金市場ニュース

ニュースレター(2025年5月9日)FOMCと米英貿易協定を経て、金価格は金曜日ドル建て価格の最高値を記録

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格と比較すると、2.4%高でトロイオンスあたり3326ドルと2週ぶりの上昇で、金曜日価格としては最高値を記録しています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格と比較して0.5%高のトロイオンスあたり32.54ドルと上昇しています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のこの価格から1.9%高でトロイオンスあたり989ドルと5週連続で上昇となっています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のこの価格から2.6%高でトロイオンスあたり978ドルと2週連続で上昇しています。

の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属価格は、週初めから全般上昇に転じ、FOMCで予想通り金利が据え置かれ、米英貿易協定の発表等と、金にとっては向かい風とも言えるニュースを経て、金を筆頭に大きく上昇し、ドル建て金価格は金曜日価格では最高値を記録することとなりました。

この間、インドとパキスタンの紛争が火曜日に再燃する中で、多少地政学リスクに反応した動きもありましたが、基本は金市場が引き続きトランプ政権の関税政策関連で話し合いが行われる、協定が成立する等の良いニュースに反応し、その他の貴金属もその動きに反応する形で推移しています。

今週のチャートとして、MKS Pamp社のNicky Shiels氏がまとめた、ドル建て金価格(左軸)と関税協定関連の良好なニュースの数(右軸)をお届けしましょう。ここで、貿易及び関税協定の可能性が示唆された際に、短期的であるものの、金価格が下げていることが見られます。

ドル建て金価格とトランプ政権の関税協定関連ニュースの数の推移 出典元 MKS Pamp 今週の金相場について

英国祝日明け火曜日金相場は、中国と英国が祝日から戻る中で、トロイオンスあたり3438ドルと4月22日以来の高さで、最高値まで62ドルほどまで上昇後、3400ドルまで戻して終えていました。

この背景はトランプ政権の関税関連協議の前進が見えない中で、不透明感からも米株式が10営業日ぶりに下げ、ドルが弱含んでいたこと等となりました。

また、同日ロンドン時間夜にインドが、4月22日にカシミール地方のインド支配地域で武装集団が観光客26名を殺害したテロへの報復として、パキスタン国内のテロ拠点を攻撃したことが伝えられ、地政学リスクの高まりもあり、金の安全資産の需要を高めていました。

この関係でドルが安全資産と買われて強含んだことは、金価格を若干押し下げることともなりました。

ちなみに、同日祝日から戻った中国の上海黄金交易所(SGE)の金価格とロンドン価格の差はトロイオンスあたり50ドルと、金価格が史上最高値をつけていた4月の高値以来の水準へ急騰し、中国の需要の高さも確認されていました。

水曜日金相場は、今晩のFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見を待つ中、トロイオンスあたり3390ドル前後を推移し、パウエル議長の記者会見後に若干下げて3376ドルで終えていました。

FOMC後の発表では、予想通り3会合連続で利下げを見送り、フェデラルファンド金利の誘導目的は4.25~4.50%と、今年年初から変わらずとなっていました。

声明文では経済見通しの「不確実性が高まった」とし、失業率とインフレ率の上昇リスクが高まったと指摘されていました。

ここまではほぼ想定内でしたが、パウエル議長が記者会見で不確実性が経済政策の決定に影響を及ぼしていると認める一方、経済は依然として好調だと改めて強調したことで、FRBによる将来の利下げ観測が後退したことが、金価格を押し下げた要因となった模様です。

木曜日金相場は、世界株価が米英貿易協定を好感して上昇する中で、トロイオンスあたり3289ドルへ一時下げて、3316ドルまで戻して終えていました。

金価格は同日もアジア時間に上昇して3414ドルをつけた後に、米英貿易協定の発表が同日行われることが伝えられる中で下げ、トランプ大統領によって貿易協定について発表が行われ、英国からの鉄鋼とアルミニウムの25%の関税が取り除かれ、英国からの自動車への関税は10万台までは27.5%から10%と低い率が適用されるとのことで、センチメントとしてはリスクオンとなっていました。

