ニュースレター(5月23日)1291.50ドル バークレイズ銀行が金のフィキシングで罰金の支払いを命じられる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix価格は、トロイオンスあたり1291.50ドルと、前週同価格と変わりませんでした。昨今の金価格のボラティリティーの低さが際立っていますが、30日ボラティリティーは昨年末が20%であったものが、12%とまで下がっています。
週明け月曜日は、高値を押し上げながらトロイオンスあたり1300ドルを超えたものの、ロンドン午後には緩やかにその上げ幅を失うこととなりました。
同日のニュースとしては、今年9月に期限切れとなる、中央銀行金協定(ワシントン協定)が更新されたことが発表されました。この詳細は、「新たな中央銀行金売却協定(CBGA)が、金の役割を確認したものの売却制限は設定されず」でご覧ください。
翌火曜日は、翌日に前回FOMCの議事録が発表されることからも、狭いレンジの取引となりました。同日は、ワールド・ゴールド・カウンシルが、第1四半期の需給レポートを発表しました。このレポートの抜粋は、「金地金と金貨の需要が過去4年間で最低となる(2014年第1四半期)」をご覧ください。
水曜日は、FOMC議事録の発表を待つ中、緩やかに価格を下げ、発表後一時下げたものの、再び戻すこととなりました。これは、議事録においては、「ゼロからの金利引き上げを決定した時に利用する可能性のある手段について、FRBのスタッフがプレゼンテーションを行った」とあるものの、あくまでも準備という理解がされたことからです。
木曜日は、ロンドン時間午前中にウクライナ兵士がドネツク州で襲撃により少なくとも11人が亡くなったこと、タイ陸軍司令官がクーデターを宣言したこと、そして北朝鮮が論争海域の韓国軍艦へ砲撃したことが伝えられ、今週末25日にウクライナ大統領選挙を控えていることからも、地政学的リスクの高まりなどから金価格を押し上げていた模様でしたが、レンジ内に留まり、ロンドン時間午後には押し戻されることとなりました。
金曜日は、翌月曜日が米国と英国の祝日であること、また日曜日にウクライナの大統領選挙を控えて、薄商いで狭いレンジの取引となりました。
他の市場のニュース
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先週のインドでの選挙で、金輸入規制緩和をサポートするモディ氏が率いる最大野党のインド自民党(BJP)を中心とする野党連合が圧勝したことから、 木曜日にインド中央銀行が金輸入規制の緩和の一環として、2013年以来輸入制限が入っていた「Star Trading Houses」と呼ばれる民間の宝飾会社が輸入を許すことが発表されたこと。 -
本日バークレイズ銀行が金のフィキシングの不正操作に絡んで、2600万ポンドの罰金を支払うことを命じられたことが伝えられたこと。
ブリオンボールトニュース
本日、ブルームバーグ主催で貴金属フォーラムがロンドンで開催されました。弊社リサーチ主任のエィドリアン・アッシュもパネリストとして参加し、私も出席してきました。
ここでは、金市場の先行き、銀フィキシングの今後などについて議論が行われましたが、奇しくも銀のフィキシングの今後が話し合われている際に、バークレイズ銀行が金のフィキシングの不正操作で罰金を支払うことが命じられたニュースが届き、会場に一瞬どよめきが走りました。その後、パネリストが意見を求められ、銀と共に、金のフィキシングについても、業界が一丸となって透明性のある代替指標を考えていく必要があるとの意見に皆が同意して終えましたが、貴金属市場の世界指標価格の問題は会場の空気を重くしたことは否めません。
このフィキシングについては、更に動きがあり次第お伝えしてまいります。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
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ブリオンボールトリサーチ部門の「金地金と金貨の需要が過去4年間で最低となる(2014年第1四半期)」、「新たな中央銀行金売却協定(CBGA)が、金の役割を確認したものの売却制限は設定されず」 -
スタンダードバンク東京支店長池水雄一氏の「GFMS Gold Survey 2014」 -
はじめての金読本から「資産形成に近道はない」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週は、チャールズ皇太子の私的なコメントがメディアで取り上げられ、政治的に問題を巻き起こしていました。
その一言とは、「プーチンはヒトラーと全く同じことをしている。」といったもので、プーチン大統領のウクライナへの関与を、ナチスドイツのヒトラーに例えて批判したというものです。これは、チャールズ皇太子がカナダを公式訪問時に、その地の移民博物館で説明係をしたユダヤ系移民の女性がホロコーストで肉親を失ったという経験を話した際にチャールズ皇太子が先のコメントをしたとのこと。
未来の国王が政治的な発言を発するのは不適切という声もある中、ニック・クレッグ副首相は私的発言であることからも、問題はないとサポートしています。
しかし、ロシア側は、昨日英国ロシア大使館の参事官が英外務省を訪れ、英国に正式な説明を待っていることを伝えたとのことです。ロシアは、ナチスドイツとの戦いで多くの犠牲者を出していることからも、この例えは許せないものもあるようです。
来月6日には、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典でチャールズ皇太子とプーチン大統領は顔を合わせることとなるようですので、それまでにこの問題を沈静化させることを英国外務省は試みることとなるのでしょう。
現在のエリザベス女王とは異なり、自分の意見を率直に言う傾向があるチャールズ皇太子が、今後私的コメントであっても政治的なものを避けるようになるのか、マスコミは更に注目することになるでしょう。