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金価格ディリーレポート(2025年9月8日)金価格、ドル安で過去最高の3600ドル突破 トランプ大統領「関税なし」を確認

米ドルが6週間ぶりの安値に下落する中、金価格は月曜日にトロイオンスあたり3600ドルを突破し、日中取引価格においては、2025年に入って31回目の過去最高値を更新しました。

スポット金は最大0.8%上昇し3621ドルに達し、先週金曜日に発表された米国の雇用統計が過去14年間で最も弱い伸び(2020~2021年のコロナ禍を除く)となったことを受け、ロンドン午後の指標価格オークションで2日連続の過去最高更新に向かっています。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatchツールによると、2025年末までに「3回の利下げ」が行われる確率は、前週の40%から上昇し、月曜日には74%以上となっていました。

ドルインデックス(主要通貨に対する米ドルの価値を測る指標)は7月25日以来の安値に下落。市場は、トランプ政権によるFRB独立性への介入懸念や、財政赤字拡大への不安を背景に利下げ観測が強まったことを織り込んだ。

トランプ政権1期目と2期目のドル建て金価格とドルインデックスの推移 出典元 ブリオンボールト

ドナルド・トランプ氏が1月20日にホワイトハウスへ復帰して以来、ドルはドルインデックスで10.7%下落する一方、金は33.4%上昇しています。

「金上昇の要因はドル安です」と、スイスの精錬・金融大手MKS Pampの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、日本経済新聞の取材に答えた。

「米国の関税政策などの要因で、ドルの信認が失われています。」

「米国を含め世界的に財政規律が緩み、マネーサプライが過去最高に達している中、金や他の貴金属といった実物資産の相対的価値が上昇しています。銀やプラチナは金に比べて割安で、さらなる上昇余地があります。」

産業用途が需要の約60%を占める銀は月曜日に最大1.5%上昇し、トロイオンスあたり41.34ドルに達していました。これは先週付けた14年ぶりの高値の水準となります。

銀価格は、トランプ氏が1月に大統領に復帰して以来35.6%上昇しています。

需要の3分の2を自動車用触媒を中心とする産業用途が占めるプラチナも1.5%上昇し、トロイオンスあたり1407ドルに。こちらは第2期トランプ政権発足から8か月未満で48.6%の上昇となっています。

トランプ大統領は金曜日、米国税関・国境警備局(CBP)の今夏の衝撃的な裁定を覆す大統領令に署名し、すべての金地金バーやコイン、工業用粉末や箔を、新たな国別関税の対象から外すことを決定しました。

一方、銀やプラチナ族金属については、大口地金バーや新規産出ドーレ(金銀を含む粗鉱石)形態に限って関税免除が維持されています。

米地質調査所(USGS)は8月26日、銀を重要鉱物リストに追加することを提案。プラチナはすでに2022年から重要鉱物に指定されています。

「銀が米政府の重要鉱物リストに追加され、現在セクション232調査の対象となっていることから、米市場では銀に関税が課される可能性への懸念が高まっている」と、仏投資銀行ナティクシスのアナリスト、バーナード・ダッダ氏は述べていました。

トランプ大統領は8月11日、CBPの裁定で金先物が当時の過去最高3514ドルに急騰した直後、SNSで「金の輸入に米国関税は課さない」と発言していました。

その裁定はまた、ロンドンの現物価格と米国コメックス先物の活発な取引価格との差であるニューヨーク金プレミアムを100ドル超に拡大させ、世界の金市場に混乱を引き起こしていました。

一方、中国人民銀行は日曜日、8月の金準備を2トン増やしたと発表。国家外為管理局(SAFE)のデータによれば、これで10か月連続の増加となり、保有量は2302トンに達しました。これは世界で6番目に大きな公的金準備となります。

上海黄金交易所(SGE)の金価格は本日0.9%上昇しグラムあたり819人民元に達しましたが、4月22日の過去最高値より11人民元低い水準にとどまっていました。

その結果、中国最大の消費市場であるSGEの金価格はロンドン価格に対して割安となり、先週平均の13ドルのディスカウントからさらに広がって21ドルのディスカウントを示していました。これは需要の弱さを示唆しています。

英ポンド建ておよびユーロ建ての金価格もそれぞれ1.0%上昇し、トロイオンスあたり2681ポンド、3090ユーロと過去最高を更新。

「外国人投資家が米国債から金にシフトする動きが続き、米国への信認が失われていることから、金価格はさらに上昇し、ドルの価値は低下し続けると予想している」と、ある米国のエコノミストはフィナンシャル・タイムズに語っていました。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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