金市場ニュース

ニュースレター(2025年3月21日)金価格は6営業日連続の史上最高値の更新を金曜日に止めたものの3000ドルは維持

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格(午後3時)と比較すると、1.24%高でトロイオンスあたり3014ドルと、金曜日価格として2週連続で上昇して、やはり2週連続で史上最高値を更新しています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格(午後12時)と比較して、2.11%安のトロイオンスあたり33.18ドルと2週ぶりに下げて、前週の昨年10月末以来の高さから下落しています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から1.56%安でトロイオンスあたり977ドルと2週ぶりの下げで、前週の2月14日以来の高さから下げています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA PMパラジウム価格(午後2時)から1.13%安でトロイオンスあたり971ドルと2週ぶりの週間の下げで、前週の2月24日以来の高さから下げています。

今週のの金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週金価格は前週金曜日に達したトロイオンスあたり3000ドルを月曜日に再び超え、前週木曜日からの6営業日連続で史上最高値をLBMAのPM価格では記録し、本日取引時間中に一時3057ドルをつけて下げたものの、3000ドルを維持して終える傾向です。

この背景は、トランプ政権の関税政策による経済停滞と高インフレによるスタグフレーション懸念や、米国がイエメンの新イラン武装組織フ―シ―派への攻撃を先週末行い、イスラエルが一時停戦を破ってガザ地区ハマスの攻撃を再開し、ウクライナ戦争の停戦も程遠い観測などからも、地政学リスクによる安全資産の需要が高まっている模様です。

金価格が過去に心理的節目の1000ドルや2000ドルを超えた際に、その水準が維持されるまでには1000ドルの際は18か月、2000ドルの際は3年半と時間を有していました。そこで、先週金曜日に越えた3000ドルもまた、この水準を維持するまでには3000ドルの攻防があると思われます。

その様な中、先で述べたようにトランプ氏が金融市場にもたらす影響からも、金価格はトランプ氏が大統領選で圧勝して以来LBMAのPM価格では9.9%、その後大統領に就任して以来11.0%と大きく上昇しています。それに対し、米株価指数はS&P 500種は大統領選以来マイナス2.5%、大統領就任以来マイナス6.0%、ナスダック100種もまたそれぞれマイナス1.3%とマイナス6.7%と顕著に下げて一年前からの上げ幅を削っています。

そこで本日は、トランプ政権の影響が見れる、金価格(黄色)、S&P500種(青)、ナスダック100種(水色)の過去1年間の価格の動きのチャートをお届けしましょう。

過去1年間のドル建て金価格とS&P 500種とNasdaq100種のチャート 出典元 グーグルファイナンス

銀地金とプラチナとパラジウムは今週は週間の下げを見せており、それぞれ金と比較しても、金銀比価は2月末以来の高さ、プラチナの金との差はトロイオンスあたり2000ドルを超える史上最高で、そのプラチナを下回る価格であるパラジウムと、安全資産の需要を持つ金と異なる動きをしています。これは、関税による経済停滞による工業用需要減少観測が背景にある模様です。

今週の金相場について

週明け月曜日金相場はトロイオンスあたり3000ドルを試し、一時3001ドルをつけた後に押し下げられたものの、3001まで戻して終えていました。

同日はOECDがトランプ政権の関税政策による先行き不透明感からも、世界及び主要国の今年と来年のGDPの予想を引き下げ、インフレ予想を引き上げたことが伝えられていました。また、米小売売上高は予想を下回ったことからも、金の安全資産の需要が高値圏でも維持されることとなりました。

また、前週史上最高値をつける直前のコメックスの金先物・オプションのネットロングが7週連続で削られ、縦玉も2000ドルを超えた際の100万枚の水準を20万枚強下回っていたことからも、先物市場の金を押し上げる余力は残っていたことから、ショートカバーも入っているようでした。

火曜日金相場は、イスラエルがガザ地区の攻撃を再開して中東の地政学リスクが高まったこともあり、ロンドン時間早朝から上昇を始めてトロイオンスあたり3038ドルを一時つけ、3031ドルへ戻して終えていました。

