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【金投資家インデックス】記録的な高値でも未だ慎重な金投資が続く

新規顧客数は、2500ドルでも急増していました。
 
8月に金地金の価格が史上最高値を更新する中で、金地金に対する欧米の投資家のセンチメントは上昇していたことが、世界有数のオンライン貴金属現物市場を提供するブリオンボールトの最新の数値で明らかとなっていました。
 
しかし、今年3月に金が2200ドルを越え、このセンチメントは記録的水準まで下落した後、投資家は金投資へは依然慎重な中で、価格は上昇を続けて先月2500ドルを超えて史上最高値を更新していました。
 
2024年秋以降には、景気後退リスクの高まりや、地政学的紛争の悪化等と、新たに金投資を始めたり、金のポジションを追加する理由は多くあると言えるでしょう。
 
しかし、現段階では、金価格の動きは、現物への投資よりは、デリバティブ市場に限られているようです。米国の連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ幅に賭けるトレーダーが、8月の史上最高値を更新させたのであり、FRBの利下げがいよいよ行われるであろう今月、金価格が押し下げられる可能性も高まっています。
 
金投資家インデックスは、8月に月間で金地金を売却を上回って購入したネット購入者数が、購入を上回って売却をしたネット売却者数を上回ったことから、5月以来初めて8月に上昇し、0.5ポイント増の52.8となっていました。
 
2009年10月から公表されているブリオンボールトの金投資家インデックスは、ネット購入者数とネット売却者数が一致する場合は50.0となります。金投資家インデックスは、2020年3月にコロナ危機が世界に広がった際に、10年ぶりの高水準となる65.9を記録しました。
 
そして、その4年後の今年3月には、金価格が急騰し、ブリオンボールトのユーザーが貴金属を購入するよりも、利益確定の売却を選択したため、金投資へのセンチメントを示すこの数値は47.5まで下がっていました。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
欧米の投資家が金が高値を維持する中慎重である一方、金価格の上昇幅に比べて、利益確定の売却量は鈍化しており、米国のFRBがカナダ、ニュージーランド、ユーロ圏、イングランド銀行に続き、20年来の高水準から金利を引き下げる準備をする中で、新規顧客数が急増していました。
 
米国の利下げには長い時間をかけたことからも、金価格の更なる上昇を保証するのは難しいでしょう。しかし、長期的には、FRBが景気後退を回避するには遅すぎたという懸念が、11月の米大統領選を前に高まる中、投資家の選択肢は利下げによる貯蓄の金利低下で狭まり、金地金への新規資金流入を支えることでしょう。
 
トロイオンスあたりの平均価格が2467ドルとなり、前月比3.0%の価格上昇となった8月は、年初来6回目となるドル建てでの月間平均における新記録を達成し、1972年以来1973年と2011年に達した最多の最高値更新数となっています。
 
重量で見ると、ブリオンボールトの顧客は、購入量を上回る0.1トンの金地金を売却し、保有量は0.3%減少し、過去4年間で最低の44.8トンとなっていました。しかしながら、その評価額は米ドル建てで3.2%増加し、36億ドルを超える新記録をつけていました。
 
一方、ブリオンボールトの新規顧客数は、過去12ヶ月の平均から45.5%増加し、2020年のパンデミック以降、8月としては最高となっていました。
 
銀投資家インデックスと銀の月末価格 出典元 ブリオンボールト
 
金とは対照的に、現物需要の半分以上を工業用と技術用で占める銀の月平均価格は、8月に大きく下落し、ドル建てで4.1%下落し、トロイオンスあたり28.52ドルと4月以来の低水準となっていました。
 
このため、投資家の需要が増加し、銀の保有量は8トン近く増加し、5ヶ月ぶりの高水準となる1,175トン(11億ドル相当)となり、0.6%増加しましたが、銀のネット購入者数はネット売却者数の2倍近く減少し、7月の16ヶ月ぶりの高水準から11.0%減少していました。
 
その結果、銀投資家インデックスは7月の0.4ポイント上昇から一転し、53.1まで低下したものの、3月から5月にかけて3ヶ月連続で50を下回る低い水準からは脱し、6月以来の50を超える水準を維持していました。
 
銀は投資用と工業用という2つの役割を担っているため、価格は金の強気相場と中国の景気減速の狭間に置かれている。そして、投資家は銀価格の低迷を利用して、利益確定の売却分を取り戻す購入を行っている。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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