金市場ニュース

ウクライナ情勢によるゴールドラッシュ?金価格1900ドルでは購入ではなく利益確定が進む。

ウクライナ情勢悪化懸念で金価格急騰で買いより売り優勢となっています。
 
地政学リスクが金価格を動かしているかもしれませんが、金価格の急騰は投資家の利益確定を促しています。
 
ウクライナを巡るロシアと欧米の緊張が高まる中、金購入需要が急増するような「ゴールドラッシュ」は起きていません。
 
衝撃的なニュースというわけではありません。金市場は過去に何度もこのような経験をしており、直近では2017年夏、北朝鮮のミサイル実験で大陸間弾道ミサイル(ICBM)が北日本上空を通過したときがそうでした。
 
  • まず、パニックを引き起こす衝撃的な見出しがコメックスオプションの投機的なポジションに拍車をかける。
  • 現物地金のトレーダーが利益確定を行う。
  • 危機が沈静化することを祈る。
  • その後、金のファンダメンタルズの強さ(または弱さ)が長期的な方向性を決定。
明確なことは、現在、金の需要は旺盛であるということです。木曜日、株式市場が下落し、ウクライナ情勢悪化への懸念が高まる中で、金はトロイオンスあたり1900ドルを超え、ブリオンボールトでの総購入量は、直前の年間平均から163%増加していました。しかし、売却量はその2倍で、年間平均から485%増となっていました。これを購入と売却量を相殺したネットの量で見ると、過去3年間で5番目に最も多い一日あたりの売却量となっていました。
 
ブリオンボールトの世界の顧客は、ウクライナ情勢よりも価格の動向により注意が向けられていたようです。
 
  • ユーロ建て金価格は、昨日2020年8月の過去最高値から4%未満の水準となり、ユーロ圏の顧客による売却が購入を7対1で上回っていました。
  • 英ポンド建ての金価格は史上最高値からは他の主要通貨建てよりも低い水準であり、木曜日の急騰時に英国顧客の売りは買いの3分の1に過ぎませんでした。
  • 日本円建ての金価格は、2020年8月に記録した過去最高値に最も近い水準でしたが、ブリオンボールトの顧客による円での購入はなく、売却のみが行われていました。
ブリオンボールト・リアルタイム日本円建て金価格
 
株式市場に上場されている 金ETFの取引量は高い水準ではあるものの、全体的に横ばいとなっています。
 
木曜日のSPDRゴールドシャア(GLD)の取引量は90日平均の2倍で、iShareゴールド(IAU)の取引量は約2分の1でした。しかし、どちらも投資家の大量な資金流入の兆しはありません。
 
小売市場のコインディーラーや小規模地金のディーラーは、顧客の激しい売りに対して在庫のための購入を減らしており、新規コイン需要も強くはなく、今月は米国造幣局からのアメリカンゴールドイーグルの1日平均の販売ペースが昨年の5分の3にとどまっています。
 
では、今売却すべきなのでしょうか?今こそ金から資金を引き上げる時なのでしょうか、それとも空売りする時なのでしょうか?
 
まず、利益確定を行って破産した人はいません。第二に、 1月の利益確定に続く金の純粋な売却量は、今週の数ヶ月ぶりの記録的な高値に近い価格であっても、わずかなものでした。
 
2月1日以降、ブリオンボールトの顧客は、今週の利益確定の前の堅固なネット需要により、 47トンのうち0.001%であるわずか0.5キロほどしか売却していないのです。
 
第三に、そしてさらに先のことですが、今日の記録的な金価格の動きの基本的な要因は、コメックスの投機家筋から現物を購入するという動きにつながっていないために、金価格は、ロシアと欧米諸国間のウクライナを巡る緊張が緩和した場合には下げる可能性があるとしても、堅調に推移するものと思われます。その理由は下記のようになります。
 
  • アジアの消費者需要は、コロナ危機のロックダウン後に順調に回復し続けている。
  • 中央銀行も全体では金準備を増加している。
  • 最も注目すべきは、2022年のこれまでの株式市場の下落に対する金の上昇で、高インフレが企業収益を直撃し、借入コストが上昇する中で、ポートフォリオマネジャーが金をリスク分散に使っていることを示唆している。
そのために、現在は地政学リスクが金価格を動かし、一部の投資家の利益確定を促している一方で、現物地金投資の長期的な見通しは引き続きポジティブに見えます。それは、経済と金融市場に多くのネガティブな要因が見られるからです。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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