【金投資家インデックス】金価格の急落は記録的な売却を促したものの、 コロナ禍以降のリスク懸念からも購入も急増
金価格の急落は売却を66%急増させていました。
金投資は金価格が急落したことで急増し、21世紀でも最も強い傾向を継続させていました。しかしその一方で、コロナワクチンの臨床試験結果が良好であったというニュースを受けて、金地金は8月の過去最高値から15%近く下落し、初夏以来の最安値まで下落したことで、利益確定をする売却もまた増加させることとなりました。
しかし、この売却はビットコインの急騰とは全く関係のないものです。それは、11月にグーグルの検索件数で「金購入」が「ビットコインを購入」を遥かに上回っていたこと、そして世界の株式市場が上昇し、MSCI World Indexが過去最高の上げ幅を記録したことからも、「株を購入」の検索数が金とビットコインを上回っていたことからも分かります。
そのために、ニュースの見出しが史上最高値を付けたビットコインについて書き立てていたとしても、これは過去12ヶ月間に前回の最高値から85%急落した後のことであり、より多くの人々が金よりも急騰している株へ投資をすることを選んでいたということなのです。
ブリオンボールトの新規顧客数は前月比7%増加していました。これは、米国と英国では15%増加していたのですが、ユーロ圏からが8.5%減少していたことからでした。
2020年は一月を残すのみとなっていますが、2020年の11月末までの新規顧客数は、すでに過去最高の2011年の通年分を上回り、過去5年間の平均を176.7%上回っています。
11月の金価格の下げ幅は月間としては2016年11月の米大統領選でドナルド・トランプ氏が選出された際以来の大幅なものでしたが、年初からの上げ幅は未だ20%と世界株価の上げ幅を上回っています。
今秋の金価格の下げは、投資家にポートフォリオのリスク分散を行う機会を8月のピーク時より15%格安に与えることとなりました。
金地金価格の下落は、通常個人投資家のバーゲンハンティング的購入に拍車をかける傾向がありますが、11月も例外ではありませんでした。
11月に金地金価格がドル建てで6%下落し、ユーロ建てとポンド建てでは9%下落し、4年ぶりの下げ幅となったために、ブリオンボールトにおける金地金を購入した顧客数は、10月の数値から33.2%増加し、8月以降で最も多く、過去12ヶ月の平均よりも21.5%増加していました。
しかし、金地金を売却した顧客数もまた、11月中に66.5%増加し、8月以来の高さとなり、設立以来の15年間で、金地金価格が下落した月としては、最も急激な増加率を記録していました。
これにより、金地金現物への個人投資家のセンチメントを数値で示す金投資家インデックスは59.4まで上昇し、先月のコロナ危機前の2月以来の最低値であった57.9からも急増することとなりました。
金投資家インデックスは、その月に金の売却量よりも購入量が多かった顧客数と売却量が購入量を上回った顧客数のバランスを表します。そしてこの指数は、購入者と売却者の数が同じであれば50.0となるように設定されています。
金投資家インデックスは2011年に世界金融危機を終わらせた長い暑い夏に71.7でピークを付け、その後 2016年にドナルド・トランプ氏が大統領選で勝利した際に59.3を付けていましたが、その後は下落を続け、2018年半ばの価格の上昇では投資家が売却を進めたために50を割り込んでいました。そして、2020年にコロナ禍が発生し、3 月にその最中に65.9まで急騰したのでした。
それ以来、金投資家インデックスはその歴史的平均値である55.0以上を維持し続け、このような強さを記録的な長さで維持しています。
しかし、先月のワクチンのニュースは、かつて無いペースでブリオンボールトで顧客が売却を行うきっかけとなりました。
この夏8月のピーク時には、金地金の価格は、トロイオンスあたり2000ドルを超えていましたが、2020年のコロナ危機の時に購入した投資家の中には、金地金の価格が下落することで、金投資の含み益を失うことへの懸念がこのような売却の波を起こすこととなったようです。
先月金地金売却をした顧客の中で過去5年間にブリオンボールト口座を開設した顧客の割合は58.9%でした。しかし、11月初めの時点では、過去5年間に口座を開設して金地金を所有している顧客の割合は49.9%に過ぎませんでした。つまりは、2020年に開設された口座は、それ以前の年に口座を開設した顧客よりも42.1%高い率で11月に金地金を売却していたことになります。
しかし、顧客の売却量を差し引いても、ブリオンボールトにおける顧客の金の保有量は11月には0.3トン増加し、全体では0.7%増加して45.6トンを超え、評価額は過去最高の25億ドル(2690億円)を超えることとなりました。
この金地金の量は、世界の中央銀行の金準備においても、トップ46カ国に次いて多い量であり、民間保有の金地金としては、世界の株式市場で取引されている金ETFの126銘柄のうち15銘柄を除く金ETF銘柄よりも多い水準となります。
銀地金は、11月にドル建てで6%以上下落し、ユーロ建てとポンド建てでは9%近く下落していていました。しかし、月間平均では金価格が1.9%下落したのに対し、より産業用途が需要において高い比率を占める銀は10月の月間平均価格からはわずか0.9%の下落にとどまっていました。
そして金と同様に、11月の銀の売却者数は前月比33.2%増と、銀の購入者の増加率(17.5%)の2倍でしたが、購入者数と購入量は、売却者数と売却量を上回っていました。
このように銀の購入意欲が高まったことで、銀投資家インデックスは金投資家インデックスと同様に10月の8ヶ月ぶりの低い数値の56.8から0.5%上昇して57.2となっていました。
銀地金の重量における需要量は9.9トン増となり、ブリオンボールトの顧客のために安全に保管されている銀地金の総量は1,120トンと、年初から36.3%増加し、評価額7億9,700万ドル(830億円)と記録を更新することとなりました。
一方、プラチナの保有量は全体としてはほぼ横ばいの1.9トンと10月の過去最高値を維持し、その評価額は6,100万ドル(64億円)となっていました。
結論としては、FOMO(Fear of missing out:機会を失う恐れ)は、ビットコイン世界の個人投資家の興味を掴んだと見るかもしれません。それは、ニュースの見出しをセンセーショナルに書き立てたことが原因かもしれません。しかし、貴金属への興味はコロナ禍のピーク時よりも衰えたかもしれませんが、金融市場がパンデミックの終焉と見なそうとしている中で、FOLO(Fear of losing out:無くすことの恐れ)が金の売却を進めることとなりました。しかし、新型コロナウィルスが近い将来にコントロール可能となるという考えから貴金属の役割が無くなったと考えるのは間違いでしょう。
現在の金の上昇はCovid-19が現れる前の18ヶ月前から始まっており、その原動力となっているのは、主要諸国の中央銀行が今後何年にもわたってインフレ率を下回る金利を維持すると明言しているからであり、それによる緩やかな、しかし容赦ない通貨や預金の価値切り下げ起こることが明らかであるからです。
今回のパンデミックは、超低金利、膨大な財政赤字、そして世界的に脆弱な経済成長の見通しを更に悪化させている。金地金への今年の記録的な資金流入を繰り返すことは難しいかもしれないが、ポートフォリオの上のリスク分散のために貴金属を利用している投資家にとっては、2021年も金へのエクスポージャーを維持しておくべき理由が十分にある事は確かでしょう。