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【金投資家インデックス】金投資は増加したものの価格の下落が要因

欧米の投資家がマクロ的視点で投資する中、中国の投資家とはどのように対照的となっているのでしょうか?
 
欧米の投資家や貯蓄家の金投資は、貴金属価格の下落によって増加したことが、世界有数のオンライン貴金属市場を提供するブリオンボールトの最新のデータで明らかとなりました。
 
しかし、利益確定の売却が2024年も続く中、金地金価格が12月の史上最高値に迫っていることからも、欧米の金投資家は保有量を減らしています。
 
現在ブリオンボールトは、世界の10万人を超える顧客(そのほぼ90%は北米もしくは西ヨーロッパ在住)のために、31億ドル(約4630億円)の金地金を保険をかけて安全に保管しています。1月には、金価格が12月の記録的な高値であったドル建てでトロイオンスあたり10ドル安の2053ドル(日本円建てではgあたり225円高の9662円)となったため、金地金の購入者数は前月比19.4%増加していました。
 
一方、月間に購入量を上回る売却をしたネットの売却者数は8.2%減少していました。この結果、金地金現物に対する個人投資家の実際に取引したデータを基に算出した金投資家インデックスは、1ポイント上昇して52.4となり、8月以来の高水準となっていました。月間のネット購入者数と売却者数が一致した場合、この数値は50.0となります。
 
過去5年間の金投資家インデックスと月末金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
そのような中で、ゴールドラッシュと呼ぶような金投資が増加する状況ではありません。
 
1月の金投資の増加は、金価格が記録的な高値をつけたにもかかわらず、金投資家インデックスが 前月2023年の弱気市場レベルまで下落した後に起こりました。
 
欧米市場の小売金地金と金貨の需要は、誰が見てもかなり低い水準である一方、金を裏付けとするETFの残高は縮小を続けています。そして、ブリオンボールトを利用している投資家は、先月までの5ヶ月間連続で月間で購入を上回る売却を行っていたことから、その総金保有量は0.1%減少し46.9トンとなっていました。
 
これは、およそ3年ぶりの低水準でした。しかし、2021年4月からの期間において、ブリオンボールトの顧客の金地金保有量は、評価額において米国ドル建てで16.8%(日本円建てで56.5%)増加しています。そのため、金からの資金流出を急いでいるわけではないのです。
 
つまり、金価格の高騰に加え、高金利と株式市場の上昇が、欧米の個人投資家や資産運用業者の金地金への新規投資を引き続き抑制しているのです。また、既存の金地金所有者は、ポートフォリオのリバランスのために利益確定をして資金を動かしているのです。
 
このような金市場からの資金流出は、中国の金融不況も中東の危機の深刻化も、欧米の投資家にとっては依然として遠い問題であることを示しています。
 
中国の貯蓄者と投資家は、低金利、株式市場の急落、不動産の暴落という正反対の状況に直面しています。そのため、貴金属の最大の消費市場である中国では、記録的な人民元建て金価格にもかかわらず、金需要に拍車がかかっています。そして同国の中央銀行もまた、地政学的緊張が深まる中、金を買い続けているのです。
 
それに対し、ここ欧米の個人投資家においては、ブリオンボールトの1月の新規口座開設数は多少回復して、新規口座開設数は12月の低い数値から9.5%増加していました。しかし、それでも2023年の月平均を10.3%下回っており、世界金融危機直前の2007年以来最も低い数値となっていました。
 
過去5年間の銀投資家インデックスと月末銀価格のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
一方、銀価格の急落により、1月の銀投資家インデックスは11ヶ月ぶりの高水準に急騰し、11月の過去最低の46.4から上昇して、53.2となりました。
 
前月銀価格は2.9%下落し(日本円建てでは0.6%高)、トロイオンスあたり23.09ドルと3ヶ月ぶりの安値で1月を終える中で、銀の需要も月間の購入量が売却量を上回ってネットでプラスに転じ、1.3%増の1229トンと2023年の総流出量の5分の2を取り戻していました。
 
このように、銀も金と同様に、欧米の投資家は価格に敏感になっており、下落局面では買いを入れるものの、価格上昇局面では利益確定の売却をしています。このようなマクロ的な状況は、戦略的な資金流入には不利に働きます。それは、このような投資形態には緊急性が無いからです。
 
中国の国内金需要の強さからも、中国が金曜日から1週間の旧正月の休暇に入るため、世界の金相場が底値をサポートする中国の投資家の需要欠落によりを下落させることでしょう。歴史的に見れば、欧米の投資家がその下げの局面で地金を買うのは稀なこととなります。しかし、世界経済と中国経済の乖離したマクロ的背景は、昨年すでに両者の役割が入れ替わったことを示唆していました。
 
2023年は、2014年以来初めて欧米の投機的な金投資の規模が金価格と同じ方向に動かなかった年であり、欧米の金投資が縮小する一方で価格が上昇したのは少なくとも20年ぶりのことでした。また、2023年には、中国の消費者がこれまでの金取引のパターンを破って、金価格が人民元建てで過去最高値を更新する中でも金地金を買い増していたのです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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