金市場ニュース

ニュースレター(2025年3月14日)金価格は史上最高値を更新し3000ドルに達する

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格(午後3時)と比較すると、1.75%高でトロイオンスあたり2982ドルと、史上最高値を更新しています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格(午後12時)と比較して、4.42%高のトロイオンスあたり33.93ドルと2週連続の上昇で、昨年10月末以来の高さへと上昇しています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格(午後2時)から2.85%高でトロイオンスあたり993ドルと2週連続の上昇で2月14日以来の高さへとなっています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のLBMA PMパラジウム価格(午後2時)から2.84%高でトロイオンスあたり968ドルと2週連続の上昇で2月24日以来の高さとなっています。

今週のの金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属価格は全般大きく上昇し、特にドル建て金価格は、本日トロイオンスあたり3000ドルを突破し、史上最高値をつけることとなりました。

この背景は、トランプ政権の関税政策による物価高、景気悪化、またトランプ大統領が日々決定事項を覆す等の先が読めない政策等ですが、それに加えて今週発表の米消費者物価指数と卸売物価指数が予想を下回ったことが景気停滞懸念も広げた模様で、安全資産の金の需要が高まると共に、他の貴金属の価格もまたその金に引き上げられた模様です。

なお、他の主要価格建て金価格を見ると、史上最高値を本日つけたのは、人民元、豪ドル、加ドル建て等ですが、為替レートの動きからも、英国ポンド、ユーロ、日本円建てにおいては2月の3週につけた最高値には至っていません。

そこで、本日は米国ドル(緑)、英国ポンド(ピンク)、ユーロ(水色)、日本円(赤)建て金価格を昨年11月1日を100とした指数で表すチャートをお届けしましょう。

トランプ氏大統領就任以来の主要通貨建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

今週の金相場について

月曜日金相場は、は世界株式市場が全般下げる中で、現金化も多少あったようですが、ドル建て金価格はトロイオンスあたり2880ドルへと一時下げて2887ドルで終えていました。

これは、VIX指数が同日10%高、トランプ政権発足以来60%高と、同政権の関税政策やそれによる経済全般への懸念からも、株式市場のボラティリティが高まる中でのことでしたが、安全資産としての金のサポートは入っていた模様です。

また、株価の下げはトランプ大統領がインタビューで貿易戦争等による景気後退入りの可能性を否定しなかったことが要因とも分析されていました。

火曜日金相場は、世界株価が前日に続き貿易戦争激化と経済停滞懸念からも下げる中で、トロイオンスあたり2921ドルまで一時上昇して、若干上げ幅を失って2914ドルで終えていました。

同日は、カナダのオンタリオ州政府が米国の対カナダ関税への報復措置として、米国向けに供給している電力に25%の追加料金を課すると発表し、トランプ大統領が自身のSNSでカナダからの鉄鋼とアルミニウムの関税を12日から引き上げるとし、貿易戦争激化への懸念も要因となっていました。

そこで、金同様に銀価格、プラチナ価格も前日の下げ幅を取り戻してさらに上昇し、それぞれトロイオンスあたり32.72ドル、979ドルをつけていました。

なお、S&P 500種は同日2月19日の高値から10%一時下落し、2023年後半以来の調整局面に入る傾向を見せていました。

水曜日金相場は、市場注目の米消費者物価指数が予想を下回ったことが明らかになった後に、米国と主要国の貿易戦争激化の懸念からもトロイオンスあたり2940ドルと3週間ぶりの高値を一時つけて、2938ドルで終えていました。

トランプ政権は、同日から米国へ輸入されるアルミニウムと鉄鋼へ一律25%の関税を課するとしたことで、カナダは200億ドル相当、欧州は283億ドル相当の米国からの輸入品に関税を課すことを発表し、トランプ大統領がそれに当然対抗すると述べたことで、貿易戦争激化への懸念もあり金価格は反応することとなりました。

