金価格ディリーレポート(2025年9月1日)金価格はロンドン指標で最高値更新、中国の上海協力機構がトランプ大統領に挑む
ロンドン貴金属市場での月曜日のオークションで金価格は史上最高値を更新し、銀もトロイオンスあたり40ドルを超える14年ぶりの高値を記録しました。これは米ドル安と欧米政府債価格の下落が背景があります。
この動きは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政治的中立性の将来に対する懸念の高まり、ドナルド・トランプ米大統領の貿易関税をめぐる不透明感、そしていわゆるBRICS経済圏である中国、ロシア、インドの首脳による公の場で交わされた握手を背景としたものです。
上海協力機構(SCO)のホスト役を務める習近平国家主席は、トランプ氏の政策に言及し、「覇権主義と力による政治に断固として反対する立場を堅持し、真の多国間主義を実践しなければならない」と述べました。
貴金属取引・保管の世界的中心地であるロンドンの金価格は、月曜朝10時30分のオークションでトロイオンスあたり3469ドルと1.2%上昇し、4月22日の過去最高値を15ドル上回っていました。
先週金曜日に2025年7度目の月末価格・月間平均価格の新記録をつけたロンドン金価格は、同日午後3時の基準オークション時間に伴いさらに上昇。4月のスポット市場取引で一時記録した3500ドルを約25ドル下回る水準へ達していました。
一方、銀地金はロンドン正午のオークションで4.6%急騰し40.58ドルと、2011年9月以来の高値を記録しました。
銀が強含んだことにより、かつての貨幣金属である両者の相対価格を示す金銀比価は、85をわずかに上回る水準まで低下。これは「安全資産」である金と「工業用」銀の比率としては2024年12月以来の低水準となります。
「金価格上昇の引き金は、クックFRB理事解任を巡る騒動だ」と日本貴金属マーケット協会(JBMA)のブルース・池水氏は指摘しています。
「独立性が求められるFRBへのさらなる介入は、政治的理由で金利が経済が必要とする水準より低く抑えられた場合、最終的にインフレ上昇を招きかねない」とドイツの精錬グループ、ヘレウスも同調していました。
「これは長期的に金価格にとってプラスとなる可能性がある」と続けていました。
円建て金価格も月曜日に2営業日連続で過去最高値を更新し、1グラムあたり16,470円となっていました。円は主要通貨の中で唯一、2営業日連続で対ドル安となったことが背景です。
ドル指数(主要通貨に対する米ドルの価値を示す指標)は3営業日連続で下落を続け、7月25日以来の安値を記録していました。この間、米市場が労働者の日(レイバーデー)で休場したため、取引量は低調に推移したと、ある外国為替アナリストは指摘していました。
「米国に対する世界的な動きもこの傾向を加速させている可能性がある」と、JBMAの池水氏は述べています。
世界最大の金消費国である中国とインドの首脳は日曜日、二国間貿易の拡大と均衡化、人的交流の強化、国境を跨ぐ河川での協力、テロ対策での共同対応について協議したと、上海協力機構(SCO)会議に出席したインドのヴィクラム・ミスリー外務次官が明らかにしていました。
インドのモディ首相は7年ぶりに中国を訪問し、習近平国家主席と会談しました。SCOに参加したロシアのプーチン大統領は先月、アラスカでトランプ米大統領と会談し、ウクライナ侵攻問題について協議したが進展はありませんでした。
米国は、インドがロシア産原油の購入を継続していることを理由に、インドに対する25%の関税に追加で25%の罰則関税を課していました。一方、米中両国は関税休戦を11月10日まで90日間延長することで合意。米国が中国製品に課す関税は30%のまま維持され、中国が米国製品に課す関税は10%となっています。
ただしトランプ大統領は、中国が希土類磁石の輸出を制限した場合、中国製品に200%の関税を課す可能性があると警告していました。
上海金取引所の金価格は本日1.6%上昇し、1グラムあたり795人民元となっていました。これは4月22日の史上最高値以来の高値。しかしこの価格はロンドン相場に対しわずかなプレミアムを示すのみで、オンスあたり4ドル未満の輸入インセンティブを提供しており、これは通常の約半分の水準となります。
ユーロ建て金地金は月曜日に0.7%上昇しトロイオンスあたり2959ユーロとなっていましたが、4月のロンドン史上最高値を依然45ユーロ下回っています。一方、英ポンド建て金価格はトロイオンスあたり2563ポンドと0.7%上昇し、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の最高値を20ポンド未満下回る水準となっていました。これは両通貨が米ドルに対して強含んだためとなります。
主に工業用金属で、年間需要の約60%が産業分野である銀の英国ポンド建て価格は、トロイオンスあたり30.01ポンドという史上最高値を更新し、2011年4月の過去最高値を30ペンス上回っていました。
ユーロ建て銀価格は34.55ユーロまで上昇し、2011年の最高値(1999年1月の単一通貨導入以来の最高値)をトロイオンスあたり約1ユーロ上回っていました。
欧州株式市場は月曜日に安定して推移し、欧州全域のStoxx 600指数は0.2%上昇していました。これは、金曜日の米国テクノロジー株の大きな下げに続いたものですが、本日が米国の証券取引所が休業となる労働者の日であったことを受けた動きとなります。