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金価格ディリーレポート(2024年11月25日)金価格は財政規律重視派の時期米財務長官への期待で下落

ドナルド・トランプ次期大統領が、増え続ける米国債務に対処するため、ヘッジファンドマネージャーのスコット・ベッセント氏を財務長官に指名したことを受け、米ドルが米国債利回りとともに下落し、世界的な株価が上昇したため、金価格は月曜日に下落し、ユーロと英国ポンド建てにおいては先週の史上最高値から3.5%下落することとなりました。
 
一方イスラエルは、イランが支援するレバノンのヒズボラとの停戦合意まであと数日であることを示唆していました。
 
ドル建てスポット金価格は、アジア時間の月曜日の取引が始まった時点で2.2%下落し、その後さらにトロイオンスあたり2638ドルまで下落し、先週ウクライナ戦争1000日目を迎える中ロシアとウクライナの緊張が高まり世界的な紛争へ広がる懸念からも、 LBMA価格ベースで3月以来の大幅な上げ幅であった4.8%の急騰の半分を帳消しにしていました。
 
一方、ドルインデックスは金曜日の2年ぶりの高値から0.6%下落し、政府・企業の借入金利の指標となる米10年債利回りは、トランプ次期大統領がジョージ・ソロスの傘下で働き、現在はレッドスクエアのヘッジファンド・オーナーであるベッセント氏を財務長官に指名したことで、2週間ぶりの低水準まで低下していました。
 
ニューヨークのS&P500種株価指数は0.5%高、汎欧州のストックス600種株価指数は0.2%高となっていました。
 
フランス系銀行ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、スティーブン・スプラットは「ベッセント氏は市場の見方では安心できる候補者(Safe hand)だ。」と述べていました。
 
「スコットは財政のタカ派です」と、現在投資銀行でブローカー・ディーラーのミシュラー・ファイナンシャル・グループに勤める債券トレーダー、グレン・カペロ氏のコメントは広く引用されています。
 
「彼は(政府の)支出を抑えたいと思っている。彼は間違いなく、経済と市場にとって全体的にプラスになるだろう」とカペロ氏は続けています。
 
米国の公的債務(青)とインフレ(赤)のチャート 出典元 セントルイス連銀
 
米連邦準備制度理事会(FRB)が今月行った調査では、金融の専門家、投資マネージャー、学識経験者の間で、米国政府の債務が金融の安定に対する最大のリスクとみられていました。
 
財政の持続可能性は、インフレの持続に対する懸念を上回り、中東における緊張の高まり、米国の政策の不確実性、米国の景気後退のリスクを上回っていました。
 
米国財務省によると、米国の国家総債務は先週木曜日に 正式に36兆ドルに達し、これは、7月に35兆ドルに達して以来3ヶ月の期間に達しています。
 
米国債の利払いは、10月末までの会計年度で1兆2000億ドルかかると予測されており、社会保障とメディケアの給付に次いで3番目に大きな予算支出となるとのこと。
 
超党派の責任ある連邦予算委員会(CRFB)は、トランプ次期大統領の政策が実現すれば、 2026年から2035年の間に7.5兆ドルの国債が増加すると試算していました。
 
しかし、「もしトランプ減税が延長されたり恒久化されたりするのであれば、埋め合わせが必要だと思う」とベッセント氏は6月に述べ、来年期限切れとなるトランプ大統領が署名した2017年減税の延長が、 他の増税や歳出削減によって相殺されるようにすることで、新たな共和党政権は長期債務と短期赤字の削減に注力することを誓っていました。
 
ベッセントはまた、トランプ次期大統領が約束した貿易関税を軽視しており、すべての外国製商品に10%の輸入関税をかけ、さらに中国からの輸入品には60%の貿易関税をかけ、すべての輸入車には100%の関税をかけるという計画は、交渉戦術としてのみ使われる「最大主義者」の立場に過ぎないとしていました。
 
金と同様に、原油価格も先週5.8%上昇して2週間ぶりの高値をつけた後、月曜日には下落していました。しかし、天然ガス価格は、先週金曜日に12.7%急騰して2023年10月以来の高水準に達した後、本日この年初来高値付近を維持していました。 
 
この天然ガスの急騰は、11月16日にガスプロムがオーストリアへのガス供給を予期せず停止したこと、そして以前は罰則の対象外だったロシアの最後の大手金融機関ガスプロムバンクに対する米国の制裁措置と重なっていました。さらに、北半球全域で季節外れの寒さが続き、暖房需要が急増していることも背景となっていました。
 
主に工業用金属である 銀の価格は本日、金の下落に追随したものの、トロイオンスあたり30.78ドルと1.8%の下落にとどまり、先週の上昇幅をほぼ半減させていました。
 
ユーロ建て金価格は2511ユーロまで下落し、今年45番目の新高値から100ユーロ近く後退し、 英国ポンド建て金価格は、前セッションで2024ポンドと41番目の過去最高値をつけた後、2100ポンドまで下落していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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