ニュースレター(2026年7月31日)FOMC通過後も底堅さを維持する金市場、歴史的な長期金利高との綱引き続く
週間市場ウォッチ
今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格を比較した一週間の変動率は以下の通りです。
*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。
- 金:ドル建て価格は、前週の2週ぶりの週間の上げから一転、週間の下げ。
- 銀:前週の2週ぶりの週間の上げから週間の下げ。
- プラチナ:2週連続の週間の上げ。
- パラジウム:2週連続の週間の上げ。
貴金属市場の動向(週間)
今週の貴金属市場は、金と銀が週間で下落した一方、プラチナとパラジウムは上昇するなど、貴金属間で異なる値動きとなりました。
今週最大の注目材料は米連邦公開市場委員会(FOMC)でした。市場予想どおり政策金利は据え置かれ、サプライズ利上げへの警戒が後退したことから、行き過ぎた売りポジションの買い戻しが進み、金・銀相場は上昇しました。さらに昨日は、米GDP成長率とFRBが重視するPCEコアデフレーターがともに市場予想を下回り、追加利上げ観測がやや後退したことで、上昇基調が続きました。
一方、本日は、中東情勢の不透明感を背景に原油価格が上昇し、発表された米経済指標も米経済の底堅さを示したことで、FRBによる追加利上げ観測が再び強まりました。そのため、週末を前にしたポジション調整の売りも重なり、金・銀相場は下落して推移しています。
月間終値ベースでは、ドル建てで銀を除くすべての貴金属が2か月ぶりの上昇(金:+0.1%、銀:-1.8%、プラチナ:+4.7%、パラジウム:+5.5%)となる見込みです。
貴金属市場は、2月末の米国とイランの紛争勃発以降、原油高によるインフレ圧力への警戒からFRBの追加利上げ観測が強まり、ドルと長期金利の上昇を背景に大きく下落してきました。しかし、米10年国債利回りが2023年以来、30年国債利回りが2007年以来の高水準にある中でも、貴金属相場は底堅い動きを見せ始めています。
下記チャートでも示されているように、過去12か月ではすべての貴金属価格がプラス圏(金:+21.5%、銀:+53.0%、プラチナ:+15.9%、パラジウム:+4.6%)を維持しています。昨年末からの急激な上昇に対する調整が中東紛争をきっかけに進む一方で、長期化する地政学リスク、FRBがインフレを十分に抑制できないリスク、そして米国の財政赤字拡大への懸念などを背景に、金への需要は依然として根強いことがうかがえます。
今週の貴金属相場の動き(日次)
■ 月曜日
金・銀相場は、週明けに原油価格が下落したことを受け、金は一時トロイオンスあたり4,115ドル(1.6%高)、銀は60.07ドル(3.3%高)まで大きく上昇して取引が始まりました。
背景には、週末に米国がイランへの空爆を見送ったことに加え、イランも米国が攻撃を再開しなければ報復を行わない姿勢を示したことがありました。
そのような中、主要国の長期金利は同日やや低下したものの、依然として高水準(米国は2023年以来、ドイツは約15年ぶり、日本は約30年ぶり)で推移していました。金利を生まない貴金属にとっては逆風となる環境の中でも、金・銀相場は底堅い動きを見せていました。
■ 火曜日
金・銀相場は、翌日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感から売りが先行し、ロンドン昼過ぎには一時、金はトロイオンスあたり4,012ドル、銀は56.67ドルと、ともに約1週間ぶりの安値まで下落しました。その後は安値拾いの買いも入り、金は4,044ドル、銀は57.50ドルへと持ち直して推移していました。
翌日のFOMCでは、市場は約3割の確率で利上げ、約7割で据え置きを織り込んでいました。しかし、中東情勢の先行きが依然として不透明で、原油高によるインフレ圧力も意識される中、ウォーシュFRB議長がタカ派的な姿勢を示すのではないかとの見方が強まっていたことから、上値の重い展開となっていました。
■ 水曜日
金相場は、同日ロンドン時間夕方の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果待ちとなる中、緩やかに下落し、心理的節目であるトロイオンスあたり4,000ドルを一時割り込んだものの、買い戻しが入り4,050ドルまで回復していました。
FOMCでは、市場予想どおり政策金利は据え置かれました。声明内容はタカ派的で、メンバー12名のうち3名が利上げを支持しましたが、ドルが軟化したことで、金は4,115ドルまで上昇した後、4,088ドルへと下落しました。
銀もほぼ同様の値動きとなり、一時56.79ドルまで下落した後、59.23ドルまで上昇し、58.33ドルへと下げていました。
発表後、市場が織り込む年末の政策金利は3.94%と、弱い米消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)の発表後となる7月17日以来の低水準まで低下しました。また、ドルインデックスも2週間ぶりの低水準へ下落し、2年物米国債利回りは低下した一方、10年物国債利回りは5ベーシスポイント、30年物国債利回りは10ベーシスポイント上昇し、30年債利回りは2007年以来の高水準となりました。
