【金投資家インデックス】金・銀価格の急騰に終息の兆しなし
トランプ政権2期目、コロナ危機以来最多の新規地金購入者となっています。
2025年の金と銀の価格は1979年以来最も速いペースで上昇しており、低コストで世界有数のオンライン貴金属市場を提供しているブリオンボールトでは、金融危機や経済危機の時にしか見られないような水準で、初めて貴金属を購入する人が増え続けていると、同社のエイドリアン・アッシュは報告しています。
実際、金と銀は、ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに復帰した初年を、まるで銀行危機やコロナ禍のように受け止めて反応しているようです。
そして、現在の金と銀の価格フィーバーがいずれ自然に落ち着く可能性はありますが、こうした実物資産における長期的な強気相場を反転させる要因が近いうちに出てくるとは考えにくい状況です。2013年に量的緩和縮小の話が金と銀の価格を押し下げたり、5年前にはファイザーのコロナワクチンが貴金属市場を急落させたりしましたが、今回はそのような「一つの要因で流れを変える出来事」が起こる気配はありません。
また、来年の地政学的な見通しや、トランプ大統領が連邦準備制度を掌握しているという状況を踏まえますと、地金価格の基調的な上昇トレンドは今後も続く見通しです。
過去12カ月間で、世界12万人が利用し、金・銀・プラチナ・パラジウムを合わせて過去最高の80億ドル(61億ポンド、69億ユーロ、1.2兆円)相当を保管するブリオンボールトでは、新規の地金購入が急増し、これは2020年と2011年以外のどの年よりも多く、2024年からは121.7%の増加となりました。
しかし、2025年とこれまでの貴金属需要急増との大きな違いは、西側の投資家が金融危機やコロナ危機に直面した過去と比べ、今年の初めにすでに多くの地金を保有していたという点です。そのため、今年の新規購入ラッシュは、価格がさらに上昇する中での既存投資家による利益確定売りによって相殺されています。
既存顧客を全て含めると、11月にブリオンボールトで金を購入した投資家の数は、10月の過去最高に近い水準から38.8%減少しました(10月は2020年3月に次ぐ記録的な月でした)。金の売却者数も10月の史上最高から39.3%減少しました。これにより、実際に行われた地金取引に基づいて算出された、独自のセンチメント指数である金投資家インデックスは、10月の56カ月ぶりの高水準から3.2ポイント低下し、3カ月ぶりの低水準となる54.7を記録しました。

指数が50.0を上回ると、売り手より買い手が多いことを示します。金投資家インデックスは、2011年9月の世界金融危機のピーク時に71.7の過去最高を記録し、2020年3月にはコロナ禍とロックダウンが世界に広がる中で65.9という10年ぶりの高水準を付けました。
そして2024年3月には、金価格の急騰により記録的な利益確定が発生し、新規購入者がほとんど増えなかったことから、シリーズ史上3回目の売り手過多の状況を示す47.5という最低値を記録しました。
現在の状況はこれとは異なり、新規の地金購入者は2011年と2020年以外の年で最も多くなっています。しかし価格上昇が急激なため、新規購入者の多くもすでに大きな利益を得ている状況です。実際、1月から11月までの間に金を購入した場合、ブリオンボールトを利用したドル建ての平均利益は、手数料を差し引いて23.6%となっています(ポンド建て24.3%、ユーロ建て20.3%)。
2025年の新規購入者の中には、その利益を確定する人も少なくありません。彼らは11月に保有資産の全部または一部を売却する可能性が最も高いグループとなり、月初時点で金保有者全体の12.4%を占めていましたが、先月の純売却者の21.2%を占めました。これはどの年度のグループよりも高く、次に高い2024年組を36.5%上回っています。
重量ベースでは、金の記録的な価格上昇により先月は売りが買いをわずかに上回りました。その結果、ブリオンボールト利用者が保有する金の総量は0.1トン(92kg、-0.2%)減少し、6カ月ぶりの低水準となる43.9トンとなりました。なお、これら地金はすべて、顧客が選択したロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、または最も人気の高いチューリッヒの第三者専門保管庫に保管され、保険がかけられています。
一方で評価額ベースでは、月間でドル建てで4.2%増加し、6カ月連続の過去最高となる59億ドル(44億ポンド、51億ユーロ、924億円)に達しました。

銀については、銀価格は新たな記録的水準に達する中、11月の購入者数が10月の56カ月ぶりの高水準から半減し、46.4%減少しました。一方、売却者数も10月の史上最高から23.8%減少していました。
これにより、銀投資家インデックスは6.6ポイント低下し、2020年初頭のコロナショック後の反落以来最大の下落となり、52.1という8月以来の低水準を記録しました。
銀投資家インデックスは、価格がコロナ禍の第一波で2割近く下落した2020年3月にはシリーズ最高の75.1を記録し、2024年3月には価格急騰と利益確定売りによりシリーズ最低の45.0を記録しています。
ドル建ての銀価格は11月にトロイオンスあたり50ドルを超える平均値となり、3カ月連続の月間平均の過去最高を更新しました。これは1979年以来最長の連続上昇記録です。
重量ベースでは、銀の記録的な価格によりブリオンボールトでは3カ月連続で売りが買いを上回り、利用者の保有量は0.5トン(555kg、0.1%未満)減少し、4カ月ぶりの低水準である1,153トンとなりました。
しかし評価額ベースでは、月間でドル建てで10.1%(ポンド建て9.4%、ユーロ建て10.0%、円建て12.0%)増加し、6カ月連続の過去最高となる20億ドル(15億ポンド、17億ユーロ、3,120億円)に達しました。
貴金属以外の市場では、2025年初めの水準を下回ったビットコインの急落を除けば、今年は幅広い金融市場で深刻なストレスは見られません。これは2011年夏や2020年初頭の貴金属急騰時とは対照的で、むしろ2025年の世界株式市場は史上最高値を更新しています。
しかし、金と銀のフィーバーが仮に収まるとしても、AI関連株がバブルであるという見方が強まっており、崩壊への懸念が広がっています。そして2026年を見据えたとき、もし株式ブームがバブル崩壊へと転じるのであれば、希少な実物資産である地金の魅力がさらに高まるのは、むしろ自然な流れだと言えるでしょう。






