ニュースレター(2020年10月16日)ドルと株が高い水準を維持する中で金は堅固に1900ドル前後を推移
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1906.84ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.85%安となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり24.41ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.39%上げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では872.97ドルと前週金曜日のLBMA価格から2.13%下落しています。
今週金相場は3週間ぶりの高値で始まったものの、週前半はドルと負の相関関係でドル高の中で押し下げられていましたが、木曜日はこの負の相関関係が多少崩れ、ドルとともに上昇していましたが、本日はドルと共に多少弱含んでいます。
それでは、今週の市場を動かした要因ごとにまとめてみましょう。
-
米追加経済対策
先週トランプ大統領は突然協議中止をツィートで発表して株価が急落後その立場を急変させていましたが、今週は火曜日まではこの合意が大統領選以前に可能という観測で株価は上昇してドルは低めで推移していました。しかし、火曜日にペロシ下院議長の2.2兆ドルに対してムニューシン財務長官は1.8兆ドルという隔たりが埋められず合意観測が後退し株価が下げて金も現金化の動きで大きく下げていました。
その後水曜日にムニューシン米財務長官が大統領選前の取りまとめは厳しいとう見方を示し、株価が急落しドルが強含んでいましたが、金は下げ渋る堅固な動きをしていました。そして、木曜日にはこの状況の中で、これまでの傾向を変えて金が安全資産として買われて上昇をしていました。
本日は与野党の協議は継続していますが、昨夜トランプ大統領の民主党案への妥協も可能というコメントは、共和党のマコーネル上院議員が否定しており、前進の見通しはない中で、株価が他の要因で4日ぶりに上昇する中、金はドルが小幅の動きでいることからも、トロイオンスあたり1900ドル前後でレンジ内で推移しています。
-
欧州のCovid-19感染拡大と局所的ロックダウンなどの制限
昨日プランスは緊急事態を宣言し、週末からパリなどの9都市に夜間外出禁止令を出し、英国もロンドン等の感染率の高い地域の警戒レベルを引き上げています。これを受けて、ポンド及びユーロは昨日弱含み、相対的にドルを強含める要因になっていた模様です。
-
英国のEU離脱前の貿易協定協議
ボリス・ジョンソン首相が今週のEUサミットまでに貿易協議で合意が見込めない場合は合意なき離脱の準備をするべきと、デットラインを提示していましたが、本日英国が希望するカナダ型協定にEUがサミットで合意するのは困難ということで、協議は続けるものの、豪州型協定、合意なき離脱の準備を整えることをボリス・ジョンソン氏はコメントしています。そこで、「噂で買ってニュースで売る」という手口であるのか、本日ポンドとユーロは対ドル強含んでいます。
-
主要経済指標
今週は火曜日にドイツ及び欧州のZEW景況感調査の数値が大きく下げていたこと、IMFの年次総会でECBのラガルド総裁が今週末までのIMFの年次会議で「当面の間は支援策を継続しなければならない」と発言したことからもECBの追加緩和観測でイタリアの長期金利が過去最低を更新し、ドイツとフランス等の欧州主要国の長期金利も下げて火曜日欧州時間午前中にドルが弱含み金は押し上げられてていました。
また木曜日発表された米新規失業保険申請件数が予想を上回っていたことはリスクオフ基調を強めていましたが、本日発表の米小売売上高が予想を大きく上回り、鉱工業生産は下げていたものの、ミシガン大学消費者態度指数も上げていたことで、米株価は4営業日ぶりの上昇となっています。
-
ワクチン開発関連のニュース
本日米ファイザーが11月末にワクチンの緊急許可申請する公算が大きいと表明していることも、株価を押し上げている模様です。米モデルナ社も年内に緊急使用許可申請する可能性があるとも伝えられています。
その他の市場のニュ―ス
-
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週6 日にトランプ大統領が米追加経済対策の与野党協議を中断するとツィードしいたことで価格が下げる中で、金を除き全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比1.59%増の407トンと、2週連続の減少後多少ながら増加していたこと。建玉は2週連続で100万枚を割っていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.4%減の5541トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットショートポジションは、前週比297%増で-1.07トンと引き続き2019年7月16日以来の低さとなっていたこと。これは3週連続のネットロングの下げ(ネットショート増加)となっていたこと。
-