この日の値動きからは、貴金属相場が長期金利よりも、ドルや短期金利の動きにより敏感に反応していることがうかがえました。
■ 木曜日
金相場は、ロンドン午前中に前日の上げ幅を削ったものの、午後に反発し、トロイオンスあたり4,119ドルと前日の高値をわずかに上回る水準まで上昇しました。その後はやや上げ幅を縮小していました。
銀相場は、金ほどの上昇とはならず前日の高値には届かなかったものの、トロイオンスあたり58.54ドルまで上昇していました。
午前中の下げは、前日のFOMC後の上昇について、市場がFOMC声明やウォーシュFRB議長の記者会見をタカ派的と受け止めたことに加え、中東情勢の悪化を背景に原油価格が高止まりし、インフレ圧力への懸念からFRBによる追加利上げ観測が強まったことで、利益確定売りが優勢となったためでした。
その後は、前日に引き続き米30年国債利回りが19年ぶりの高水準で大きく変動し、市場で米国の財政状況やFRBがインフレを抑制できるのかとの懸念が強まったことに加え、同日発表された米GDP成長率が市場予想の2.0%を下回る1.5%となり、さらにFRBが重視するPCEコアデフレーターも予想を下回ったことを受けて、追加利上げ観測がやや後退し、金は再び買い戻される展開となりました。
■ 金曜日
本日の金・銀相場は、中東情勢の不透明さから原油価格が上昇基調となる中、本日発表された米経済指標が市場予想を上回り、ドルが強含んだことから、前日の上げ幅を削り、足元では金はトロイオンスあたり4,024ドル、銀は57.19ドルへと下落して推移しています。
本日発表された第2四半期雇用コスト指数、シカゴ購買部協会景気指数、ミシガン大学消費者態度指数はいずれも市場予想を上回りました。シカゴ購買部協会景気指数は今年2番目に高い水準となりました。
週末を控え、今週上昇していたことからも、ポジション調整の売りが進んでいる模様です。
今後も、中東情勢によるエネルギー価格の動向と、それを受けたFRBの金融政策見通しが、来週以降の貴金属市場の方向性を左右する重要な材料となりそうです。

その他の市場のニュ―ス
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ワールドゴールドカウンシルが発表した最新の需給レポートによると、第2四半期に金需要は1,269トン、前半期は2,522トンと前年同半期比2%増。同四半期の金の供給は、1,269トンと前年同四半期と同水準。
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コメックス(COMEX)のデータによれば、中東情勢悪化によって原油価格が上昇していたにも関わらず、貴金属価格が堅調に推移していた際に、資金運用業者は、金を除き全ての貴金属でネットロングを減少させていました。
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金のネットロングは前週比3.7%増の370.59トンと、1月27日の週以来の高水準へと増加していました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。
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銀の先物・オプションのネットロングは3.6%減の1,556トンと、6月9日の週以来の低水準へ減少していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。
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プラチナのネットロングは25.0%減の9.5トンと3月3日以来の低さへ減少していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。
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パラジウムは、2月3日の週以来のネットロングから3月17日の週にネットショートへ転じた後、この週ネットショートは6.5%増の20.56トンと、昨年6月3日の週以来の高水準へ増加していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。
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金ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに1.43トン(0.14%)減の1,007.871トンと、7月22日以来の低い水準で、前週の6月24日以来の高い水準から下げ、週間の減少傾向となっています。月間では、8.85トン(0.89%)増で、2月以来の増加傾向。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。
