金市場ニュース

ニュースレター(2026年4月24日)中東リスクとタカ派的政策見通しで貴金属は下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

一週間の貴金属価格の変動率 出典元 ブリオンボールト

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は3週ぶりの週間の下落で、金曜日価格で42日以来の低値。
  • 3週ぶりの週間の下げで、金曜日価格で42日以来の低値。
  • プラチナ3週ぶりの週間の下落で、金曜日価格で42日以来の低値。
  • パラジウム3週ぶりの週間の下げで、金曜日価格では42日以来の高値。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属市場は、イランと米国によるホルムズ海峡を巡る地政学的緊張に大きく左右されました。海峡封鎖や紛争激化への懸念が原油価格を押し上げ、インフレ圧力への警戒が強まりました。これを受けて主要中央銀行の利下げ観測は後退し、ドルおよび長期金利が上昇、貴金属価格には下押し圧力がかかる展開となりました。

また、火曜日にはトランプ大統領が指名した次期FRB議長のケビン・ウォーシュ元理事が上院銀行委員会の公聴会で証言し、FRBの独立性の重要性を強調するとともに利下げに慎重な姿勢を示し、市場の利下げ観測は一段と後退しました。

結果として、中東情勢の長期化による原油・インフレへの影響に加え、次期FRB体制下においても利下げに慎重なスタンスが確認されたことで、年内の利下げ観測は大きく後退しています。CMEFedWatchツールによると、年末の政策金利見通しは3.6%まで上昇し(ほぼ利下げなし)、イラン紛争前の約3.0%(少なくとも2回の利下げを織り込み)から大きく切り上がっており、市場の金融政策見通しは大きく変化しています。

市場の米政策金利予想とドル建て金価格の推移 出典元 ブリオンボールト

今週の貴金属相場の動き(日次)

 

月曜日

週末のホルムズ海峡を巡る緊張の高まりを受け、原油価格が前週末の下げを取り戻し、ドルが強含む中で、金・銀相場は週明け早朝に一時下落する場面が見られました。ただし、その後は下げ幅を縮小。日中の安値は金がトロイオンスあたり4,738ドル、銀が78.65ドルとなりました。

一方、米国とイランの停戦および和平協議を巡っては、イランが一度ホルムズ海峡の封鎖を解除したものの、米国がイラン関連船舶の航行を制限し、船舶を拿捕したことで、イラン側が再び封鎖を実施。さらに停戦デッドラインまでに交渉団を派遣しない意向を示したことで、協議の行方は不透明な状況となっていました。

 

火曜日

金および銀相場は、停戦期限(2週間)のデッドラインを翌日に控え、イランと米国による和平協議の不透明感が強まる中、前週の上昇分を削る展開となりました。NY時間には、金は4,669ドル、銀は75.41ドルと、ともに一週間ぶりの安値を記録しました。

ロンドン時間夕方においても、イランは和平協議への参加姿勢を明確にせず、市場では紛争再開への警戒感が高まりました。米株式市場は上昇して寄り付いた後、下落に転じていました。

また、原油価格は上昇し、ブレント原油は1バレルあたり98ドル台を推移。これを背景にドルインデックスは前日比約0.3%上昇しました。

同日、次期FRB議長に指名されたケビン・ウォーシュ元理事が上院銀行委員会で証言し、政治的圧力に屈しない姿勢を示したことで利下げ観測が後退。年末時点の政策金利見通しは約3ベーシスポイント上昇し、米長期金利も約5ベーシスポイント上昇しました。こうした金利上昇とドル高が、貴金属価格の下押し要因となりました。

 

水曜日

金・銀相場は前日の安値から反発したものの、上値は限定的となりました。ロンドン時間午前中に上昇した後、上げ幅を削り、LBMA価格ベースでは金が4,742ドル、銀が74.55ドルと下げて終えていました。

上昇の背景には、トランプ大統領が停戦デッドラインの無期限延期を示唆したことで、ドルと長期金利がやや低下したことが挙げられます。

しかしその後、イランによるホルムズ海峡での船舶攻撃が報じられると、原油価格、ドル、長期金利はいずれも再び上昇。地政学リスクの高まりが結果的に貴金属市場には逆風となりました。

短期的には、金利とドル動向に加え、中東情勢のヘッドラインに左右されやすい展開が続いています。

 

木曜日

金・銀相場は下落しました。ホルムズ海峡を巡る緊張の高まりを背景に原油価格が上昇し、インフレ圧力への警戒から利下げ観測が後退。これを受けてドルおよび米長期金利が上昇し、貴金属価格の上値を抑えました。

LBMA価格ベースでは、金はトロイオンスあたり4,719ドル、銀は74.55ドルまで下落しました。

トランプ大統領は、機雷設置の動きに対する攻撃を海軍に指示。一方でイランは港湾封鎖が継続する限り交渉に応じない姿勢を示しており、緊張は一段と高まっていました。

同日発表の米経済指標では、製造業PMI(約4年ぶりの高水準)およびサービス部門PMIがともに市場予想を上回り、景気の底堅さが確認されました。新規失業保険申請件数はやや増加しました。

企業決算では、AI関連投資の回復などを背景に業績の底堅さが確認されましたが、利下げ観測の後退を受け、前日に最高値を更新していたS&P500を含む主要株価指数は反落しました。

 

金曜日

本日の金・銀相場は、イランと米国が和平協議に向けて動いているとの観測を受け、原油価格が一時下落し、ドルもやや弱含んだことから、反発して推移しています。

もっとも、ホルムズ海峡を巡る対立は依然として解消されてなく、米国はイラン関連船舶の航行を制限し、イランは通行料が支払われない場合の封鎖を維持する姿勢を示しています。

