金価格ディリーレポート(2022年10月31日)アジアの小売現物需要は増加する中で、投機家が強気ポジションを減少させ金ETF残高も縮小し、金はFOMC前にドル高で下げる 2022年10月31日 月曜日 16:11 金相場は、今週の中央銀行の重要な金利決定を前に、上昇するドルに対して下落していました。この間、中国とインドの貴金属に対する強い小売需要は、投機家や機関投資家がComex先物やオプションの強気ポジションを14年ぶりの低さに減らし、金ETF残高を6ヶ月連続で減少させた動きとは対照的な強さを見せていました。 ドル建ての金現物価格は、前週終値からトロイオンスあたり10ドル安の1635ドルとなった後に5ドル上昇し、10月の月間では1.9%安と7ヶ月連続の下落の傾向となっていました。 一方、英国ポンド建ての金相場は1420ポンドまで上昇し、ユーロ建て金相場はトロイオンスあたり5ユーロ高の1657ユーロとなっていました。これは、欧米のインフレ率が1980年代初頭以来の高水準にある中で、トレーダーが今週水曜日に連邦準備理事会が75ベーシスポイントの利上げを4年度連続で行うことを予想して、ドルが主要通貨に対して強含みに推移していたためでした。 月曜日二発表されたユーロ圏のGDPとインフレのデータでは、第3四半期の経済成長は鈍化していましたが、インフレ率は10月に通貨同盟設立以来の記録である10.7%に高騰する中で、欧州の株式市場はまちまちの動こをしていました。 上海黄金交易所の金価格は、人民元価格がグラムあたり392円まで下落し、人民元が対ドルで2008年以来の低い水準まで下落する中で、新規の金輸入のインセンティブとなるトロイオンスあたり34ドルと、ロンドン価格に対して高いプレミアムを月曜日記録していました。 スイスの銀行UBSのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は、「高いプレミアムは 強い現物需要を示しており、中国経済の再開により、今後数ヶ月はさらに強い需要が見込まれる」と述べていました。 中国のゼロコロナ政策による経済的、社会的閉鎖が続いているにもかかわらず、金地金の世界第一消費市場の卸売価格は、ロンドン相場に対して10月に月間平均34ドルのプレミアムを示し、9月の32ドルから上昇し、過去の平均の9ドルを大きく上回っていました。 また、世界第二の金消費国のインドの金現物需要も、先週のディワリ祭が新たな需要を喚起したことから、今月は増加していました。 「先週はディワリ祭があったため、 小売需要は勢いを増した。そして価格も魅力的だった」と、ムンバイに拠点を置く金地金卸売業者Chenaji Narsinghjiの経営者であるAshok Jain氏は述べていました。 堅調な祝祭需要により、インド国内のディーラーは国内公式価格(15%の輸入税と3%の売上税を含む)に対して、前週の約2.5ドルのプレミアムから最大で3.5ドルのプレミアムを付けていました。 金銀地金決済銀行であるHSBCのジェームス・スティール氏は、先週行われた今月の LBMA業界年次会議のレビューで、中国とインドの強い金需要を指摘し、「地下の(現物)需要は、ETFの資金流出によって金価格の上昇にはつながっていない」と述べています。 「機関投資家の売りを相殺する小売りの需要がなければ、金(価格)はどうなっていただろうか?」と問いかけていました。 金ETF最大銘柄のSPDRゴールドシェア(NYSEArca: GLD)は先週0.6%減少させて3週連続の週間の下げで2020年3月以来の低さとなり、第2銘柄のiShareゴールドETF(NYSEArca: IAU)もまた0.7%残高を減少させて9週連続の週間の下げで2020年7月以来最も低い水準と、 金を裏付けとするETFは共に減少していました。 GLDとIAUの 金ETFはともに6カ月連続の残高の減少を記録する傾向となっています。 また最新のデータでは、ヘッジファンドやその他のレバレッジを効かせた投機家がコメックス金先物・オプションの強気ポジションを3週連続で減らして、10月25日の週には想定元本が244トンと、2008年の金融危機以来の少なさに戻っており、同時に弱気ポジションを2週連続で増やしていました。 そのため、全体として資金運用業者のネットショートポジションは過去4週間で最も高い水準で、前週より61%増加していました。 一方、債券価格は月曜日に再び下落し、10年物米国債の利回りは金曜日にPCEインフレ(連邦準備制度理事会が重要視する指標)と米国雇用コスト指数が共に強い予測に一致した内容であったことがきっかけに急騰後、本日もその基調を受け継いで上げ幅を広げて4.04%まで上昇していました。 本日原油価格は、中国の経済指標の製造業PMIが悪化していたことで、バレルあたり1ドル下げていましたが、小麦の価格はロシアがクリミア近郊のロシア黒海艦隊に対する「大規模」な無人機攻撃を受けたことに対して、包囲されているウクライナのインフラと市民を攻撃する中で、ロシアがウクライナとの穀物輸出協定から離脱したことで6%以上上昇していました。