【金投資家インデックス】10月に金投資が7年ぶりの長期の需要の高まりを見せる
金投資家インデックスは4か月連続で上昇していました。
そして、一般投資家の金購入は、10月に金売却を大きく上回っていました。
そのために、金投資家インデックスを過去15か月で最も高い水準へと押し上げ、4か月連続と、2012年秋以来の長い期間の上昇となっていました。
このインデックスは、月初から保有している金の量が月末に増加していた顧客数と減少していた顧客数のバランスで上下します。
今年の6月には49.1と月間に売却量が購入量を上回った顧客数が購入量が売却量を上回っていた顧客数を上回り、過去10年間のデータで2度のみ起きた現象が起きていました。
しかし、2019年の第3四半期は常に上昇を続けており、金投資家インデックスは10月に前月比0.2ポイント上げて56.2と2018年7月以来の高さを付けていました。
この長期にわたる上昇は、米株価が史上最高値を更新し、世界の株式市場もまた2017年初頭の高さへと近づいている際に起きていました。
そして、この間金価格は主要通貨建てで数年ぶり、もしくは史上最高値を更新した水準を維持した後に、ドル建てにおいては9月の6.5年ぶりの高値から1.1%下げていました。
投資需要は重量においても堅調で、10月は309キロ増で顧客が保有する金総量は38.6トンとなっていました。
そのために、2019年第3四半期に継続して見られてきた、トランプ氏が2016年11月に大統領に選出されて以来の欧米の投資家が行ってきたバーゲンハンター的な、上昇時に売り下落時に買うという売買のパターンを崩すものでもありました。
過去3か月間に金価格は平均トロイオンスあたり1501ドルと、前年の同時期から24.6%上回っていましたが、この間の金の需要は2017年年末以来の多さで、8月からの3か月間では0.7トンの増加量となっていました。
これは、金貨や小規模な金地金の需要とは異なるもので、金産出量で世界第2位の豪州のパース造幣局では8月から10月の金の販売量は26.9%減少していました。また、米国造幣局ではイーグル金貨とバッファロー金貨の販売量が71.2%減少していました。
それでは、なぜこのような違いが出たのでしょうか。
一般消費者をターゲットとした金製品の世界需要は、2019年第3四半期に前年同四半期比25%減であったと、ReminitivのGFMSデータで明らかとなっていました。また、ワールド・ゴールド・カウンシルが発表した別のリポートにおいても、金貨と小規模な金地金の販売量がこの2倍の規模で減少していたことも伝えられていました。そして、この二つのレポートでは、ともに宝飾品の需要が減少していたことも明らかとなっていました。この背景としては、中国とインドの高い金価格が要因であると分析されていました。そして、ワールド・ゴールド・カウンシルは、この数年来の小売りの金の需要の低さを、価格の高さが「全世界で金の購入を妨げ、利益確定を進めた」と説明していました。
それに対してニューヨークで取引されているSPDRゴールド・シェアやiシェアーズ・ゴールド・トラスト等の金を裏付けとした上場投資信託(ETF)では、2016年以来の多くの資金の流入が見られていました。そして、ブリオンボールトも、より広い投資家によって好まれ利用されていることから、金ETF同様な動きがみられていました。
大部分の投資家は、個人のポートフォリオを持ち、収益を上げると思われるファンドや株へ投資をする中で、金を他の資産とのリスク分散のために保有しています。株価は現在はほぼ史上最高値であり、ワールド・ゴールド・カウンシルによると、主要国債の5分の4が実質利回りをマイナスとする中で国債価格は上昇しています。
このような場合、金の機会費用はほぼ無くなり、歴史的にバブルが弾けるなどの長期間金融システムが揺らいだ際にその損失を最小限に保つことが証明されている金をポートフォリオに含める傾向が強まっているということなのでしょう。
しかしながら、ブリオンボールトの顧客が保有している金の量は、金投資の需要が増加していたにもかかわらず、今年初めに利益確定が進んだことから、前年比では0.5トンの減少となっていました。
そして、月間で購入が売却を上回った顧客数は10月に前月比3.3%減で、3年ぶりの高さであった8月からは11.6%減と、2か月連続で減少していました。
しかし、売却者数も前月比26%減少し、8月からは45.6%減と、4月以来の低い数値となっていたのでした。
また、新規顧客数も10月は前月比29.2%減少し、6年半ぶりの高い数値を記録した8月の半数以下となっていました。
しかし、ユーロ圏から引き続き新たな顧客は多く入ってきていることからも、月間の新規顧客数は、これまでの12か月の平均の14.8%増で、過去5年間の月間平均の7.5%増となっていました。
金の取引量を見てみると、2か月連続で前月比20%下げているものの、過去12か月平均を14.9%上回り、日々の平均取引総額は240万ドル(約2億6400万円)となっていました。
銀投資においても、月間で売却を上回った購入者数は、10月に前月比27.4%減で、8月からはほぼ33%減と2か月連続で下げていました。
しかし、売却が購入を上回った顧客数はさらに下げて、10月に前月比35.6%減で5月以来の低い数値となっていました。
そこで、銀投資家インデックスは10月に54.2へと、9月の2年ぶりの高さの55.9から下げていました。
月間平均銀価格は、ドル建てで3年ぶりの高さであった9月から10月に3.0%下げていました。そのために、銀投資家インデックスは3か月連続で銀価格と同じ方向に動いたこととなります。このような傾向は2016年1月から見られていませんでした。
銀の需要は重量においては金ほど強くなかったことから、ブリオンボールトで顧客が保管している銀の量は、先月から全く変わらず802トンとなっていました。しかし、ブリオンボールトの顧客が保有している金の量は、米中貿易協議と英国のEU離脱に関する英国内外の動きも進展したことで地政学リスクが多少収まったこともあり株価が先月上昇している際にも増加していました。
金をポートフォリオに含みリスクを分散させる費用は、今年夏以前のほうが安かったことは確かです。しかし、史上最高値を更新続ける株式市場のリスクはさらに高まっていると言えるかもしれません。