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GFMS Gold Survey 2014

スタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が、「池水雄一のゴールドディーリングのすべて2」で、今週発表されたGFMSの最新レポート「Gold Survey 2014」をまとめています。

 

今週は GFMS Gold Survey2014の要旨をまとめてみましょう。

2013年はETFを代表とする機関投資家の投資がゴールドから出て行ったために、29%もの価格下落がおきました。そしてそれは史上最大の現物需要を 生み出しました。昨年のゴールド現物需要は4957トンと市場最高を記録。前年とくらべても15%の増加となり、この数字は鉱山から生産されたゴールドと スクラップから回収されたゴールドからの供給の総量よりも703トンも多い需要となったのです。
 
2013年は二つの大きな心理的な変化があり、それが今後何年もゴールドの価格に対する影響があると考えます。まず第一の変化は機関投資家が、株式市場 の新高値の更新と量的緩和の終了による金利上昇の可能性から、ゴールドのような金利を生まない資産から逃げ出したということです。具体的にはGold ETFがその対象となりました。2013年の年初に2698トンというピークであった残高はこの一年を通して880トンもの減少となり、2003年に Gold ETFが始まってから初めての減少の一年となりました。その結果、何度も大きな価格の下げにつながり、それが第二の変化である、個人の現物投資の復活を引 き起こしました。
 
中国、インド、東南アジア、トルコ、中東といった価格に敏感なマーケットでは、2013年の第二四半期の現物買いが急増し、夏を通して非常に強い需要が 続きました。その主な形はハイカラットジュエリー、つまり24金などの純度の高い宝飾品であり、装飾品としても投資としても意味のあるもので、それにプラ スして地金とコインも投資の対象として買われ、この投資需要は中国では45%増加し、2013年全体では360トンに達しました。ゴールドは東アジアでは 貯蓄の道具として、そして経済の不安定性のヘッジとしてその地位を確固たるものにしたといえるでしょう。
 
 

東洋の需要の盛り上がりと西洋の機関投資家の売りによって、世界を動くゴールドバーの量は飛躍的に増大し価値ベースで25%も増えました。この強烈な現物買いは2013年後半に先物市場を少しだけですが、バックワーデションにしました。(現物が不足気味になり、先物よりも高くなる現象)西洋のETFから 出てくる現物をはじめととして、それらすべてを中国が吸収したのです。ロンドンのグッドデリバリーラージバー(約12kg)をリファイナリーでキロバーな どの個人投資家向けの小さなバーに鋳直す必要があり、それが時間のづれを起こし、各地のマーケットで現物のプレミアムが大きく上昇するになりました。

 
 
「2013年の供給」
 

・鉱山生産は6%増加して3022トンで史上最高値を更新。
・生産のオールインコストは27%上昇して1620ドル。これは進行中のプロジェクトや延期されたプロジェクトの資産価値が商品相場の下げによって会計上下方修正されたため。約414ドルがその部分にあたり、これを差し引いたオールインコストは1205ドル。
・世界のスクラップ回収からの供給は22%減少して6年ぶりに低い数字である1280トン。これはドル建てゴールド価格が大きく下がったのが要因。

 
 

・現物需要の合計は15%増加。堅調だった宝飾需要と個人投資が減少した工業用需要をカバーし、その上に中央銀行の買いがありました。
・宝飾需要は18%の増加で2361トン、過去6年間で最高の数字。価格の下落がその最大の要因。
・工業用加工需要は2%の減少。電子材分野での省ゴールドの動きのため。
・現物投資は33%の急増で1377トンの過去最高数字となりました。中国とインドを中心とするアジアの主要マーケットでの大きな買いがその原動力でした。
・コインの生産は297トンで過去最高となりました。それに対してメダルはインドの需要減のため数量は減りました。
・公的機関の買いは前年から25%減少。ただ歴史的に見るとまだ高水準。
・鉱山会社のヘッジの買戻しが48トン。

 
 

以上

池水雄一氏は、貴金属ディーリングの世界でも第一人者。上智大学を卒業後、住友商事、クレディ・スイス、三井物産、スタンダードバンクと貴金属ディーリングに一貫して従事し、現在はスタンダードバンク東京支店長。Oval Next Corp.サイトで市場分析ブルース(池水氏のディーラー名)レポートも掲載。

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