金市場ニュース

金購入のパターンがバーゲンハンター的ものから変化する

金購入者数は減少したものの、購入パターンに変化が見られています。

個人投資家の金購入傾向は、月初の下げから金価格が戻る中で、引き続き慎重な姿勢をくずしていなかったことが明らかとなりました。ここでブリオンボールトのエイドリアン・アッシュが解説しています。

金価格が、11月に夏以来の高い水準の月間平均価格となる中、個人投資家は価格上昇時に2か月連続で保有量を増加させることとなりました。このような現象は2017年1月以来のものでもあります。

そのために、ブリオンボールトで個人投資家によって保管されている金の総量は128キロ増加し39.2トン、評価額15億ドル(1740億円相当)と新たな記録となりました。ブリオンボールトでは、金の保管場所は、最も人気のあるチューリッヒの他、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロントから選択することができます。

しかし、金を購入している個人投資家の数は価格が上昇する中で減少していました。また、新たに金投資を始めた個人投資家の数も今年6月以来の低さで、世界株価が2012年以来の大きな下げを見せる等ボラティリティが高まる中で、金価格が上昇していた10月からは31.2%減少していました。

このようなことから、金投資家インデックスは6ヶ月ぶりの低さの53.4と10月の53.8から下げることとなりました。

オンラインで金地金現物へ投資を行う欧米の個人投資家数では世界最大のブリオンボールトで、実際に取引されたデータを基に算出されている金投資家インデックスは、この数値が50の場合は、その月に購入量が売却量を上回っていた個人投資家数と、売却量が購入量を上回っていた個人投資家数が、完璧に一致したことを示しています。

そして今年7月には、ブリオンボールトのオンライン市場でほぼ10年ぶりの少なさの売却者数であったことから、トランプ大統領が選出された2016年11月以来最も高い水準の56.8を付けていました。

またこの数値は、金の購入者数が典型的な月の3分の1減少したことで、2014年12月には50.5まで下げていました。この数値は再び翌月にも付け、2015年1月には数年ぶりの低い価格水準から価格が上昇すると共に、売却者数も急増していました。

2018年の今、11月の月間平均金価格は、ドル建てで4ヶ月ぶりの高さのトロイオンスあたり1220ドルで、ユーロ建てとポンド建てにおいては、5ヶ月ぶりの高さへそれぞれトロイオンスあたり1074ユーロと946ポンドへと上昇していました。

この価格の上昇からも、ブリオンボールトにおける購入者数は、7ヶ月ぶりの低さへ下げ、10月からは17.5%減となっていました。

しかし売却者数は、5か月ぶりの高さへ上昇していた10月から25.8%減とより大きく下げていました。そして、このように価格上昇時に売却者数が増加しなかったのは、2017年9月以来の事でした。

2018年に金が新たな興味を集めることがなかったことは無理もないと言えでしょう。金利が上昇し、主要な欧米の株価が今秋の急落までは記録的な高さに近づく勢いで上昇する中で、欧米の個人投資家にとっては金価格は今年ほぼ横ばい状態であったのです。

そして、金融市場全体の中では投資家の興味を引いてはいないものの、金のパフォーマンスは実際には堅固なものではあります。2019年の政治リスクが高まりは、既に金に投資をしている個人投資家の売却を止め、金をサポートすることになることでしょう。そして、個人投資家はリスクを分散させ、株式市場や不動産市場の急落時の保険として金を保有することでしょう。

そのような中で、銀価格は金とは異なり、月間平均で10月の月間上昇分の60%近くを戻して、トロイオンスあたり14.37ドルへと下げていました。これは、2018年通年では14.8%の下げとなります。

しかし、ブリオンボールトにおける銀取引は、金と同様の取引パターンで、売却者数は購入者数よりも大幅に下げていました。そのために、銀投資家インデックスは前月の52.2から52.4へと多少ながら上昇し、この数値の過去12か月の平均値となっていました。

銀投資を重量で見ると、11月に3.5トン増量して、銀総保管量は748トンと再び新記録を付けていました。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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