金市場ニュース

ニュースレター(2026年5月22日)中東情勢と利上げ観測に揺れる貴金属市場、2週連続の下落へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

一週間の貴金属相場の変動率

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は2週連続の週間の下落で、金曜日価格で327日以来の低値。
  • 2週連続の週間の下落で、金曜日価格で51日以来低値。
  • プラチナ2週連続の週間の下落で、金曜日価格で42日以来の低値。
  • パラジウム3週連続の週間の下落で、金曜日価格では2025103日以来の低値。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属相場は、イランと米国の和平協議の進展観測を受けた原油価格の変動と、それに伴う米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利見通しに大きく左右される展開となりました。

また、テクノロジー株主導で世界株価が堅調に推移し、米株式市場が2023年以来最長の週間連続上昇に向かうなど、リスクオン基調が強まったことも、貴金属価格の上値を抑える要因となっています。

そのような中、イラン戦争勃発以降、金価格とFRBの年末の政策金利予想はほぼ完全な逆相関で推移していました。しかし足元では、原油価格上昇やFRB高官によるタカ派的発言を受けて市場の利上げ観測が約2か月ぶりの高水準へ上昇する一方、金価格も上昇するなど、これまでの関係にやや変化も見られています。

政策金利予想とドル建て金価格の逆相関を見やすくするため、ドル建て金価格を反転表示した下記チャートからも、この関係に変化が生じ始めていることが確認できます。

市場の年末のFRBの政策金利予想とドル建て金価格の推移 出典元 ブリオンボールト

今週の貴金属相場の動き(日次)

 

月曜日

金・銀市場は、米国とイランの和平協議やホルムズ海峡再開観測を巡る報道に振らされる展開となりました。週末の協議停滞を受けて原油価格が上昇し、貴金属は軟調に始まりましたが、その後、和平進展期待から原油価格が反落すると、金・銀価格も切り返しました。金はトロイオンスあたり4,588ドル、銀は78.89ドルまで反発していました。

 

火曜日

長期金利上昇を背景に、金は4,465ドル、銀は73.68ドルと、それぞれ数か月ぶりの安値へ一時下落していました。原油価格が100ドル台を維持する中、米30年債利回りは2007年以来の高水準へ上昇し、市場では、イラン戦争前にはFRBの年末までの利下げが確実視されていたものの、イラン戦争によるインフレ圧力の長期化観測からも、年末までに利上げの可能性も織り込まれていたことが背景となっていました。

 

水曜日

前日に高水準を付けた長期金利がやや低下したことで、金は4,550ドル、銀は76.59ドルまで一時反発していました。トランプ大統領の「イラン戦争を早期に終結させる」という発言を受けて原油価格が下落し、インフレ懸念がやや後退したことが背景です。一方、FOMC議事録では、多くの当局者がイラン戦争によるインフレ懸念からも利上げの可能性を示唆していたことが明らかとなりましたが、FOMC後の声明ですでに織り込み済みであったことからも、影響は限定的となっていました。

 

木曜日

金と銀は、前日の上昇幅をやや縮小しました。イランのハメネイ師が、イスラム体制はウラン備蓄の維持を認められるべきだと主張していることが伝えられて和平期待が後退し、原油価格と長期金利が再び上昇。市場のFRB年末時点の政策金利予想も3.83%へ上昇し、金価格の重しとなっていました。

 

金曜日

市場では米・イラン和平協議進展への期待が広がる一方、ウォラーFRB理事が利上げの可能性にも言及したことで、貴金属は上値の重い展開となりました。米2年債利回りは20252月以来の高水準へ上昇する中、米株式市場も2023年以来最長の週間連続上昇に向かうリスクオン基調などからも、貴金属の圧迫要因となっています。

一週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト

 

一週間のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • 世界第6位の金保有国であるロシアは、中央銀行が「政府の財政赤字を補填するために」4月に12トン金準備を売却したことを明らかにしたこと。これは4か月連続の金準備売却。

  • コメックス(COMEX)のデータによれば、予想を上回る米インフレデータで利上げ観測が広まりドルと長期金利が上昇し、金と銀価格が下げていた際に、パラジウムを除く全ての貴金属のネットロングが増加していたこと。

  • 金のネットロングは前週比5.2%増の312.98トンと、2週連続で増加して、317日までの週以来の高さへ増加していたこと。2025年のネットロングの平均は465.8トンで、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションは48.0%増の2,519トンと、3週連続で増加して16日までの週以来の高さとなっていたこと。2025年の平均は、5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナはネットロングが30.9%増で25.1トンと3週ぶりの増加で、414日までの週の高さとなっていたこと。2025年平均は、16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、23日の週以来のネットロングから317日の週にネットショートへ転換し、0.7%増の6.0トンのネットショートと増加。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • ETFの最大銘柄であるSPDRゴールド・シェアの残高は、今週木曜日までに0.29トン(0.03%)増で1,037.708トンと518日以来の高さで、2週連続で増加する傾向。年間ベースでは2025年は、198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間の増加。2024年は6.59トン(0.75%)減少。202338.53トン(4.4%)減、202257.2トン(5.9%)減、2021195トン(6.8%)減。

