金価格ディリーレポート(2024年10月21日)米中の公的債務規模の警告がされる中で実質金利が急騰しているにもかかわらず金価格は史上最高値を再更新 2024年10月21日 月曜日 16:53 月曜日金価格は、米国の通貨と実質金利が共に2ヶ月ぶりの高水準に上昇したにもかかわらず、来月の米大統領選を前に国際通貨基金が公的債務規模が急増していることを警告をする中で、全ての主要通貨建て史上最高値を更新し、米ドル建てにおいては今年34回目の新高値を記録しています。 現物金価格は、トロイオンスあたり2738ドルとロンドン時間昼過ぎに新高値を記録し、年初来で約33%上昇し、ロンドンの専門市場の世界基準価格では4営業日連続で新記録をつけていました。 この年初来の上げ幅は、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻とイラン人質事件と同時に、石油によるインフレがピークに達し、金が急騰した1979年以来大きさとなります。 ファンド運用大手Pimcoの元CEOで、現在はドイツの金融サービス会社であるアリアンツのチーフ・エコノミック・アドバイザーであるモハメド・エル=エリアンは「過去一年間に 金の価格に何か不思議なことが起きている」と述べていました。 「次々と史上最高値を更新する中で、金は金利、インフレ、ドルといった伝統的な歴史的影響要因から切り離されたようだ。」と続けています。 金は利回りを生みませんが、生活費の上昇を防ぐと考えられているため、金地金価格は通常、インフレが考慮された10年物物価連動債(TIPS債)の利回りである実質金利とは逆方向に動く傾向があります。 しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の0.5%という大幅な政策金利引き下げに続き、 好調な米経済データを受けて年内最後の2回の政策金利決定会合でさらに大幅な金利引き下げを実施するとの観測が後退したため、この利回りは過去20年間の3週間の上昇幅の上位10%に入る、過去3週間で23ベーシスポイント上昇し、月曜日には8月以来の高水準となる1.82%を記録していました。 ヒストリカルデータを見ると、米国の実質金利がこれほど上昇すると、金価格は平均1.2%下落しています。しかし、2024年秋の金に、通常みられる実質金利と金の負の相関に反して、金価格は過去3週間で2.8%上昇し、2月以来、TIPS利回りが20-25ベーシスポイント上昇した9回はそのたびに上昇しています。 米金融大手バンク・オブ・アメリカの分析によると、「金利の低下は、金利や配当金を支払わない金にとっては依然として強気要因ではありますが、 金利の上昇は必ずしも金地金に下げ圧力をかけるものではなくなっています。」と同社の年末の金価格予想価格は3000ドルに据え置いていることを述べた上で、米国政府の資金調達ニーズと米国債市場への影響に対する懸念が高まっているとしていることに触れています。 本日ワシントンで開催される国際通貨基金(IMF)年次総会に先立ち、シンクタンクであり政府への貸し手であるIMFは、 世界の公的債務が今年末までに100兆ドルに達し、世界の国内総生産の93%に達し、これは主に米国と中国が牽引すると警告していました。 超党派のアメリカ議会予算局(CBO)は、 アメリカの国家債務は来年、第二次世界大戦直後の1946年以来初めて年間経済生産高を上回り、2034年にはさらに122%を超えると予測しています。 超党派の連邦予算委員会(CRFB)の別の分析によると、来月ホワイトハウスを制するのは誰かにもよりますが、2026年から2035年にかけて トランプ氏によって7.5兆ドル、ハリス氏では3.5兆ドルが債務に上乗せされると算出しています。 また、中国の中央銀行は、世界第2位の経済大国の成長を後押しすることを目的とした景気刺激策の一環として、月曜日基準貸出金利を再び引き下げていました。 IMFは、中国の中央政府の債務は、国の経済生産高の24%にしか相当しないと見積もっていますが、地方政府の債務を含む公的債務全体は、現在約16兆ドルで、GDPの116%に相当するとしています。 本日上海黄金交易所の金価格は、今月の中国の需要低迷を示す大幅なディスカウントからようやく反転し、2ヶ月以上ぶりにロンドン相場に対してプレミアムとなっていましたが、人民元建ての金が1gあたり624円と6営業日連続で史上最高値を更新する中、輸入業者には依然としてトロイオンスあたり6ドルという歴史的に低いインセンティブを提供していました。 また、ユーロ建ての現物金価格は、ロンドンの昼過ぎに2523ユーロを若干上回る水準へ達し、2024年年初からは約34%の上昇を記録し、ポンド建ての英国金価格は、2102ポンドと新たな高値を記録し、年初来で28%の上昇となっていました。 銀価格は、先週6.9%上昇し12年ぶりの高値をつけていましたが、本日月曜日にさらに1.3%上昇し34.13ドルとなり、年初来の上げ幅を35%としていました。