金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2022年11月7日)中国の指標の悪化がゼロコロナ政策転換観測を広め、ドル安からも金は3週ぶりの高値、銀は2ドル高へ

2020年春以来最も悪化した輸出入のデータにより中国が「ゼロコロナ」政策を修正するとの新たな観測を背景に、世界の株式市場が上昇し、金相場は米ドルが急落したことで3週間ぶりの高値付近で堅調に推移していました。
 
欧米の債券市場も、明日投開票の米中間選挙を前に今年長期的に起きている下落を一旦停止し、10年物国債の利回りは、先週FRBがフェデラルファンドレートを4%を引き上げた後に落ち着いた水準の先月の15年ぶりの高値年4.30%を15ベーシスポイント下回って推移していました。
 
金相場は、先週末発表のコメックスの先物・オプションのショートポジションが先週火曜日の段階でほぼ4年ぶりの高さへ上昇していたことが明らかとなったことからも、 ショートカバーと思われる買いで先週金曜日に上昇しましたが、月曜日一旦下げたものの、ほぼその下げ幅を取り戻してトロイオンスあたり1681ドルまで一時上昇するなどと、先週の2.2%の上昇を維持していました。
 
また、 銀価格も木曜日と金曜日でトロイオンスあたり2ドル上昇し、週間では8.3%上昇して、10月初旬以来の高値の先週終値をほぼ維持して推移していました。
 
この銀の急騰は、かつて貨幣であった二つの金属の相対的な価格を示す 金銀比価をさらに下げて、6ヶ月以上ぶりの低い値である80としていました。
 
金の世界最大の消費国である中国の金価格は、金曜日の深夜から急騰して3ヶ月ぶりの高値をつけていたことからも、ロンドンの価格と中国の価格の差であるプレミアムは、トロイオンスあたり15ドルに先週から半減していたものの、依然として歴史的な水準を大きく上回っていますが、ここ数週間の10年ぶりの高値からは大きく下げていました。
 
米ドルベースの中国の輸出入総額は10月に予想外に縮小し、中国の第一次世界恐慌が深刻化した2020年5月以来の始めて両指標が予想を大きく下回るものとなっていました。
 
米ドルベースの中国の輸出入額 出典元 ロイター
北京のゼロコロナ政策の継続に国民の不満が高まる中で、監禁と強制隔離は依然として「完全に正しく、また最も 経済的で効果的な措置」だと、週末に国家衛生委員会の疾病予防管理局のHu Xiang氏は述べていました。
 
そのような中で、地方自治体は感染防止と経済開発のバランスを取る必要があると、国家衛生委員会の高官のTuo Jia氏は述べて、地域によってはその取扱が行き過ぎであるという 不平も認識していました。 
 
派生商品のプラットフォームであるサクソバンクのコモディティ戦略チームは、「中国再開の話は先週から勢いを増し、公式見解は変わっていないものの、公的な口調は軟化しています」と述べていました。
 
日本の投資銀行である野村證券の呂亭氏が率いる中国エコノミストは、「2020年春以降、中国では強い輸出成長が唯一最大の(国内総生産)成長要因となっており、輸出の縮小は成長、雇用、投資の重しになることは必至で、中国政府が ゼロコロナ政策や不動産抑制を再考するきっかけにもなるかもしれません」と述べていました。
 
一方、為替市場で対ドルでの最近の下げ幅を縮小していることから、ユーロ建て金価格は1680ユーロと0.5%下落し、英国ポンド建て金価格は1460ポンドと0.9%下落していたものの、3週間ぶりの高値となっていました。
 
ドルインデックス(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は、 10月の米雇用統計がまちまちだったことを受け、1日の下落幅としては2020年3月以来の大きさとなった金曜日の2%近い急落を更に拡大していました。
 
中国においては、政府は金曜日に、症状がないにもかかわらず陽性と判定された約3000人を含む、 3500人のCovid-19の新たな感染者を確認したと発表していました。
 
世界的な消費財メーカーであるアップル(Nasdaq: AAPL)は、鄭州省にある巨大なフォックスコン工場でのコロナウイルス感染に対応するための封鎖により、今年のiPhone 14端末の生産が当初の予想より 300万台少なくなると発表していました。
 
しかし、アナリストがゼロコロナ政策の緩和の可能性を議論する中で、香港に上場する中国株は月曜日にアジア太平洋地域の上昇をリードして2.5%高、上海上場株は先週2020年7月以来最高の週間上昇率を記録した後に0.2%高となっていました。
 
中国の総輸出額は、9月に5.7%増後に10月に 年間0.3%縮小していたことを月曜日に発表されたデータは示していました。
 
原油価格は、ヨーロッパの取引開始時に下げていたものの、その後下げ幅を縮めて、ロンドンの月曜日昼過ぎには安定して1バレルあたり100ドルに近いところで推移していました。先週は、中国の需要増加観測からもブレントとWTIがそれぞれ2.9%と5.4%上昇していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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