一方で、イラン外相のパキスタン訪問が報じられるなど外交的動きも見られており、和平協議への期待がやや高まっています。

ただし、根本的な対立構造に変化はなく、今後も地政学リスクの動向が貴金属市場の主要なドライバーとなる見通しです。

 

一週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト一週間のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

 

  • コメックス(COMEX)のデータによれば、米国とイランが和平交渉のために2週間の停戦に合意し、和平への期待が高まっていた414日までの1週間において、金のネットロングは前週比7.3%増(3ヶ月ぶりの週間の上げ幅)の307.46トンと前週の2024227日の週以来の低水準から一月ぶりの高さへ増加していたこと。建玉は、200962日の週以来の低さから2.7%増。2025年のネットロングの平均は465.8トンで、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションは10.0%増の1,718トンと、2週ぶりに増加して120日の週以来の大きさへ増加していたこと。建玉は、前週の2023711日以来の低さから2.3%増。2025年の平均は、5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナはネットロングを20.4%増加させて25.3トンと、6週連続で増加して昨年107日の週以来の高さへ。2025年平均は、16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、23日の週以来のネットロングから317日の週にネットショートへ転換し、31.6%減の5.35トンのネットショートと前週の昨年107日以来の大きさから減少。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • 木曜日までのコメックスの取引量においては、金は週間で前週比12%増で、前週の227日の週以来の低さから増加。銀は16.4%増と417日の週以来の高さ。プラチナは23.3%増で、前週の2023721日の週以来の低さから増加。パラジウムは、43.6%増で前週の20241227日以来の低さから増加。

  • ETFの最大銘柄であるSPDRゴールド・シェアの残高は、今週木曜日までに11.43トン(1.08%)減で1,049.193トンと331日以来の低さで、2週ぶりに減少する傾向。週間の現象学は320日の週以来の低さ。年間ベースでは2025年は、198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間の増加。2024年は6.59トン(0.75%)減少。202338.53トン(4.4%)減、202257.2トン(5.9%)減、2021195トン(6.8%)減。

  • ETFの第2規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに、0.03トン(0.01%)増で481.76トンと414日以来の高さで、週間の増加傾向。年間ベースでは、2025年は101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、202242トン(8.9%)減、202136トン(7.0%)減。

  • ETFの最大銘柄であるiShareシルバーの残高は、今週173.16トン(1.13%)減で15,137トンと2週ぶりの週間の減少で、414日以来の低さ。年間ベースでは2025年は2120.59トン(14.45%)増と2年連続で増加。2024年は720.44トン(5.3%)増。2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週60台前半で始まり、徐々に上げて昨日

  • 63へ達し413日以来の高さとなり、本日62台半ばへ下げて終える傾向。2025年の平均は87.852024年平均は84.752023年は83.275年平均は82.44。値が高いと銀が割安、低いと割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は227日の週からプレミアムへ転換し、週平均で前週の9.60ドルから12.10ドルと43日の週以来の高さへ上昇していたこと。2025年の平均は、2.85ドルのプレミアム。2024年平均は15.15ドルのプレミアム、2023年は29ドル、2022年は11ドル。需要増に加え、中国中銀の輸入許可制限も背景。過去5年平均は6.9ドルのプレミアム。

来週の主要イベント及び主要経済指標

 

今週は、中東紛争に関連した和平協議の行方を背景に貴金属市場が動いたほか、トランプ大統領が指名した次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長候補であるケビン・ウォーシュ氏の上院銀行委員会における公聴会での発言も、市場に影響を与えました。

 

来週は主要中央銀行の政策金利発表が相次ぎます。日本銀行が火曜日、米連邦公開市場委員会(FOMC)が水曜日、そしてイングランド銀行と欧州中央銀行が木曜日に予定されており、重要な週となります。また木曜日には、FRBがインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが発表される予定で、市場の注目が集まります。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026427日~51日)をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週の英国では、中東紛争およびホルムズ海峡を巡るイランと米国の動きが引き続き大きく報じられています。それに加え、国内では、スターマー首相による前米国大使任命責任を巡る国会での議論や公聴会が連日主要ニュースとなっています。

そのような中、本日、英国で審議されていた安楽死(assisted dying)の合法化法案が、最終的に成立せず廃案となったことが伝えられていますので、その概要をご紹介します。

今回、この法案が廃案となったのは、上院において1000件以上の修正案が提出され審議が長期化し、採決に至らないまま会期終了により失効したためです。

同法案は、余命6か月未満の成人に限定し、医師2名などの承認を条件に「自らの意思で死を選ぶこと」を合法化する内容でした。

これに対し、賛成派は、少数の議員による審議引き延ばしにより民主的手続きが損なわれたとし、法案は内容ではなく手続きによって阻止されたと主張しています。一方、反対派は、安全対策が不十分であり、社会的に弱い立場にある人々が圧力を受ける可能性があると指摘しています。

先進国においては、厳格な条件(耐え難い苦痛や本人の明確な意思など)の下で、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、スペインなどが、医師が直接薬剤を投与する「積極的安楽死」を合法としています。

これに対し、英国の法案と類似する「医師幇助自殺」(医師は処方のみを行い、最終的な行為は本人が行う)が合法とされているのは、スイス、アメリカ合衆国の一部の州、およびオーストラリアの一部の州です。

なお、同法案の支持者は次の議会での再提出を目指す意向を示していますが、英国社会における「自己決定権」と「弱者保護」という二つの立場の隔たりは大きく、法案成立への道のりは依然として不透明です。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