この間金価格は、豪ドル、カナダドル、人民元建てでも史上最高値を同日つけ、日本円でもgあたり14636円と史上最高値を更新していました。

水曜日金相場は、同日ロンドン時間夕方に発表されるFOMCの結果とメンバーによる経済見通し、そしてパウエル議長の記者会見を待つ中で堅固な動きをしていましたが、発表後上昇を始めてトロイオンスあたり3055ドルと史上最高値を更新して終えていました。

FOMC後の発表では、予想通り政策金利は4.25%から4.5%で据え置かれ、経済見通しの年末政策金利の中央値も2回のままで維持されました。しかし、量的引き締めを4月から上限を月額250億ドルから50億ドルへ減額することも発表しています。

この量的引き締め減速は利下げと同じ影響を与えるという判断で長期金利が下げたことからも、金を押し上げることとなりました。

この間、パウエル議長が関税がインフレに与える影響は一過性のものである可能性を示したことで株価は上昇していました。

同日金相場は、日本円建てで前日に続き史上最高値を更新してgあたり14667円をつけ、中国人民元、加ドル、豪ドル建てにおいても史上最高値を更新していました。

木曜日金相場は、前日の上昇基調を受け継いでロンドン早朝にトロイオンスあたり3057ドルと史上最高値を一時つけたものの、その後3042ドルまで戻してロンドン時間夕方に推移しています。

同日の下げは、高値の調整ではあるようですが、前日FOMC後に量的引き締めを4月から減速させるということで、国債の需給バランスが解消される観測で下げていた長期金利が若干戻していたことも背景となりました。

しかし、同日もトランプ大統領はSNSで貿易相手国に関税を課すことを始める予定の4月2日を「米国解放の日」と呼ぶなど、関税による貿易戦争激化と経済停滞懸念は根強く、下げ幅は限定的となっていました。

なお同日金価格は加ドルと豪ドルとスイスフラン建てで史上最高値を更新しています。スイスフラン建ては、本日中央銀行が0.25%の利下げをしたことで、通貨が対ドル下げることで、2月11日の最高値を上回ることとなりました。

金曜日金相場は、特に重要指標やイベントがない中で、日銀、FOMC、イングランド銀行の金融政策発表を消化しながらも、今週大きく上げていたことからも、トロイオンスあたり3000ドルを一時割る下げを見せたものの、その後3015ドルまで戻して推移しています。

一週間のドル建て金価格の推移 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に3月11日までのデータが発表され、予想を下回る米消費者物価指数の発表の前日に、トランプ政権の関税やウクライナ戦争関連政策への懸念から価格が上昇していた際に、金とパラジウムで強気ポジションを前週比減少させ、銀とプラチナにおいては増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、0.2%減で566.6トンと7週連続で減少して、昨年7月初旬以来の低さへ下げていたこと。価格は0.4%高でトロイオンスあたり2916.09ドルと上昇し、建玉は3.0%増と2週連続で減少して1月半ば以来の低さへ下げていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、23.5%増で6570トンと2週連続で増加して昨年10月22日の週以来の高さへ増加していたこと。価格は前週比2.1%高で、トロイオンスあたり32.55ドルと11月5日の週以来の高さへ上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングで、28.4%増で5.0トンと前週の1月末以来の低さから増加していたこと。価格は前週比0.5%高でトロイオンスあたり951ドルと2週連続で2月11日の週以来の高さに上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに3.2%増で36.5トンと3週連億で増加して1月7日の週以来の高さとなっていたこと。価格は0.5%高でトロイオンスあたり951ドルと2週連続で上昇して、2月18日の週以来の高さとなっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに4.0トン(0.4%)増加して910.43トンと、2023年7月末以来の大きさで、2週連続の週間の増加傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.21トン(0.05%)減で423.85トンと下げて、7週ぶりの週間の減少傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに106.15トン(0.78%)増で13,777.69トンと2週連続の週間の増加傾向であること。
  • 金銀比価は、今週88台後半で始まり、本日ほぼ91台半ばと2月末以来の高さへ上昇して終える傾向であること。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1996ドルで始まり、本日2058ドルと史上最高値以来の高さへ上昇して終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週24ドルのプレミアムで始まり、木曜日に41ドルと2月末の高さまで上昇後に、本日29ドルへ下げて終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、人民元建て金価格が前週金曜日から昨日まで5営業日連続で最高値をつけたことからも、ロンドン価格との差が週平均で0.28ドルのディスカウントと2月2週以来初めて週平均がディスカウントへ転換し、前週の平均の4.62ドルのプレミアムから大きく下げていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は3月4日から正の相関関係で本日0.39と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は1月23日から負の相関関係で、本日-0.69と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は3月13日から負の相関関係で、木曜日までで-0.69と関係を強めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は主要中央銀行の金融政策発表を待つ中、中東情勢悪化等からも、月曜日から金価格は3000ドルを試して、火曜日には3038ドルと史上最高値を更新するなど、強い動きをすることとなりました。