同日発表された米消費者物価指数は、前月比0.2%と前回の0.5%と予想の0.3%を下回り、前年同月比でも2.8%と前回の3.0%と予想の2.9%から下げていました。

そこで、今週世界株価が月曜日と火曜日に大きく下げていたことからも、世界株価は買戻しの動きとインフレ鎮静化への安堵感からも全般反発していました。

本日金曜日金相場は、ロンドン時間午前中に3000ドルを突破し、一時3004ドルをつけてロンドン時間夕方に2988ドルへと下げて推移しています。

この背景は、昨日の卸売物価指数が今週水曜日の消費者物価指数同様に予想を下回り、世界経済の停滞懸念が広がる中、トランプ政権の関税や減税政策等による高インフレと経済停滞が共に起こるスタグフレーションへの懸念が高まり、金を押し上げたことで、買いが買いを呼んだ模様です。

しかしながら、年初からトロイオンスあたり400ドル近く上昇して今週30ドル強と、急激な上昇からも、本日米国株価がテクノロジー株を中心に今週大きく下げたことからも自律反発もあり上昇する中で、金の上げ幅は本日午後に若干削られることとなりました。

なお、本日夜に執行する米連邦政府のつなぎ予算は、昨日上院民主党トップが延長法案に賛成する意向を示したことからも、最悪の事態は避けられるであろうという観測は、株価をサポートしている模様です。

今後の金の動きを見るにあたり、3000ドルまでの道のりを弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュが金価格3000ドルまでの道のりとその行方で振り返っていますので、よろしければ、ご覧ください。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に3月4日までのデータが発表されて、トランプ政権の関税やウクライナ戦争関連政策への懸念から価格が上昇していた際に、銀を除く全ての貴金属で強気ポジションを前週比減少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6.1%減で567.8トンと6週連続で減少して、昨年末以来の低さへ下げていたこと。価格は0.9%安でトロイオンスあたり2905ドルと前週の火曜日のLBMA価格においては3週連続で新高値から下げ、建玉は2.2%減と2週連続で減少して1月半ば以来の低さへ下げていたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、25.1%増で5319トンと前週の一月末以来の低さから増加していたこと。価格は前週比0.8%安で、トロイオンスあたり31.91ドルと、2週連続で11月5日の週以来の高さから下げていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングで、69.2%減で3.9トンと1月末以来の低さへ下げていたこと。価格は前週比0.8%安でトロイオンスあたり961ドルと4週間連続で1月末以来の低さへ下げていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに11.8%増で35.3トンと2週連億で増加して1月半ば以来の高さとなっていたこと。価格は1.0%高でトロイオンスあたり946ドルと3週ぶりに1月7日の週以来の低さから上昇していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに11.5トン(1.3%)増加して905.81トンと、週間の増加傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.68トン(0.4%)増で420.48トンと2023年9月中旬以来の大きさで、7週連続の増加傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに4.24トン(0.03%)減で13,544.16トンと2週連続の週間の減少傾向であること。
  • 金銀比価は、今週89台前半で始まり、本日ほぼ88と今年1月初旬以来の低さへ下げていること。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週1927ドルで始まり、本日1997ドルと史上最高値以来の高さへ上昇して終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週18ドルのプレミアムで始まり、水曜日に30ドルまで上昇後に、本日25ドルへ下げて終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、本日人民元建て金価格が最高値をつけたことからも0.71ドルのディスカウントへ転換したものの、今週の平均は4.62ドルのプレミアムで、前週の2.19ドルのプレミアムから上昇して、2月21日の週以来の高さとなっていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週木曜日までに週間で、金は31%増で1月末の週以来の高さ、銀は4%増で2月半ば以来の高さへ増加し、プラチナは19%増で昨年12月半ばの週来の高さへ増加し、パラジウムは28%減で1月第一週の週以来の低さとなっていたこと。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は3月4日から正の相関関係で本日0.54と週間ではその関係を強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は1月23日から負の相関関係で、本日-0.48と前週から関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は本日から負の相関関係で、木曜日までで0.024と関係を強めていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はトランプ政権の関税政策、経済全般の政策への懸念からも、世界株価が大きく下げ、金は現金化で下げたもののその後上昇して、米雇用データや消費者及び卸売物価指数に注目して動き、史上最高値更新、そして3000ドルに達する等と大きく上昇することとなりました。