  • ETFの第2規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに、2.58トン(0.54%)増で478.70トンと41日以来の低さで、3週連続の週間の減少傾向。年間ベースでは、2025年は101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、202242トン(8.9%)減、202136トン(7.0%)減。

  • ETFの最大銘柄であるiShareシルバーの残高は、今週43.62トン(0.29%)減で15,179.19トンと2週ぶりの週間の減少で、513日以来の低さ。年間ベースでは2025年は2120.59トン(14.45%)増と2年連続で増加。2024年は720.44トン(5.3%)増。2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週59台後半で始まり、その水準をほぼ維持して、本日59台半ばへ若干下げて終える傾向。2025年の平均は87.852024年平均は84.752023年は83.275年平均は82.44。値が高いと銀が割安、低いと割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の差は227日の週からプレミアムへ転換し、今週の週平均は、前週の13.08ドルから上昇して20.14ドルと増加していたこと。2025年の平均は、2.85ドルのプレミアム。2024年平均は15.15ドルのプレミアム、2023年は29ドル、2022年は11ドル。需要増に加え、中国中銀の輸入許可制限も背景。過去5年平均は6.9ドルのプレミアム。

来週の主要イベント及び主要経済指標

 

今週も貴金属市場は、中東情勢、ホルムズ海峡関連合意に注目し、原油価格、それによる主要中央銀行の政策金利観測で動くこととなりました。

 

この状況は続きますが、来週は米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として注目する米個人消費支出(PCE)コア・デフレーターが木曜日に発表され、市場は注目することとなります。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026525日~29日)をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週英国では、トランプ米大統領の公式訪中後にプーチン露大統領が中国を訪問したことや、スターマー首相に代わる労働党党首候補として名前が挙がる前保健相ウェス・ストリーティング氏がEU復帰支持を表明したこと、さらにアフリカでのエボラウイルス感染拡大、英国政府による物価高対策の発表などが大きく報じられています。

そのような中、今週ロンドンでは、年に一度、プラチナ業界関係者が世界各国から集う「プラチナウィーク」が開催され、私も参加してきましたので、簡単にご報告いたします。

18日月曜日には、プラチナ業界で働く女性ネットワーク「Women in PGMs」によるブレックファーストミーティングが開催され、「世界市場をまたぐPGM先物市場と取引・ヘッジ環境」をテーマに、長年割安と見られてきたプラチナ市場は、供給不足と需要拡大を背景に急速な価格再評価局面へ入りつつあり、本セッションでは、その背景に加え、先物市場構造の変化や新たな市場参加者が価格形成に与える影響について議論が行われました。パネリストには、中国プラチナカンパニーの国際展開を担うZhuoying Jing氏、COMEXNYMEXの貴金属戦略を統括するCME GroupYang Lu氏、そして広州先物取引所のプラチナ・パラジウム市場分析を手掛けるGuotai Junan FuturesYang Rui氏が登壇し、PGM需給と投資分析を専門とするMetals FocusJunlu Liang氏の司会の下で、先物市場の進化と価格形成への影響について多角的な見解を共有しました。

19日午後には、ロンドン金融街中心部のGuildhall Libraryで、LPPMLondon Platinum and Palladium Market)主催のセミナーが開催され、プラチナグループ金属(PGM)市場と、水素経済を含む今後の技術用途をテーマに講演が行われました。

1部では、World Platinum Investment CouncilWeibin Deng氏が、中国のPGM市場動向についてAI関連需要も含めて解説しました。続いて、Metals FocusNikos Kavalis氏が「PGMs in a Time of Conflict(紛争下におけるPGM市場)」をテーマに、地政学リスクがPGM市場へ与える影響を分析しました。

2部では、SFA (Oxford) LtdDr. Jenny Watts氏が「Everything You Wanted to Know About Ruthenium and Iridium」をテーマに、水素・電子材料向けで注目されるルテニウムとイリジウムについて解説しました。続いて、Heraeus Precious MetalsDr. Philipp Walter氏が「Catalyzing the Hydrogen Economy」をテーマに、水素経済拡大におけるPGM触媒技術の役割について講演しました。

セミナー後にはGuildhallGreat Hallでカクテルパーティが行われ、翌日にはLPPM主催のディナーも開催されました。また、この期間中には数多くのネットワークイベントやディナーがプラチナ業界主要企業によって開催され、新たなビジネス機会を模索する場、そして業界関係者同士の親睦を深める場として、多くの参加者で賑わいました。

カクテルパーティの写真を下記に添付します。

2026年プラチナウィークLPPMカクテルパーティ

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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