金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年3月10日)トランプ政権の関税が株式市場のボラティリティに拍車をかけ、金はユーロとポンドで5週間ぶりの安値をつける

トランプ大統領の貿易関税に対する不安定な姿勢の中、米国の経済成長に対する懸念が深まり、世界の株式市場のボラティリティが数ヶ月ぶりの高水準に上昇する中、金価格は米ドル安に対して下落し、ユーロと英国の投資家にとって5週間ぶりの安値をつけていました。
 
金曜の午後3時のロンドン市場のオークションで、ドル建て金価格はトロイオンスあたり2931ドルと、前週の100ドルの暴落をほぼ覆すこととなった金スポット価格は、本日2905ドルまで下げていました。
 
デリバティブプラットフォームのサクソバンクの商品ストラテジストであるオーレ・ハンセン氏は、「金の明らかに必要としていた調整は、短いものであったことが証明された。」と述べ、「市場の先行き不透明感や米国の関税に対する懸念から、買い手が資産を安全に保全する場所を求めて戻ってきた。」と続けていました。
 
米国の2大貿易相手国であるカナダとメキシコの製品に徹底的な輸入関税を課してから2日後、ドナルド・トランプ大統領は先週木曜日に、これらの関税の多くを突然停止した。
 
しかし米大統領は、カナダとメキシコの製品に対する他の関税は4月に導入されるだろうと述べ、緩和は短期間で終わることを示唆していました。
 
米国株式市場のデリバティブの動きを追跡するCBOEボラティリティ・インデックス(VIX)は月曜日に約10%上昇し、約3ヶ月ぶりの高値となっていました。
 
トランプ大統領が1月20日にホワイトハウスに復帰して以来、VIXは60%以上も上昇しています。
 
ドル建て金価格とVIX指数のチャート 出典元 グーグルファイナンス
 
VIXボラティリティ・インデックスの最後のピークは昨年12月中旬で、これは2024年最後の米連邦準備制度理事会(FRB)の金利決定が終了し、FRBメンバーが 2025年の利下げ見通しを半減させたからでした。
 
S&P500先物は月曜日に1.3%下落し、先週のニューヨークの主要株価指数の3.1%下落を拡大していました。
 
ハイテク株のナスダック100先物もまた先週の3.5%の下落の後に本日1.6%下落し、ダウ平均先物は2.4%の下落の後に1.1%下落していました。
 
「トランプ政権が仕掛けている貿易戦争は、個人投資家に限らず、中央銀行にも金買いを促している」と 日本貴金属マーケット協会の代表理事の池水雄一氏は最新のレポートで述べていました。
 
中国の中央銀行は2月に金準備高を5トン増やし、4ヶ月連続で金準備を増加させ、ポーランド国立銀行は金準備高を29トン増やし、同国にとっては2019年6月以来の月間最大購入量となっていました。
 
また、ブリオンボールトでは2月に、安全資産である金が直近で過去最高値を更新しているにもかかわらず、 金投資が急増していました。
 
世界の 金を裏付けとするETF信託ファンドは、2022年3月以来最大の資金流入を2月に記録し、合計でほぼ100トン、その評価額は94億ドルとなっていました。
 
金とは対照的に、銀の価格は、主に工業用金属であり、年間需要の60%近くが生産用金属であることから、本日トロイオンスあたり32.50ドルで横ばいで推移していました。
 
中国と香港の株価指数は、世界第2位の経済大国である中国の経済データが予想を下回り、アジア時間に下落していました。そこで、欧州全般の株価指数であるストックス600指数は、一時.最大8%まで下落し、欧州株式市場のボラティリティは7ヶ月ぶりの高水準となっていました。
 
中国の2月の物価上昇率はデフレに転じ、13カ月ぶりに前年同月比マイナスとなっていました。国家統計局が日曜日に発表したデータによると、中国のコアCPI指数も0.1%低下し、15年以上ぶりの2回目のマイナス数値をつけていました。
 
中国共産党政府は、トランプ大統領が米国へ輸入される中国製品に対する最新の貿易関税に反発して週末には米国主導の貿易戦争を拡大させていましたが、それに追加してカナダが4ヶ月前に中国製の電気自動車とベースメタルの鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ100%と25%の関税をかけたことへの報復として、カナダからの菜種油、豚肉、魚介類の輸入に関税を課すと発表していました。
 
上海黄金交易所の金価格は本日、0.3%上昇のgあたり681円となり、ロンドン価格に対して引き続きプレミアムを示し、貴金属の第一の消費市場である中国での需要拡大を示唆していました。
 
カナダでは本日、元カナダと英国の中央銀行総裁のマーク・カーニー氏が首相に任命され、カナダドルは対米ドルで22年ぶりの安値から上昇し、メキシコペソも先週の3年ぶりの安値から上昇していました。
 
一方、ユーロ建てロンドン金価格は0.3%下落し2676ユーロ近辺で5週間ぶりの安値となり、 ポンド建て英国金価格は0.2%下落し2246ポンドとやはり5週ぶりの低値をつけていました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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