プラチナとパラジウムの2021年需給レポートのまとめと2021年の見通し
プラチナウィークがロンドンで行われた5月16日にプラチナグループの最新の需給レポートが発表されていますので、下記にその概要をまとめます。
プラチナグループのレポートは毎年貴金属専門コンサルタントの Metals Focus社と、貴金属化合物等の化学品の製造・販売を行う ジョンソン・マッセイ社が発表しています。そこで、今回はMetals Focusレポートの概要を下記にまとめ、需給バランスについてはこの2社のデータを比較してみましょう。
2021年の需給
プラチナ
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2021年の供給余剰量は、南アフリカの供給が好調で需要が減少したため、844キロオンス(26.2トン)となり、(2010年以降)3番目に多い供給余剰量を記録した。 6年連続の黒字となった。 -
供給量は前年比19%増、需要は9%増。 -
鉱山供給は前年比24%増の630万オンスと2011年以来の高水準、リサイクルは1%増の195万オンス(60.7トン)。 -
需要の詳細-
自動車は10%増の264万オンス(82.2トン)、ただし2019年のパンデミック前の水準からは8%減。 -
宝飾需要は7年連続減少-中国や日本の需要減で前年比6%減の192万オンス(59.8トン)。 -
工業用需要は、2020年から遅れた生産拡張が行われ、ガラス関連需要が75%増となったため、27%増の251万オンス(78トン)となった。 -
現物投資は、日本がネットで売りに転じて前年比43%減の332,000オンス(10.3トン)、北米の需要は9%増で最高となった。
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パラジウム
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自動車用半導体供給不足による自動車需要減少の影響を受けて、10年ぶりに119,000オンス(3.7トン)の供給超過となった。 -
供給量は前年同期比6%増となったが、需要は2%増にとどまった。 -
鉱山からの供給は7%増の688万オンス(214トン)、リサイクルはコロナ規制の緩和と過去最高の価格を受けて3%増の320万オンス(99.4ト ン)であった。 -
需要の詳細-
自動車触媒の需要は、自動車販売台数の伸びが緩やかだったため、1%増の 814 万オンス (253 トン)。 -
工業用需要は4%増の158万オンス(49.2トン)。 -
宝飾品加工は2019年比23%減となったが、20%増の212,000オンス(6.6トン)に反発。 -
現物投資も90%増の23,000オンス(0.7トン)。
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PGMは、Covid-19のパンデミックと関連するロックダウンによる、様々なサプライチェーン問題の影響を受けた。 半導体不足は、白金族に最も大きな影響を与えた。 2021年初頭の軽自動車の生産台数は、当初の予想より1億700万台減少した。 対照的に、2020年の混乱から立ち直った南アフリカの鉱山によるプラチナとパラジウムの供給は力強く増加した。その結果、両金属とも供給余剰が記録された。
2021年の価格
プラチナとパラジウムは年初上昇で始まり、パラジウ ムはトロイオンスあたり3019ドルの史上最高値を、プラチナはトロイオ ンスあたり1340ドルを記録し、2014年以来の高値となった。これら貴金属は、ノルニッケルの供給障害に対する懸念が支えとなり、プラチナは、グリーン(水素関連)エネルギーに使われることで投資家の関心の高まりも支えとなった。12月には、プラチナ価格が897ドル、パラジウム価格が1542 ドルまで下落したが、これは、ノルニッケルの操業中断が短時 間のうちに収まる等、ファンダメンタルな要因が背景となった。
2022年の展望
プラチナ
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供給量の減少が需要の減少を上回っ ているため、2021年比40%減の477,000オンス(14.8トン)の余剰 量になると予想。 -
年間平均価格は990ドルと予想されるが、これは中国の需要が旺盛であるものの、在庫余剰などからも、前年比9%減。
パラジウム
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パラジウムの供給は抑制され、自動車触媒の需要がやや強まっ ていることから、521,000オンス(16.2トン)の供給不足になると予想。 -
年間平均価格は2290ドルとなり、異例の高値となった昨年から4%下落すると予想。
下記にMetals Focusとジョンソン。マッセイ社(JM)の2022年の需給予想の比較表を示します。
プラチナ
パラジウム
注
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単位は千オンス。 -
ジョンソン・マッセイの供給量は、Metals Focusが供給量に含めているため、同社のリサイクル量を加算して算出。 -
ジョンソン・マッセイは2022年のロシアの供給量をプラチナ、パラジウムとも予測していないが、Metals Focusは両金属とも予測しているが7%減。