金価格ディリーレポート(2023年9月11日)日本と中国の中央銀行が通貨安けん制に入る中、金価格は通貨建てで異なる動きとなる 月曜日, 9/11/2023 17:21 日本銀行と人民銀行が、インフレと通貨の安定化への懸念からも、為替市場で自国通貨を守るために発言した後、対ドル日本円が急騰し、中国人民元が16年ぶりの安値から反発したことで、ドル建て金価格は、月曜日に下落する米ドルに対して上昇していました。 ドル建て金相場は、一時トロイオンスあたり1930ドルと0.6%上昇し、先週の1ヶ月ぶりの低値をつけた20ドルの下げ幅の半分を取り戻していました。 しかし、英ポンドやユーロ建て金相場はロンドン昼過ぎにはほぼ横ばいで推移していました。これは、ドルインデックス(主要通貨に対するドルの価値を示す指標)が0.6%安とドル建て金価格の上げ幅とほぼ同じ水準であったことからですが、日本と中国の中央銀行のコメントを受けて、この指標は8月末以来最大下げ幅をつけていました。 世界第2位の経済大国である中国の消費者物価は先月、年率0.1%上昇し、デフレから脱却していたことが、週末のデータで明らかとなっていました。 しかし、世界第3位の経済大国である日本の消費者物価上昇率は、7月ですでに16ヶ月連続で中央銀行の目標である2%を上回っていたにもかかわらず、緩和的金融政策の継続からも、円は対ドルで8月に2.3%、先週はさらに1.6%下落していました。 日銀の植田和男総裁は、 読売新聞が土曜日に掲載したインタビューの中で、「賃金の上昇に伴うインフレ率の持続的な上昇が見られた場合、我々が取ることのできる様々な選択肢がある」と述べて、マイナス金利解除の可能性が示唆されていました。日銀は2016年年初以来、夜間金利をゼロ以下に維持していますが、7月末に植田総裁は長期債金利の「イールドカーブ・コントロール」を緩めていました。 金曜日に発表された政府統計によると、7月の日本の消費者物価上昇率は前年同月比3.3%と16か月連続で日銀目標の2%を上回る中で、実質賃金は16ヶ月連続でマイナスとなっていました。 植田総裁が金融引き締めを示唆した後、月曜日の取引開始時に日本の10年国債利回りは急上昇し、2013年以来の高水準となる年率0.705%に達していました。 先週火曜日のスポット市場取引で日本円建てにおいてはgあたり9165円の史上最高値をつけて、 ここ数週間で金地金が史上最高値を更新を続けていたため、日本円での金相場は取引開始早々に1.2%一時下げていました。 一方、上海黄金交易所の金相場は、中国人民銀行が人民元相場の1日の「固定」水準を引き上げ、投機筋に人民元を投機対象としないよう警告したことから、人民元が16年ぶりの安値から反発する中で、gあたり467.92円と、史上最高値を再度更新していました。 「外国為替市場の参加者は、 自主的に安定した市場を維持すべきである。」と人民銀行は声明を発表していました。 「投機的な取引を行うなど、市場の秩序を乱すような行動は断固として避けるべきだ」とも述べていました。 第一生命経済研究所のエグゼクティブ・エコノミストで元日銀職員の熊野英生氏は、「 円安は植田氏の頭にあったのだろう。」と述べ、先週円相場は、財務省が 昨年秋に為替市場に介入して円相場を防衛した1ドル=150円台まであと3円というところまで下落していました。 一方、オンショア人民元は対ドルで約1%上昇し、3月以来最も急激な1日の上昇となり、昨年末にすでにつけていた15年ぶりの安値の1ドル=7.30円から上昇していました。 中国の地金卸売市場は、ロンドン相場に対して歴史的なプレミアムを示し続け、新規輸入に対してトロイオンスあたり70ドルというインセンティブを提供していました。これは、2016年春に上海が日次価格ベンチマークを開始して以来、過去最高であり、一般的な水準の7倍以上でもあります。 「中国政府の)経済支援のための政策措置は、 金の現物需要を押し上げると期待されている。」と地金商のコメントがロイター通信が伝えていました。 しかし、人民銀行は今年に入り金準備を増加させて、公式データでは8月にはさらに29トンの金を購入して、10ヶ月連続の増加で総量を2,165トンという新記録を達成している中で、中国の商業銀行の金輸入の権利を制限させて、自国通貨の流出を防ごうとしていることも、ブリオンボールトが 7月に伝えていたように明らかとなっていました。 ユーロ建て金相場は、今週木曜日の欧州中央銀行による金融政策発表が行われる前に、ロンドン時間昼過ぎに0.2%高のトロイオンスあたり1796ユーロと上昇する中、 英国のポンド建て金相場は、為替市場の中でポンドが、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が中央銀行が 利上げを終了することが「近い」と国会で発言した際につけた3ヶ月ぶりの安値から強含む中、トロイオンスあたり1538ポンドと下げ幅を縮小していました。 米国財務長官で元連邦準備制度理事会(FRB)総裁のジャネット・イエレン氏は日曜日、米国が景気後退を回避しつつも、利上げを継続するとのこれまでの見通しについて質問され、「その見通しについては 非常に良い感触を得ている」と答えていました。 また、今週水曜日に発表される米国の消費者物価指数のデータを前に、「(消費者物価指数が目標に向かって下げる)まさにそのような道を歩んでいると言わざるを得ないと思います」とイエレン氏は月か述べていました。