金市場ニュース

ニュースレター(2023年10月20日)金価格は地政学リスクによる安全資産の需要で日本円と人民建てで史上最高値をつける急騰へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1988ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から4.16%高と2週連続の4%を超える上げで、今年5月半ば以来の高さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から5.12%高のトロイオンスあたり23.21ドルと2週連続の上昇でほぼ4週ぶりの高さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から1.97%高のトロイオンスあたり898ドルと2週連続の上昇となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は3.05%安のトロイオンスあたり1106ドルと週間の下げで2018年11月以来の下げとなっています。

金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属価格は金と銀が大きく上昇し、プラチナは上げ幅が制限され、パラジウムは下げるという異なるものとなりました。

金と銀に関しては、イスラエルとハマスの紛争によるWar Premiumという地政学リスクによる安全資産の需要が主な要因となり、プラチナとパラジウムは紛争拡大による世界経済への懸念が頭を重くしている模様です。

なお、本日は人民元建てと日本円建てとオーストラリアドル建て金相場がこれらの通貨が対ドル弱含み、ドル建て金相場が上昇する中で再び史上最高値をつけています。

日本円が対ドル下げているのは、米国国債利回りが今週急騰しており、今後も金融政策が引き締め方向である米FRBに対し、緩和継続を示唆している日本銀行からも、この利回りの差が継続、もしくはさらに拡大する観測が広がる中で、円が対ドル150円目前で昨年秋に日本当局が介入した水準に近付いていることに加え、ドル建て金相場が上昇していることがこの急騰を起こすこととなりました。ちなみに、本日はドル建てを除く、ユーロや英国ポンド建て等のほぼすべての主要通貨でも史上最高値に近い水準へと上昇しています。

本日は日本円建て金相場の過去20年間のチャートを下記に添付します。

20年間の日本円建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

ちなみに、先物市場では金価格はトロイオンスあたり2000ドルを超えるなど、8月初旬以来の高さをつけています。

なお、地政学リスクによる金の需要の高まりと多く報道されていますが、金のETFの残高は減少を続けて3年ぶりの低さへと下げており、また高値による金現物等の需要の減少も聞こえており、価格上昇の背景は多くは先物市場の動きとみられています。

今週の金相場の動きと背景について

週明け月曜日金相場は、前週の5.5%急騰の調整や長期金利上昇もあり、市場明けとともに1%ほどの下げで始まったものの、その後下げ幅を半分ほど削り、トロイオンスあたり1919ドルで終えていました。

10月7日のイスラム過激派ハマスのイスラエル攻撃以来、市場はイスラエルとハマスの紛争が中東全体へと拡大するのかに注目していましたが、同日も早朝のガザからエジプトへ抜ける検問所が再開されると伝えられたものの、イスラエルとハマス両サイドからその合意はされていないと否定されたことにも反応していたようでした。

火曜日金相場は、米経済指標が良好であったことで、長期金利が2007年以来の高さへ上昇する中で、ドルが多少下げていたことから、トロイオンスあたり1924ドルと前日終値から上昇して終えていました。

この経済指標は、米小売売上高で、前月比0.7%と前月修正値の0.8%を下回ったものの予想の0.3%を上回り、米鉱工業生産も0.3%と前回0.4%を下回ったものの、予想の0%を上回り、米の堅調の経済を裏付けていました。

しかし、イスラエルとハマスの紛争は翌日バイデン米大統領がイスラエルを訪問することが伝えられる中で、未だこの紛争が中東の他の国へ広がる懸念は強く金のサポートとはなっていました。

水曜日金相場は、長期金利とドルが上昇する中で、一時トロイオンスあたり1962ドルをつけた後に1950ドルで終えていました。

同日はバイデン米大統領がイスラエルを訪問していたことから、イスラエルとハマスの紛争関連ニュースに市場は注目する中で、安全資産の需要で、ドルと金は購入されることとなりました。

また、長期金利は前日の米小売売上高等の良好な経済データでFRBが長期の高金利を続ける観測が広がっていることと、さらなる国債発行による需給バランスが崩れる懸念も広がりつつあるようで、軒並み10数年来の高値をつけていました。

ちなみに、同日日本円建て金相場はgあたり9445円と史上最高値を更新していました。

木曜日金相場は、同日夜のパウエルFRB議長のスピーチに注目しながら、ドルは若干下げていたものの、長期金利が前日の2007年夏以来の高さからさらに上昇して5%に近づく中で、スピーチ後も上昇基調を継続して、トロイオンスあたり1977ドルへと上昇して終えていました。

パウエル議長のスピーチでは、追加利上げ期待を排除しないように慎重なものであったものの、次回FOMCでは政策金利は据え置かれる可能性が高いと市場は判断した模様です。

そこで、ドルは高い水準から下げ、長期金利もほぼ5%の高い水準から若干下げて終えていました。

実質金利と金の負の相関性は今週9月末以来の低さまで下げており、ドルやS&P500との相関性も金は弱まっており、地政学リスクによるWar Premiumと呼ばれている上昇幅が追加されているようです。

本日金相場は、昨日5%近くまで上昇した長期金利が下げ、ドルも高い水準ながら下げる中で、トロイオンスあたり1997ドルまで一時上昇後にロンドン時間夕方に1994ドル前後を推移しています。

本日は中東の地政学リスクの高まりで米株価指数は全般下げており、金の上昇は安全資産の需要とされています。

中東情勢は、イスラエル軍が昨夜も激しい攻撃をガザのハマスの標的へ行ったこと、またレバノンのヒズボラへの攻撃も行っていること、さらには米国のイラクとシリアの軍事基地が攻撃を受けているともされており、紛争の激化が懸念されているようです。

