ニュースレター(2014年5月9日)1291.25ドル ウクライナ情勢緊迫で上げた価格は緊張緩和で下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1291.25ドルと前週同価格から0.8%上げています。
週明け月曜日は、日本がゴールデンウィーク、英国がバンクホリデーで休みの中、ウクライナ情勢が緊張を高める中、金価格は上昇することとなりました。
翌火曜日は、前日の上げを多少失いながらも、狭いレンジの取引となりました。
水曜日、金価格はトロイオンスあたり1300ドルを割り、大きく下げることとなりました。これは、ウクライナ情勢が、ロシアのプーチン大統領がウクライナ東部で11日に予定されている独立の是非などを問う住民投票の延期を呼び掛け、ウクライナとの国境からロシア軍部隊を撤収したことを明らかにしたことから、緊張が緩和したことからです。
また、同日行われたイエレンFRB議長の議会証言では、前月FOMCの内容に沿って、大方ハト派的発言であったことから、金市場への影響は大きく出ることはありませんでした。
木曜日は、トロイオンスあたり5ドルほどの狭いレンジで取引されました。同日欧州中央銀行の金融政策発表後の記者会見で、ドラギ総裁が、ユーロ圏の低いインフレに対応するために、次回の金融政策会合時に何らか金融政策を行うことを示唆したことから、外為市場でユーロが動き、ユーロ建て金価格も多少神経質な動きをすることとなりました。
本日金曜日は、ロシアのプーチン大統領が、第二次世界大戦でのナチス・ドイツに対する勝利を記念するビクトリー・デーに、ウクライナからロシアへ併合されたクリミア半島を訪れたことから緊張は高まったものの、金価格には大きな動きはなく狭いレンジでの取引となっています。
ブリオンボールトニュース
今週、ブリオンボールトの金投資家インデックス4月数値が発表され、ブルームバーグで取り上げられました。ここでは、この数値は過去3ヶ月で最も低い水準となったものの、金購入者数と金売却者数の比率は2 対1となったこと、価格のボラティリティーが低い中、大規模な金投資家はポートフォリオ内の金の比率を下げたものの、多くの個人投資家は買い時と見て購入 しているという、ブリオンボールトのリサーチ主任のエィドリアン・アッシュのコメントを取り上げています。この日本語プレスリリースは、金の情報を網羅したゴールドニュースサイトでご覧いただけます。
先週に続き、今週もJETRO主催の「日本の復活 - アベノミクス(構造改革と世界における競争力)」に出席してきました。これは、1月から数回に渡り行われてきたディスカッションのまとめという位置づけでしたが、甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)がKeynoteスピーカーとして参加し、アベノミクスの一環としての成長戦略における日本政府の今後の取り組みについてスピーチを行い、質疑応答が行われました。法人税減税、TPP協議、エネルギー政策の今後など英国メディアへ率直に答える甘利大臣の構造改革への意気込み、そして日本の政府関係者の対外主要国とのダイアログを重要視する姿勢も感じられました。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「金購入者が売却者を2対1の比率で上回る」、「中央銀行の金準備の推移」 -
スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏の「Standard Bank Commodities Quarterly April 2014」、「WGC レポート:China’s gold market - progress and prospects」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週英国では、5月下旬に実施されるお欧州議会選へ向けて、選挙運動を行っている各党の様子が報道されています。
本来は、議会の主要3党である、保守党、労働党、自由民主党で争われる議席であるところが、今回は、反欧州連合の政党の英国独立党(UKIP)が、世論調査でトップに立っているとのこと。
英国独立党は、候補者が女性軽視発言や人種差別発言でマスコミに取り上げられながらも、党首のナイジェル・ファラージ氏のカリスマ的なキャラクターと機知に富んだ弁舌で支持を広げています。
実際、先月行われた自由民主党の党首ニック・クレッグ氏との欧州問題に関するテレビ討論においては、視聴者はファラージ氏が明らかに議論で打ち勝ったとの判断でした。
本来は、欧州内の自由な人と物の流れを確立するために設立された欧州連合による様々な規制や移民による問題に頭を悩ませている英国の一部の人々にとっては、英国独立党はその意見を代弁する党と見えるのかもしれません。
欧州連合に加盟しながらも、単一通貨のユーロを導入していない英国の、欧州における今後の位置づけを示唆し、そして来年行われる総選挙を占う意味でも、今回の選挙へ注目が高まってきています。