記録的な中央銀行の金購入にもかかわずイングランド銀行の保管量は変わらず 2022年11月2日 水曜日 12:54 世界の中央銀行はこの夏、記録的な水準で金準備を増加させていたことが最新のデータで明らかとなる中で、世界の金地金市場の中心であり、世界の中央銀行が保管場所として利用するイングランド銀行の保管量は減少していることも明らかとなった。 金鉱業界のマーケティング団体であるワールド・ゴールド・カウンシルが昨日発表した 最新レポートによると、今年7月から9月にかけて、中央銀行による金の購入量は四半期ベースで記録的なものとなり、その量は399トン強とのこと。 この数字は、世界の年間金採掘量の5分の2以上に相当し、中央銀行が2022年の第3四半期に正式に報告した120トンをはるかに超えるものでもある。 この高い数値には、「報告されていない購入が相当含まれている」とワールド・ゴールド・カウンシルは述べている。「すべての公的機関が金の保有量を 公的に報告するわけではなく、また遅れて報告する場合もあるので、珍しいことではない。」とコメントしている。 スイスの地金精錬・金融グループのMKSパンプ社の金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、2022年第3四半期に金がトロイオンスあたり1800ドルから1625ドルに下落したことを指摘し、「価格の動きには、この 大規模買いの証拠は現れていない」と述べている。 つまり、これらの購入が公開市場を通じて行われるのではなく、「ロシアか中国が自国の(鉱山)生産物を取り込むか、制裁を考慮して非欧米諸国のいずれかがロシアから(割引価格で)金を取り込んでいるのだろう」と分析している。 「いずれにせよ、東欧ではドルからの脱却が続いている。」と結んでいる。 ニューヨーク連邦準備制度に次いで、世界の中央銀行の金を保管している イングランド銀行のデータによると、保管されている金の量は、第3四半期に189トン減少し、減少を続けていることが明らかとなっている。 ワールド・ゴールド・カウンシルの新しいデータでは、9月30日までの1年間で、中央銀行の金保有量は711トン増加しているのに対し、イングランド銀行の保有量は451トン減少し、ニューヨーク連銀の世界の中央銀行による保管量は変化を見せていない。 過去15年間で世界第1位の金採掘国である中国は、2019年に国際通貨基金(IMF)の報告要件を毎月遵守していた短い期間以降報告がされていないために、この中央銀行による金購入は確認されていない。 世界第2位の採掘国であるロシアは、今年1月以降、中央銀行の金準備の変化をIMFに報告しておらず、2020年3月のコロナ危機以降 金購入を停止して以来変化は無いと報告されている。ロシアの中央銀行はこの間、同国の年間 経済アウトプットの5分の1を賄う原油と天然ガスの価格の崩壊の中でルーブルの為替価値を守るために外貨準備を利用していた。 今年、ウクライナ侵攻をめぐる西側諸国のロシアに対する制裁措置の発動により、ロシア連邦準備銀行は 金の備蓄に戻るだろうと、ワールド・ゴールド・カウンシルのレポートを作成する貴金属専門コンサルタント会社であるメタルズフォーカスは、今年5月の予測で述べていた。 これは、2014年から2018年にかけてのロシアのクリミア併合に対する西側の制裁の間、ロシアが 国内の鉱山生産物を購入する戦略を繰り返したことからであった。ルーブルを地金購入に使うことでロシア中銀の外貨準備とロシアの主要産業の両方を支え、中央銀行はその期間に国内の金鉱山生産量の85%以上を購入していた。 しかし、10月中旬にロシア中銀のアレクセイ・ザボトキン副総裁は「これは 現時点では不適切だ」と述べ、ロシア金生産者組合からの国家支援の要請を拒否し、国内で採掘された金にルーブルを使えば「国の通貨供給量をさらに増やす勢いが生まれ」、生活費のインフレに拍車をかけると警告していた。 しかし、ザボトキン氏は、「経済の個々のセクターへの直接的な支援は、ロシア中銀の権限の範囲ではない」と述べ、ウクライナ制裁の危機が始まった3月と4月に中銀が金を買い、「状況の安定化」を目指したと述べ、その購入は正式に報告されなかったとされている。 ロシアは、過去10年間の世界の中央銀行の金蓄積量の29.3%を占め、トルコ(18.9%)、中国(18.5%)、カザフスタン(6.2%)、インド(4.7%)を抑えている。 2012年の初めから204トンもの金地金を売却しているベネズエラは、ニコラ・マドゥロ大統領の腐敗した政権に対する国際的制裁により、ロンドンに保管されている約20億ドルの金地金が利用できない事に対し、 イングランド銀行と論争を続けている。 先月、ロンドンの商業裁判所は、ベネズエラ中央銀行に対し、今年初めに高等法院で下された判決(しかも同じ裁判官による)を 上訴する許可を与えた。しかし、これは英国政府の方針に沿って、野党指導者のフアン・グアイドー氏の政権を承認しなければならないという英国銀行の主張を再び支持するものでもあった。