そこで、本日は日本円と中国人民元、豪ドル建て金現物相場は軒並み史上最高値をつけ、日本円はgあたり9620円と前日の史上最高値の更新が行われています。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に最新データの10月10日分が発表され、10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃後にFRB高官のハト派的コメントでドルと金利が下げて価格が前日の上げ幅を維持する中で、全ての貴金属で強気ポジションを減少させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは2週連続でネットショートで392%増で46トンと、昨年11月初旬以来の大きさとなっていたこと。この間建玉は2.6%増で7月25日以来の高さで、価格は前週比1.9%高でトロイオンスあたり1857ドルと前週のLBMAのPM価格において昨年12月20日以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、2週連続でネットショートで121%増の634トンと今年8月半ば以来の高さへ増加していたこと。価格は3.13%高でトロイオンスあたり21.72ドルと前週の3月初旬以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、3週連続でネットショートで28%増の19トン。価格は前週比0.57%高でトロイオンスあたり886ドルと前週の昨年9月下旬以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションはネットショートで、19%増の32.5トンと4週ぶりに増加していたこと。価格は前週比4.56%安でトロイオンスあたり1129ドルと2018年11月半ば以来の低さへ下落していたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの1週間で14.1トン(1.63%)減で848.24トンと2019年8月以来の低い水準で、7週連続で週間の減少の傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.59トン(0.15%)減で405.92トンと、2020年4月半ば以来の低い水準で、13週連続の週間の減少傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で228.04トン(1.63%)減で13,743.74トンで2週連続の減少傾向。
  • 金銀比価は、今週84後半で始まり、本日85半ばと10月10日以来の高さへ上昇して終える傾向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、1033ドルで始まり、本日1083と2020年8月初旬の高さへ上げて終える傾向。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは266ドルで始まり、本日210ドルへ下げて、2018年9月以来の低さへ下げて終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、人民元建て金価格が本日史上最高値を付けたこともあり、週平均は48ドルと前週の58ドルから下げていたこと。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、木曜日までで前週平均比で、金は9%高で2週ぶりの高さ、銀は9%減で7月下旬以来の低さ、プラチナは7%減で8月半ば以来の低さ、パラジウムは10%減で9月末以来の低さ。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は今週-0.201へと9月末以来の低さで、(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は8月24日以来負の相関関係であるものの、-0.27と9月下旬以来の弱さで、S&P500種と金の相関関係は正の相関関係であるものの、0.45と9月末以来の弱さとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は、前週末のハマスによるイスラエル攻撃後の紛争が中東全域に広がるのか、そして昨夜のパウエルFRB議長のスピーチを市場は注視していましたが、来週も同様にこの紛争関連ニュースやFRB高官のコメントは重要となります。

それに加え、主要中央銀行の金融政策やそれにかかわる経済指標やイベントへも市場は注目することとなり、木曜日の欧州中央銀行の政策金利発表と金曜日のFRBがインフレ指標として好む個人消費支出PCEコア・デフレーターは重要となります。

詳細は主要経済指標(2023年10月23日~27日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週も英国ではイスラエルとハマスの紛争についてがトップニュースで伝えられていますが、その他、ラグビーワールドカップでイングランドが4強入りしたこと、スコットランド地方政府の第一政党であるスコットランド国民党の党大会について、高止まりをしている消費者物価指数、そして本日は2か所で行われた下院補欠選挙の結果、保守党地盤の議席がともに労働党へ動いたこと等も大きく伝えられています。

そこで、本日は今朝発表された補欠選挙の結果とその意味についてお伝えしましょう。

この両議席は保守党議員がともに辞任したことから補欠選挙が行われましたが、一つのロンドン北のミッドベッドフォードシャーは1931年以来保守党が維持し、EU離脱賛成に投票した強い保守党地盤でした。

そして、もう一つの場所はイングランド中央部タムワースで、保守党、労働党、自由民主党三つ巴の接戦となっていましたが、結果的には労働党が議席を勝ち取っています。

労働党のスターマー党首は「歴史的瞬間」と述べ、「保守党政権による失敗と低迷の下で人々は変化を求めている」と述べていました。

それに対し与党保守党のスナク首相は現在中東訪問中であるために、与党保守党を代表してコメントを出しているキーガン教育相は、投票率の低さを挙げて、保守党へ投票する人々が投票をしなかったと、今回の結果を説明していました。

しかし、実際にはミッドベッドフォードシャーの保守党への投票率は前回2019年の38%から31%へと下げ、労働党は22%から34%へと急上昇していました。そして、タウンワースにおいても、保守党が66t%から41%急落し、労働党は24%から46%へと上昇しており、これを保守党への投票のみが減少したという説明は通らないであろうということのようです。

この結果過去3年間に行われた補欠選挙で10議席が保守党から労働党へと入れ替わったとのこと。これは、ブレア政権前のメージャー政権時の1990年代以来の議席変動であるとのこと。

ちなみに、この結果を受けて著名選挙関連専門家のジョン・カーティス興は、この大敗の理由をパーティ問題等で辞任したジョンソン元首相と、財源なき減税策で英国の債権、通貨、株価急落を引き起こしたトラス前首相が原因とし、スターマ労働党首の手腕というよりも、保守党が自滅していると解説しています。

来年行われるとされている(2025年1月までに行われる必要がある)総選挙で、1997年にトニー・ブレア氏が18年間続いた保守党政権を打ち破ったようなロードマップがまた築かれたような補欠選挙結果となったようです。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