ニュースレター(2019年11月15日)金価格は貿易協議進展の楽観論で下げたものの、その不透明感と予想を下回る経済指標等で週間の上げへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1466.10ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.3%の上げ1週間ぶりの高さへ戻しています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり16.90ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.5%上げています。また、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では886.56ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.2%の下げで、2週連続の下げとなっています。
今週金相場は、米中貿易協議で合意が近いという米高官の発言などもあり、米株価が史上最高値を付けるリスクオンの中で押し下げられていましたが、週後半で発表された経済指標の悪化や、米中貿易協議の進展も不透明との観測もあり、下げ幅を戻して週間の上げを付ける方向で推移しています。それでは、日々の動きを追ってみましょう。
月曜日金相場は、トロイオンスあたり1448ドルと心理的節目の1450ドルを一時割り込んでいました。
これは、積み増されていたロングポジションの調整といったテクニカルな動きだったようですが、米長期金利が前週金曜日に付けた3か月ぶりの高さをほぼ維持していたことも、金を押し下げる要因となりました。
火曜日金相場は、株価が利益確定と買いの上げで動く中、前日から多少ながら上昇しトロイオンスあたり1458ドルと前日終値比上げて終えていました。
同日の注目のイベントはトランプ米大統領のニューヨークのエコノミック・クラブでの講演でしたが、米中貿易協議の第1弾について「もうすぐ合意する可能性がある」と述べる反面、米中首脳会談の日時や場所については言及しなかったため、リスクオンも限定的な慎重な姿勢となっていました。
水曜日金相場は、米ダウ工業株30種平均が2日ぶりに過去最高値を更新する中、トロイオンスあたり1467ドルまで一時上昇していました。
同日ロンドン昼過ぎに発表された米消費者物価指数は予想を下回り、米長期金利とドルが下げる中で上昇し、ロンドン時間夜にパウエルFRB議長が議会証言で「金融政策は現状が適切だ」と述べたことで、低金利が続くとの見方から金相場を支えることとなりました。
また、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「関税が米中の部分合意の妨げになっている」と伝え、午後に「中国が米国産農産物の購入をためらっている」と伝わったことも、金にとってはポジティブとなりました。
木曜日金相場は、同日ドルが弱含み株価が全般下げる中で、トロイオンスあたり一時1474ドルを超えるなど上昇し、ニューヨーク時間にその上げ幅を多少戻して終えていました。
日中の上げは、米中貿易協議部分合意への不透明感からと同日発表された中国の鉱工業生産と小売売上高が予想を下回ったことが米中貿易戦争の悪影響と懸念を高めたことが要因となりました。
また、同日も米長期金利が下げ、週間で10ベーシスポイントの下げとなっていたことも金を押し上げることとなりました。
しかし、その後パウエルFRB議長が下院予算委員会にて証言し、米経済に強気の発言をしたことで、調整の売りも出て金は押し戻された模様です。
本日金相場は、ロンドン午前中に米中貿易協議進展のニュースで下げて始まっていましたが、ロンドン昼過ぎから緩やかに上昇しています。
米中貿易協議関連ニュースとは、米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が、米中貿易協議の合意について「近づいている」と発言し、ロス米商務長官が「両国は協議に熱心に取り組んでおり、詳細を詰めている」と話したとも報じられ、米中協議の合意への期待が高まったことが要因となりました。
しかし、その後発表されたニューヨーク連銀製造業景気指数や米鉱工業生産はともに予想を下回ったことから、ドルが下げており金は押し上げられているようです。
その他の市場のニュ―ス
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本日コメックスのFedWatchによると、今年の利下げは97.8%無しと、ひと月前の61.1%から上昇していたこと。 -
日本の第3四半期GDPが前四半期比予想を下回り、辛うじて0.1%とプラスになっていましたが、ドイツのGDPもまた、辛うじて0.1%と2四半期連続のマイナスを避けてリセッション入りを避けていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で4.4トン減少し896トンと、9月20日以来の低い水準となっていること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで0.7トン(0.2%)減の357.2トンと週間での減少となる方向でいること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.67%減少していること。 -
金銀比価は今週木曜日までにLBMA価格では86.15から86.94と86台で推移していること。 -
また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、本日3.42まで下げ、週間の平均を4.22と過去平均の9を大きく下回っていること。 -
先週末に発表されたコメックスデータによると、先週火曜日にトランプ大統領の米中貿易協議で一部関税撤廃を検討していると伝えられ、金相場が1週間ぶりの低さへ下げていた際に、プラチナを除き全ての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。 -
コメックスの金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは火曜日に1.12%減の716トンとなっていたこと。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に13.9%減の6,610トンとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、16%増で41.4トンと8週間ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは、6.05%減の42.9トンとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は、水曜日にFOMC議事録が発表され、今後の米国の金融政策を予想する上でも市場は注目することとなります。
その他、水曜日に中国の人民銀行利率決定があり、木曜日は米国新規失業保険申請件数とフィラデルフィア連銀製造業景気指数、金曜日はドイツの第3四半期GDPとMarkit 製造業とサービス業、ユーロ圏と米国のMarkit製造業とサービス業、そして米国のロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数等となります。
なお、米中貿易協議部分合意関連ニュースとして、本日も合意が近いと伝えられて株価が上昇し金が多少下げていますが、このニュースには市場は引き続き注目することとなります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2019年11月11日~15日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2019年11月18日~22日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2019年11月11日)トランプ大統領が米中部分合意を否定しながらも金は3か月来の低値からの上げ幅を失う -
【金投資家インデックス】10月に金投資が7年ぶりの長期の需要の高まりを見せる
ロンドン便り
今週も英国では総選挙前の選挙活動やそれぞれの党が次々と打ち出す公約などがトップニュースで伝えられています。
その様な中でも昨夜は野党労働党のジェレミー・コービン氏が労働党が政権を打ち勝った場合は、British Telecomを一部国有化し、国民すべてに無料でブロードバンドを提供すると公約し、本日はBritish Telecomの株価が下げていました。
社会主義を目指すコービン党首率いる労働党は、鉄道や郵便などの事業の国有化や金融機関幹部などを対象とした増税も訴えており、City AMやFinancial Times等の経済紙は警笛を鳴らしています。
その様な中、11月に入りクリスマス商戦のスタートでもある、クリスマス用コマーシャルが多く発表されており、その中でも毎年最も注目される、ジョンルイスという英国のデパートのコマーシャルが昨日発表されてニュースでも伝えられていました。
2分半のコマーシャルの製作費用やテレビやオンラインで放映する際の費用は総計で、過去数年同様700万ポンド(約10億円弱)ほどと伝えられています。
そして、このコマーシャルのエドガーという怪獣のぬいぐるみや本やパジャマなどと多く商品化されてクリスマスに販売されます。
多くのスーパーマーケットやデパートが同様にクリスマス商戦を繰り広げますが、ストーリー性のあるコマーシャルで人々を2007年から魅了し続けるジョンルイスのコマーシャルは別格で、英国ではニュースで伝えられるほどの人気を誇っています。
昨日は英国主要日刊紙のインディペンデントでも、このコマーシャルのローンチに合わせて、過去の最も人気のあったクリスマスコマーシャルをリストアップしていましたので、そのリンクも添付させていただきます。
一足早いクリスマスムードをお楽しみください。