナワクチンが先進国で初めて英国当局で承認されたこと、更に本日は最終段階に入っている英国のEU離脱交渉が難航していることがトップニュースで伝えられています。
今週承認されたコロナワクチンは来週には病院に勤める人々や高齢の方々への予防接種が始まるようですが、今週2日にロックダウンから移行した、感染者数等の状況に応じて決まる3段階の警戒システムの制限は残り、クリスマス期間の12月23日から27日までクリスマスを家族や友人たちで祝う事ができるように多少解除されることとなります。
2日に移行した警戒システムは以前ここでご紹介した3段階のものを多少厳しくしたものですが、南西のコーンウォールと一部の島を除き、ほぼイングランド全域が制限の厳しい2つのレベルに入ることとなりました。そこで、屋内で同居人以外と過ごすことは許されていないために、クリスマスの期間のみは、3世帯までは屋内で過ごせるというルールを新たに作っていました。
そこで、クリスマスにエリザベス女王と王室の方々が毎年恒例で過ごす、エリザベス女王の私邸のイングランド北部のサンドリンガムハウスでは、どの家族と過ごすのかなどの憶測が飛び交っていたようですが、今週王室はエリザベス女王はエジンバラ候と二人きりでウィンザー城で過ごすと伝えていました。
英国民にとってクリスマスは、25日朝にサンドリンガムハウス敷地内の教会に王室のメンバーが揃って徒歩で移動する姿をニュースで見て、午後3時からのエリザベス女王のスピーチを見るのが伝統となっていますが、国民がCovid-19の感染拡大を防ぐために移動をすることを制限し、家族や友人に会うことも制限することを求められている中で、エリザベス女王にとっては、この選択肢が最も正しいものであったのでしょう。
ちなみに、エリザベス女王は1988年以来毎年欠かさずサンドリンガムでクリスマスを迎えたとのこと。そして、この数年はウィリアム王子とキャサリン妃の家族やチャールズ皇太子とカメラ婦人も一緒に4世代共に過ごしていたようです。
来年のクリスマスは、この王室の伝統が再開でき、私達も家族や友人たちと気兼ねなく会える状態であることを心から祈りたいと思います。