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.34%減で10.98トンと、2週連続の減少となっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で4.5トン(0.4%)増で1276トンと週間の増加傾向であるものの、8月の史上最高値以来、11週間で6週の週間の下げとなっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で3.51トン(0.67%)増で524トンと4週連続の上昇傾向で、3月の金価格急落以来一度も週間の下げを記録していないこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週101.28トン(0.58%)増で17,527トンと週間の上げの傾向で、8月の7年ぶりの高値以来2度めの週間の上げの傾向であること。 -
金銀比価は、月曜日に76台へ下げていたものの、木曜日には79台まで上昇し、引き続き8月と9月上旬の70台前半よりは銀割安傾向。 -
上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は38.45と前週金曜日に1週間の休み明けで付けたディスカウント寄りは高い水準であるものの今年7月末以来の低さであったこと。 -
コメックスの金取引量は、今週平均量で前週比7%増加し、先週の今年6月半ば以来の低い水準をほぼ維持していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週も米追加経済対策の与野党協議に市場は注目しましたが、これは継続し、また欧米でCovid-19の第2波が広がる中で、この政府対応なども経済への影響などからも注目されます。
また、本日ボリス・ジョンソン首相はEUとの英国離脱協議のカナダ型貿易協定合意の見通しは本日のEUサミットでの状況から難しいとし、合意なき離脱の準備をする中で豪州型貿易協定の可能性にも触れています。そこで、この関連ニュースも重要となります。
その他主要指標では、来週月曜日の中国のGDP等の主要指標、水曜日の米地区連銀経済報告等が主要なものとなりますが、詳細は主要経済指標(2020年10月19日~23日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
-
主要経済指標(2020年10月12日~16日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年10月19日~23日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年10月12日)ETF残高が増加する中金と銀は3週間ぶりの高さを削り、プラチナはネットショートを積み上げる中で下落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。
ロンドン便り
今週英国は新型コロナウィルスの感染拡大がイングランド北部を中心に深刻化していることを受けて、新たな警戒制度を導入し、それに応じてイングランド内の地域的警戒レベルが発表されましたので、その関連ニュースが大きく伝えられています。
そこで、この新たな警戒レベルについて簡単にまとめてみましょう。
まず、感染リスクを3段階に分ける新たな警戒システムで、それぞれの段階を「Tier 1(感染率:中)」「Tier 2(感染率:高)」「Tier 3(感染率:最高)」と呼びます。
「Tier 1」においては室内でも世帯間交流が6人まで可能ですが、「Tier 2」においては、室内での世帯間交流が禁止され、通勤通学などの外出は許されるものの、可能な限り移動頻度を減らすことが求められます。「Tier 3」においては、他の地域で午後10時まで営業が可能であるパブやバーも食事を出すレストランでない限り基本は閉鎖され、屋外でも世帯間交流が禁止され、この地域の住人は他の地域への必要とされない移動や宿泊は避けなければならないこととなります。
ロンドンは今週Tier 2となり、リバプールはTier 3、本日ランカシャーも追加4200万ポンドの支援を受けることで政府の要請に応じてTier 3を受け入れましたが、同様に感染率が高いマンチェスターはその市長が未だTier 3を十分な財政支援を伴わなければ受け入れず法的措置に訴えると表明しているために、ジョンソン首相は必要であれば市長の同意なくしてTier 3とすると述べたことが伝えられています。
奇しくもCovid-19感染拡大への警戒レベル引き上げとEUとのBrexit貿易協定協議のジョンソン政権が設定したデットラインが重なってしまい、ほぼ1日この2つの懸案事項で英国メディアのインタビューを受け続けたジョンソン首相が疲れて見えたのは気の所為ではないでしょう。
人々はCovid-19のための制限に精神的に疲れ、そして経済的な懸念を高めており、この第2波の制限を英国全体のロックダウンが行われた3月の時のように受け入れることが困難であることは肌で感じます。
ただ、治療法が確立、もしくはワクチンができるまでは、「With コロナ」の生活を続けること以外の選択肢はないことからも、これまで以上にジョンソン政権の強い指導力が必要とされているのですが、野党、地方政府、国民とのコミュニケーションが十分ではないように見え歯がゆいところです。