しかし、欧州連合は同日、米政権との貿易交渉が決裂した際に発効する約1000億ユーロ規模の追加の報復措置案を公表しており、貿易戦争への懸念が完全に払拭されてない内容でした。

また、中国における金の需要は、人民元建て金価格が世界指標を本日もトロイオンスあたり40ドルを超えて上回っており、中国の需要の強さは継続して、金価格のサポートとなってい多様です。

金曜日金価格は前日の下げ幅を若干削りながら、ロンドン夕方にトロイオンスあたり3343ドルまで上昇して、3339ドルまで戻して推移していました。

本日は、明日行われる米中貿易協議への期待と懸念もあり、米株価は全般上昇しているものの、頭は重たい状況となっていました。そのような中、安全資産としての金の需要も、必ずしも無くなっていないものの、上昇ペースは緩やかなものとなっていました。

なお、中国人民銀行は、先月国内商業銀行に対する金の輸入枠を引き上げ、金輸入のためのドル購入も許可したと、関係者の話として伝わっています。そこで、今週も中国の金価格が、昨年4月の中国が金価格を押し上げていた際の高い水準のロンドン価格を上回るプレミアムをつけていたことからも、金需要の高まりが示唆されています。一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に4月29日までのデータが発表され、トランプ大統領の関税政策が軟化する観測で金価格が下げていた際に、金とパラジウムで強気ポジションが削られ、銀とプラチナでは強気ポジションが積み増されていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、7.8%減で360.38トンと6週連続で減少し、2024年2月下旬以来の低さへ下げていたこと。価格は3.7%安でトロイオンスあたり3305ドルと前週の3433ドルの史上最高値から下げ、建玉は11.9%減で前週の2024年9月末以来の高さから下げていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、19.4%増で4860トンと3週連続で増加して4月初旬以来の高さとなっていたこと。価格は前週比1.9%高で、トロイオンスあたり33.23ドルとやはり4月初旬以来の高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングであったものの、4月8日からネットショートへ転換し、先週は76.2%減で3.4トンと、3週連続で昨年の3月初旬以来の大きさからは減少していたこと。価格は前週比2.5%高でトロイオンスあたり967ドルと3週連続で上昇して4月初旬の高さとなっていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに1.4%増で42.4トンと前週の昨年8月末以来の高さを維持していたこと。価格は1.0%高でトロイオンスあたり946ドルと2週ぶりの高さとなっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに4.6トン(0.14%)減少して939.69トンと4週連続の週間の下落の傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.62トン(0.14%)増で438.17トンと2023年8月23日以来の高さで、6週連続の週間の上昇傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに56.57トン(0.40%)減で13,958.74トンと4月25日以来の低さで週間の減少の傾向であること。
  • 金銀比価はLBMA価格ベースで、今週102台前半で始まり、昨日103台を超えて4月22日以来の高さとなった後に、本日102台前半へ戻して終える傾向。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週22397ドルと4月22日の最高値に次ぐ高い水準で始まり、徐々に下げて本日2336へと下げて終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週26ドルのプレミアムで始まり、本日7ドルと4月15日以来の低さへと下げて終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は先週木曜日から今週火曜日まで長期の祝日後、今週の週間平均は47.49ドルと昨年4月に中国が金を押し上げていた際以来の高さへ、前週の29.39ドルから上昇していたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は5月8日から負の相関関係へ転換し-0.20としていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は4月3日から負の相関関係へ転換し、-0.86と関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は4月29日から正の相関関係で、木曜日までで0.65と関係を若干週間で強めていたこと。

今週の主要イベント及び主要経済指標

今週貴金属相場は、引き続きトランプ大統領の関税関連政策へ注目し、またFOMC後の声明とパウエル議長の記者会見の内容で動いていました。

来週もトランプ大統領の関税政策へ市場は注目しますが、それに加えて、火曜日の米消費者物価指数、木曜日の卸売物価指数、小売売上高等も重要となります。

詳細は主要経済指標(2025年5月12日~16日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週もブリオンボールトの最新の金投資家インデックスのデータとリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュの関連コメントが、ロイター通信社主要メディアで取り上げられています