そこで、来週もトランプ政権の動きへ市場は注目しますが、主要国中央銀行の金融政策発表が続き、その中でも水曜日の日本銀行と米FRB、木曜日のイングランド銀行の政策金利発表が重要となります。

詳細は主要経済指標(2025年3月17日~21日)ご覧ください。

ブリオンボールトニュース

本日金相場はトロイオンスあたり3000ドルを超えたことから、多くの主要メディアで弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントとブリオンボールトが取り上げられています。

BBCラジオ4Todayトランプ氏が金に何をしたのか

ここで24:40からエィドリアンアッシュが金価格が3000ドルへと上昇する背景を解説しています。

ファイナンシャルタイムズ世界経済の成長への懸念で金価格が3000ドルを突破

ここで、エィドリアンは「金は21世紀において、今のところ最もパフォーマンスの良い資産クラスです。2000年代に入ってから、金地金は2008年の金融危機や2016年の英国のブレグジットのような市場の衝撃、そして地政学的紛争の増加から恩恵を受けてきました。」と述べ、「25年前に西側民主主義が抱いていた(金は必要がないという)思い上がりは、完全に打ち砕かれたのです。」と続けています。

テレグラフ金が3000ドルに達する:最善の金の投資方法

ここでは、金が3000ドルに達した背景を解説し、金投資方法としてブリオンボールトを紹介しています。

先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、トランプ大統領の関税及びウクライナ戦争一時停戦のための動きと関係諸国の反応が引き続きトップで大きく伝えられています。

英国のニュースとしては、本日英国の月次GDPが2月に若干ながら成長するという予想に反して縮小していたこと、また今週火曜日に北海でタンカーと貨物船が衝突したこと、そしてスターマー首相が英国の国民保健サービス(NHS)の改革を発表したことが挙げられます。

そこで、今回スターマー首相が発表した改革がどのようなものであるのかを、簡単にまとめてみましょう。

英国政府はNHSイングランド(2013年からイングランドの国民健康サービスを運営してきた機関)を廃止し、保健社会福祉省(DHSC)と統合すると発表し、これにより「官僚機構の削減」と「医療サービスの民主的統制の回復」を図るとしています。

これは、NHSイングランドとDHSCがそれぞれ同じ業務(GPサービス、救急医療、メンタルヘルスなど)を担当していることからも、二重の管理体制を解消することで効率化をできるとのこと。

そこで、NHSイングランドの15,000人の職員の一部を削減して、残りをDHSCに統合することで、管理コストを削減し、医療従事者や患者のための資金を増やすと説明しています。

そして、先の「厳しい選択 」はNHSイングランドだけにとどまらないと述べ、政府は効率性を高め、最大450億ポンドの節約をするために、すべての政府部門にAIによって効率化が図れるかを検討するチームを派遣することも発表しています。

この発表に関するメディアの反応は、ファイナンシャルタイムズは「医療管理の合理化を目的とした大胆な一手」と評し、政府はこの統合により重複や非効率を削減し、前線の医療サービスへ資金を振り向けられると主張していると伝えています。

それに対し、ガーディアン紙は、この廃止が「NHSの喫緊の課題から注意をそらすだけではないか」と懸念を示し、実際のコスト削減や管理改善がどれほど実現するのか疑問視し、タイムズ紙は、労働組合の指導者たちがこの発表の進め方に批判的であり、雇用削減の可能性を懸念していると報じています。

そこで、メディアの反応は、効率向上への期待と、改革が混乱を招く可能性への懸念が交錯するものとなっており、今後の英国政府の効率化を目指す動きを注目することとなりそうです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