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金ETF第2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.35トン(0.08%)減の461.88トンと、7月23日以来の低さで、前週の6週ぶりの週間増加から一転週間の減少傾向となっています。月間では、0.52トン(0.11%)増で、4月以来の月間の増加傾向。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。
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銀ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに19.68トン(0.13%)減の15,047.36トンと、前週の6月1日以来の高い水準から下げて、週間では2週ぶりの減少傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。
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金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週69台前半で始まり、週半ばに70台を超え、本日69台後半へ若干下げて推移しています。2025年の平均は87.85、2024年は84.75、2023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。
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上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、2月27日の週からプレミアムへ転じており、今週の平均プレミアムは7.53ドルと前週の4.36ドルから上昇していたこと。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週の貴金属相場は、引き続き中東情勢の動向に注目が集まる中、米連邦公開市場委員会(FOMC)による政策金利の発表に加え、米GDPや、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア・デフレーターなどの経済指標を受けて大きく動くこととなりました。
来週は、米雇用関連指標の発表が相次ぎます。市場は、火曜日の雇用動態調査(JOLTS)求人件数、水曜日のADP全米雇用報告、そして金曜日の米雇用統計に注目することとなります。
その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026年8月3日~7日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2026年7月27日~31日)今週のの結果をまとめています。
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主要経済指標(2026年8月3日~7日)来週の予定をまとめています。
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金価格ディリーレポート(2026年7月30日)金価格、19年ぶり高水準の米長期国債利回りへの懸念の中、市場のFRB見通し修正で底堅く推移
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。
ロンドン便り
今週の英国では、米国とイランの紛争やウクライナ戦争も大きく報じられていますが、それ以上に、南欧で広がる山火事に加え、イングランド東部で発生した大規模な山火事や、イングランドの半数で干ばつが宣言されるなど、猛暑の影響が広く伝えられています。
そこで、異常気象に見舞われている英国についてまとめてみましょう。
① 5・6・7月すべてで35℃超を観測(史上初)
② 30℃超の日数が1976年の夏全体を上回る(7月中旬時点)
③ 1976年以来の記録的な暑い夜(最低気温)
④ イングランドで観測史上最も暑い6月
⑤ 7月の降水量が観測史上最低水準となり、イングランドの半数で干ばつを宣言
⑥ イングランド東部サフォーク州で約150ヘクタールを焼く大規模な山火事が発生
⑦ 7月の山火事件数が観測史上最多
記録的な猛暑や干ばつ、山火事が相次ぐ今年の英国の夏は、気候変動の影響を改めて実感させるものとなっています。こうした異常気象は、私たちの暮らしにも少しずつ変化をもたらし始めているのかもしれません。
英国以上の猛暑に見舞われているフランスでは、エアコンの争奪戦が起きていることもニュースとなっていました。また、英誌 The Economist は「欧州人はエアコンをもっと受け入れるべきだ」と題した記事で、猛暑が常態化する中、冷房は贅沢品ではなく、人々の健康を守るための設備として考えるべきだと論じています。夏にエアコンを備えていない家庭が一般的な英国でも、今年の記録的な暑さを経験し、「英国の夏」の常識は少しずつ変わり始めているのかもしれません。




