金価格ディリーレポート(2025年11月24日)金価格は小動き、原油は下落 ロシア・ウクライナ「和平案」協議で
世界の株式市場が上昇する一方、欧州とウクライナが、同国への侵攻国で主要資源国であるロシアが起草したとされる米国の「和平案」について協議する中、原油価格とパラジウム価格が下落幅を広げるなかで、金価格は先週の狭いレンジの中で堅調に推移しています。
スポット金価格は本日、トロイオンスあたり4040〜4080ドルで推移。先週、4000ドルを割り込んだ後、米連邦準備制度理事会(FRB)が来月利下げするとの期待が再び高まったことで反発した水準を維持していました。
この動きは、トランプ米大統領が、現在ウクライナで大規模な汚職スキャンダルに直面しているウクライナのゼレンスキー大統領に対し、ロシアのウラジーミル・プーチン政権に領土を割譲する形で4年にわたる全面戦争を終結させることを狙った米国の28項目からなる和平案を受け入れるよう圧力をかける中のことです。
一方の原油は下落を続け、欧州指標のブレント原油は先週2.8%下落。ウクライナとロシアの和平合意への期待が高まることで、世界3位の産油国からの供給が飽和した世界市場に上乗せされる可能性が意識されたことからでした。

ロシア産ウラル原油価格は本日、1バレルあたり52ドル近辺と6カ月ぶりの安値に下げました。また、世界生産量の40%を占めるロシアが最大産出国であるパラジウムは、先週1.5%下落した後、本日は0.4%安のトロイオンスあたり1374ドルへと下げていました。
ロンドンのパラジウム価格は2022年3月、金の上昇をはるかに上回る史上最高値の3000ドル超を記録しました。これは、ロシアによるウクライナ全面侵攻開始から2週間後、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が新規鋳造のロシア産金・銀バーをグッドデリバリーとして認めないと発表し、1カ月後にはロンドン・プラチナ・パラジウム市場も追随したことからでした。
国有石油企業ロスネフチ(ROSN.MM)と民間石油大手ルクオイル(LKOH.MM)に対する本日から課された米国の制裁は、和平案が締結されれば解除される可能性があるとトランプ政権は述べています。米国が10月23日にこの制裁を発表した後、原油価格は約5%急騰していました。
「金は依然として、FRBの独立性に対する懸念、スタグフレーションの可能性、そして根強い地政学的リスクや国際的緊張を織り込み続けています」と、Stone X Group Inc.のローナ・オコンネル氏は最新の日次レポートで述べていました。
「モメンタムは鈍化しているものの、FRBを巡る議論や、特にウクライナ関連の地政学要因がヘッドラインを占める中、金は引き続き買い需要を得やすい」とオコンネル氏はし、4000〜4100ドルの狭いレンジでの推移を予測しています。
ロシアが世界供給の約10%を占めるプラチナは、先週2.6%下落した後、本日は0.1%安のトロイオンスあたり1520ドルとなっていました。
同じく世界供給の約10%をロシアが担う銀価格は、本日0.2%高のトロイオンスあたり50.13ドル。先週は3.9%下落していました。
ワシントンの過去最長の政府閉鎖が終わり、米国の重要経済指標の公表が再開される中、FRBの12月利下げの確率は1週間前の42%から、CMEのFedWatchによると月曜日は75%に上昇していました。
今週は米国が木曜日の感謝祭の休日を迎える前に延期されていた小売売上高、卸売物価指数(PPI)、耐久財受注の発表が予定されています。
米ドルインデックス(主要通貨に対する米ドル価値の指数)は、5月以来の高値水準から本日0.1%下落。
欧州株は上げ幅を縮小し、アジア株は上昇し、MSCIアジア太平洋指数は0.5%高となっていました。
金のユーロ建ておよび英ポンド建て価格は、金曜日の終値付近でそれぞれトロイオンスあたり3530ユーロ、3113ポンドと狭いレンジで推移。
円建て金価格は0.3%高のグラムあたり20,515円。こちらも10月中旬に付けた過去最高値に近い水準で、為替市場では日本円は今年6月以来の約40年ぶり安値から、投資家が高市早苗新首相の財政赤字拡大を伴う景気刺激策への懸念を高める中でやや持ち直していました。
暗号資産ビットコインは下落を続け、11月だけで20%超の下落と、2022年の暗号資産クラッシュ以来の最悪の月に。年初来でも7.5%下落していました。
「ドル安相場における、安全資産の受け皿となる投資商品の種類は限られてきている」と、スイスの精錬・金融グループMKS Pampの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は述べ、「ビットコインと円がトレンドを反転させているからだ」と指摘していました。
金価格(米ドル建て)は年初来で56%上昇し、銀は73%、プラチナとパラジウムも年初来でそれぞれ67%、53%上昇しています。






