金価格ディリーレポート(2025年7月21日)金価格が1カ月ぶりの高値、トランプ氏とFRBウォラー理事が「利下げを」発言
金価格は月曜日、主要通貨建てで1カ月ぶりの高値に上昇しました。これは、米連邦準備制度(FRB)の高官によるハト派的な発言を受け、また8月1日に控えるトランプ大統領の貿易関税発動期限を前に、外国為替市場で米ドルが下落したことが背景にあります。
現FRB議長ジェローム・パウエル氏の後任を巡り、FRB高官の間では水面下での競争が始まっています。トランプ大統領は、パウエル議長が利下げの決断が遅く、規模も不十分であるとして度々批判しています。そうした中、FRB理事のクリストファー・ウォラー氏は金曜日、来週の7月FOMC会合で0.25ポイントの利下げを提案しました。
金のスポット価格は前週までにすでに3週連続の上昇となり、月曜日のロンドン時間昼にはさらに1.1%上昇し、トロイオンスあたり3387ドルと、6月24日以来の高値を記録しました。
ウォラー氏は講演で「民間部門の実態は、多くの人が考えているほど良くはない」と述べました。
トランプ大統領自身も金曜日、パウエル議長を「間抜け」と罵り、「特に若者が住宅を購入するのが難しくなっている」と非難しました。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の金利先物市場における予想では、来週のFOMCで「利下げなし」と見る確率は本日時点で95%と高止まりしています。一方、市場のコンセンサスでは、2025年末の政策金利は3.91%になると見込まれています。
この見通しは、年内に0.25ポイントの利下げを2回実施することを前提としており、昨年12月以降変更されていないFRBのドットプロット(政策金利見通し)と一致します。
ドル指数(米ドルの主要通貨に対する価値を示す指標)は、月曜日に0.4%下落し、7営業日ぶりの安値となりました。
ドル安によりドル建て以外の投資家にとって金の上昇は限定的となりましたが、ユーロ建てとポンド建ての金価格も上昇し、それぞれトロイオンスあたり2896ユーロ、2507ポンドと、こちらも1カ月ぶりの高値に近づきました。
スイスの銀行でロンドンの貴金属決済機関でもあるUBSの分析によれば、「金の小幅な上昇は、米ドルの下落による支援を受けている」としています。
また、「8月1日の米国関税発動期限が近づく中、市場の関心は通商合意が発表されるのか、それとも関税が実施されるのかに集中している」と述べています。
フィナンシャル・タイムズによれば、トランプ氏はEUとの通商交渉で要求を強めており、合意内容には最低15〜20%の関税を含めるよう求めているとのことです。
米国商務長官のハワード・ラトニック氏は日曜日、EUとの合意は可能であると自信を示しましたが、8月1日が「絶対的な期限」であると明言しています。
産業用途が年間需要の約60%を占める銀の価格は、本日1.0%上昇してトロイオンスあたり38.55ドルとなり、先週月曜日に記録した14年ぶりの高値に再び到達しました。
プラチナ価格も2.0%上昇し、トロイオンスあたり1459ドルと11年ぶりの高値を更新しました。これは、自動車の排ガス浄化触媒用途を中心とした産業需要が牽引しているほか、プラチナのリース金利が「前例のない」水準にまで上昇しており、短期的な現物供給の逼迫を示していることが背景となっていました。
パラジウムも上昇を続け、先週の10%近い急騰に続き、本日はさらに2.8%上昇してトロイオンスあたり1274ドルとなり、2年ぶりの高値を記録しました。
日本の株式市場は祝日のため休場でしたが、週末の参院選で与党連合が大敗したにもかかわらず、石破茂首相が続投を宣言したことで、円は対ドルで上昇しました。
一方、欧州の株式市場は、今週後半に控える米EU通商協議と、木曜日の欧州中央銀行(ECB、20カ国が参加)の金利決定会合を前に軟調となりました。
ウォラー氏と同じくトランプ大統領が任命したFRB理事のミシェル・ボウマン氏は、6月下旬に「今月にも利下げを再開すべきだ」との見解を示しています。
しかし、ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁やボストン連銀のスーザン・コリンズ総裁は、「年内にインフレが再び上昇する可能性がある」として慎重な姿勢を崩していません。