また、私Whitehouse佐藤敦子のの下記のコメントも共同通信社の記事で引用されたことから、北海道新聞、神奈川新聞、山陽新聞、愛媛新聞、佐賀新聞、そしてそれぞれのオンラインサイトでもこの記事が発信されています。

金のオンライン取引を手がける英ブリオンボールトの日本市場責任者、ホワイトハウス佐藤敦子さんは「株式市場のボラティリティー(変動)などを考慮すると、金の投資対象としての魅力は引き続き高い」との見解を示した。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では引き続きトランプ大統領の関税政策、ウクライナ戦争、イスラエルとガザ地区の武装組織のハマスとの紛争、それに加えてインドとパキスタンの紛争、そして木曜日に新たなローマ教皇が選出されたことからもこの関連ニュースなどが大きく伝えられています。

また、英国関連では、昨日発表された米英間の新たな関税協定、そして今週5月8日が第二次世界大戦でドイツが降伏したヨーロッパ戦勝記念日(Victory in Europe:VE Day)で、今年がその80周年にあたることからも、関連イベントに関して大きく伝えられていました。

そこで、本日はこのVE Day関連イベントについてお伝えしましょう。

まず、主なイベントを日程順にご紹介します。

VEデー80周年記念行事(2025年5月5日〜8日)

5月5日(月・祝) – ロンドン中心部での開幕イベント

  • 軍事パレードとフライパス:ホワイトホールからバッキンガム宮殿までの軍事パレードが行われ、約1,000人の軍関係者が参加。その後、レッドアローズを含む23機の航空機によるフライパスが披露されました。
  • HMSベルファストでのストリートパーティー:テムズ川に係留されている第二次世界大戦時の戦艦HMSベルファストで、1940年代のレシピを再現したアフタヌーンティーが振る舞われました。

5月6日(火) – 全国的な記念イベント

  • タワー・オブ・ロンドンのポピー展示:夏季を通じて、タワーの堀に数千の陶器製ポピーが展示され、戦没者への追悼が行われています。
  • 歴史的建造物のライトアップ:イギリス各地のランドマークが記念としてライトアップされました。

5月7日(水) – 音楽と演劇による追悼

  • ウェストミンスター・ホールでのコンサート:国会議事堂内のホールで、パーラメント合唱団による特別コンサートが開催されました。
  • IWMノースでの「愛する人への手紙」展示:マンチェスターの帝国戦争博物館で、戦時中の家族の手紙を紹介する演劇形式のイベントが行われました。

5月8日(木) – VEデー当日の主要イベント

  • ウェストミンスター寺院での記念礼拝:国王夫妻や王室メンバー、退役軍人らが参列し、感謝の礼拝が執り行われました。
  • ロンドンのホース・ガーズ・パレードでのVEデー・コンサート:国王夫妻や王室メンバー、退役軍人が参加し、チャールズ国王が退役軍人を称えるスピーチを行ないました。
  • ロイヤル・アルバート・ホールでの「VE Day 80: The Party」:RAFスコードロネアーズやロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団による音楽と、戦時中の個人の体験談を交えたイベントが開催されました。
  • 全国一斉のビーコン点灯:21時30分に、イギリス全土で1,000以上のビーコンが点灯され、統一と平和への願いが込められました。
  • I Vow to Thee, My Country」の合唱:95歳の退役軍人であるコリン・サッカリー氏のリードのもと、全国でこの賛美歌が合唱されました。

これらの他にも、それぞれの地域では、近所の方々が集まりストリートパーティが行われたり、国旗の掲揚、地域の劇場や教会で1940年代の音楽や劇が披露されるなど、地域ぐるみの催しも数多く行われました。

80年の歳月を経て、戦争を実体験した方々が少なる中で、ウクライナ戦争や中東の紛争が続いている現状は、人々に改めて平和の大切さを認識させ、それを守るための努力を惜しまないことの重要性を再確認する良い機会となっているようです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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