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金価格ディリーレポート(2024年9月9日)9月の大幅な利下げ観測の後退と中国中銀が金準備増加を控える中で金は2500ドル を回復

月曜日に金相場が2500ドル台の攻防を続ける中、来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の9月会合で米連邦準備制度理事会(FRB)が米金利をより狭い幅の0.25%引き下げるとの観測は広がり、また中国の中央銀行が8月に4ヶ月連続で金準備として金を購入しなかったと発表されていました。
 
なお、この価格水準はわずか3週間前に史上最高値として記録されたレベルでもあります。
 
金曜日に発表された米国の雇用統計がまちまちであったことからトロイあたり2500ドルを割り込んだものの、月曜日にスポット金価格はロンドン時間午前中の0.5%安の2485ドルから16ドル上昇していました。この間、上海黄金交易所(SGE)の金地金価格はロンドン相場より引き続き割安となり、貴金属の世界最大の消費市場である中国での需要が軟調であることを示唆していました。
 
「金曜日の)米雇用統計は、9月18日に50ベーシス・ポイントの引き下げを正当化するほど弱いものではなかったことが判明した」と、デリバティブ・プラットフォームであるサクソバンクの商品戦略チームは述べていました。
 
このコンセンサスの高まりは、「(米国)国債価格の下振れリスクを示唆する可能性があり、借入コストを上昇させることで、短期的に金の重荷となるかもしれない」と続けていました。
 
国債価格が月曜日に下落したことで、金利に敏感な2年物米国債利回りは金曜日の1年半ぶりの低水準である年率3.65%から5ベーシスポイント上昇していました。しかし、10年物国債金利を下回る水準にとどまり、 2週間前に景気後退を警告する「逆イールドカーブ」が過去25ヶ月の続いた後に正常化した後も、米国のイールドカーブはその状況を維持しています。
 
2024年末のFRBの政策金利の市場とFRBの予想とドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
CMEのFedWatchツールによると、将来のフェデラルファンドレートの予想をする先物市場では、来週水曜日に50ベーシスポイントの利下げが実施される確率は、1ヶ月前の50%以上から、月曜日には25%まで低下していました。
 
しかし、同予想によると年末までに125ベーシスポイントの利下げが行われるという確率がひと月前の25%から40%へ上昇していることからも、FRBが今月25ベーシス・ポイントの利下げにとどまった場合、金利市場は11月と12月にそれぞれ50ベーシス・ポイントの利下げが行われると予想していることになります。
 
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、金曜日の非農業部門雇用者数発表後、新たな経済データを注意深く見守ることの重要性を強調しながらも、「中央銀行が金利を引き下げるのは、今や適切なことだ」と述べていました。
 
クリストファー・ウォーラー米連邦準備制度理事会(FRB)総裁も同日の別の発言で「その時が来た」と同意し、来週の決定前に政策立案者が発言する「ブラックアウト」期間を前に、「 データがより大きな利下げの必要性を示唆するなら、私もそれを支持する」と付け加えていました。
 
「消費者物価や生産者物価が予想を下回っても、大幅な利下げに踏み切るには十分ではないでしょう」と、証券会社ストーンXグループのグローバル・マクロ戦略担当ディレクター、ヴァンサン・デルアールはコメントしていました。
 
欧州中央銀行(ECB)は今週木曜日に金融政策決定会合を開き、市場のコンセンサスは、ECBが預金金利を25ベーシスポイント引き下げ3.50%とし、今年2回目の利下げを行うと予想されています。
 
前週8月上旬の株価急落以来の下げ幅を見せた欧州株式市場は月曜日に上昇し、汎欧州のストックス600種指数は0.8%上昇していました。また、同様に前週S&P500種は2023年3月以来、ナスダック100は2022年11月以来の下げ幅を見せていましたが、本日米株価指数の先物も全般上昇をしていました。
 
しかし、8月の中国消費者物価指数(インフレ率)が年率0.6%と予想を下回った一方、生産者物価指数(デフレ率)は年率1.8%と、アナリストの予想を半ポイント近く下回る結果となったため、中国本土のCSI300は1.2%下落し、2月の5年ぶりの安値となっていました。
 
この間、上海金取引所の金価格は、月曜日もロンドンに対してディスカウントで、新規の地金輸入を抑止していました。しかし、その幅は8月中旬以来最小のトロイオンスあたり1ドルまで縮小し、先週の平均が5ドルまで縮小した傾向がさらに進んでいました。
 
中国人民銀行は、5月まで18ヶ月連続で316トンの金を購入し、中央銀行の金保有量を2,264トンに増やした後、8月は再び金を購入していないことが、週末に発表された 外貨準備のデータで明らかとなっていました。
 
しかし、先月の新記録の金価格は、中国の中央銀行の金保有額を3.6%押し上げ、新記録の1830億ドルとなり、PBoCの総外貨準備高の5%へと上昇し、1996年以来最も高い割合となっていました。
 
原油は、世界的な需要への懸念が続く中、前週11ヶ月ぶりの大幅な下落を記録した後、月曜日小幅に反発した。
 
銀は、金曜日に3週間ぶりの安値となるトロイオンスあたり27.70ドルをつけた後、本日0.7%上昇していました。
 
ユーロ建て金価格は、ロンドン時間昼過ぎに0.3%上昇し2261ユーロとなり、英国ポンド建て金価格は0.4%上昇し1908ポンドを記録していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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