来週は、FRBがインフレ指標として注目する個人消費支出コア・デフレーターが金曜日に発表され、重要となりますが、引き続きトランプ政権の関税政策及び中東そしてウクライナ戦争政策へも注目が行くこととなります。

詳細は主要経済指標(2025年3月24日~28日ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引き続きトランプ大統領の関税やウクライナ戦争に絡む言動に関して大きく伝え、ウクライナ戦争の一時停止を巡る米露、米ウクライナ、欧州諸国の外交的な動き、イスラエルがパレスチナ武装組織のハマスと一時停戦を破りガザ地区への攻撃を再開したことがトップニュースとなっています。

英国のニュースとしては、本日英国早朝の発生した電力発電所の大規模火災により、ヒースロー空港が約24時間閉鎖されているニュースも大きく伝えられています。

その様な中、英国の男子テニスプレイヤーのジャック・ドレイパー選手が、全豪、全仏、ウィンブルドン、全米のテニスの世界四大大会(グランドスラム)に次いで観客動員数が多く「第5のグランドスラム」と言われているインディアン・ウェルズ大会で先週末に優勝したことが大きく伝えられていましたので、ご紹介しましょう。

ドレイパー選手は今回の優勝で、最新の世界ランキングでこれまでの14位から自己最高の7位に浮上し、初のトップ10入りを果たしました。決勝戦では、第12シードのホルガー・ルーネ選手(デンマーク)を6-2、6-2のストレートで下し、わずか69分間で圧倒的な勝利を収めました。さらに、準決勝では今大会2連覇中で世界ランキング3位のカルロス・アルカラス選手(スペイン)を破る快挙を達成しています。

彼が注目を集め始めたのは、2021年のウィンブルドン選手権で、18歳の時に本戦デビューを果たし、1回戦でノバク・ジョコビッチ相手に第1セットを奪う健闘を見せたことがきっかけでした。当時の彼のランキングは250位台で、ジョコビッチのようなレジェンドに挑む姿勢が話題となりました。

しかし、その後は怪我にも苦しみ、2023年のウィンブルドンでは、2回戦で肩のケガにより無念の途中棄権。それでも、懸命なリハビリを経て見事に復帰し、2024年から再び飛躍を遂げています。

また、ドレイパー選手は試合の合間に哲学書や心理学の本を読むことが好きだそうです。プレッシャー下でも冷静さを保つため、メンタルトレーニングにも熱心に取り組んでいることが伺えます。

英国の人々は、ロンドンオリンピックの金メダル獲得、ウィンブルドン2回優勝、さらに全米オープン制覇という輝かしい実績を残したアンディ・マリー選手の昨年の引退を受け、新たな英国男子テニス界を牽引するスターの登場を心待ちにしていました。そんな中でのドレイパー選手の今回の優勝は、英国スポーツ界にとって非常に明るいニュースとなったようです。まだ24歳のドレイパー選手には、今後さらなる活躍が大いに期待されています。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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