ニュースレター(2021年4月23日)2月ぶりの高さへ上昇した金は良好な経済指標で上げ幅を失う
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1780ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.3%高で3週連続の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.13ドルと前週のLBMA価格(午後12時)とほぼ同レベルとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1251ドルと前週LBMA価格から4.35%高となっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週も貴金属相場はほぼ長期金利に反応する形で推移しています。そのような中、今週半ばの長期金利の下落要因は、①インドを含む世界のCovid-19感染拡大、②バイデン政権が計画する増税計画が、富裕層やキャピタルゲインをターゲットにしていることが明らかとなり、株価の下げによるリスクオフというものでした。
しかし、今週発表された主要経済指標、特に本日の米国指標は経済回復が速いペース起きていることを示唆しており、インフレ観測の広がりが再び長期金利を引き上げています。
金相場はそこでトロイオンスあたり1797ドルまで一時上昇し、ほぼ8週ぶりの高さとなっていましたが、本日前週終値とほぼ同水準を推移しています。また銀相場も、トロイオンスあたり26.60ドルと7週ぶりの高さへ上昇し金銀比価も多少銀割安解消されていましたが、やはり前週終値へと戻しています。
それに対し、プラチナは本日8週ぶりの高さのトロイオンスあたり1254ドルを付けた後に長期金利に反応して下げていますが、ロンドン時間夕方で前週終値比2.2%上昇して推移しています。この背景は、プラチナは先週金と銀に比べて動きが鈍かったこと、そしてやはり工業用途の需要が銀以上に意識されていることが要因と思われます。
日々の金相場の動きと背景について
先週後半に米長期金利が下落することで7週ぶりの高さへ上昇していた金価格は、週明け月曜日ロンドン午前中にさらなる上昇をしていましたが、ロンドン昼過ぎに長期金利が上昇に転じたことでその上げ幅を失い、前週末終値比下げてトロイオンスあたり1772ドルで終えていました。
火曜日金相場は長期金利が下げてドルが弱含む中で、トロイオンスあたり1777ドルと前週終値の水準へと上昇していました。
これは、同日米株価指数は世界のCovid-19の感染者数が増加傾向になる中、史上最高値圏であったことからも利益確定の売りなどで全般下げて、リスクオフ基調となっていたことが金をサポートしていました。
水曜日金相場は長期金利が前日の5週ぶりの低さ、そしてドルが7週ぶりの低さを維持する中で、一時トロイオンスあたり1797ドルとほぼ8週ぶりの高さへ前日終値比1.1%上昇していました。
これは、前日同様インド等のCovid-19感染拡大懸念のリスクオフによる米国債需要の高まり、また同日行われた米20年債入札が順調に終えたことも背景となりました。
木曜日金相場は、長期金利とドルが強含む中で、トロイオンスあたり1777ドルまで下げたものの、その後バイデン政権の増税計画が伝えられて株価が下げる中で、前半の下げ幅を多少取り戻して終えていました。
前半の下げは、前日8週ぶりの高さへ上昇したことからも、利益確定の売り、そして同日のECBの政策金利発表で、今後も金融政策に変更はないということが確認されたことで、相対的にドルが強含んでいたこと、そして同日発表の米新規失業保険申請件数が予想を下回ったことで再びインフレ観測が広がったことも要因となっていました。
その後ニューヨーク時間にバイデン政権が行うとされている増税案の詳細がメディアで伝えられ、キャピタルゲイン課税を20%から39.6%へと引き上げること、富裕層への増税等から株が売られてリスクオフ基調となり国債が買われて金利が下げたことからでした。
本日金相場は、ロンドン時間に前日の上げ基調を受け継いで上昇していましたが、再び長期金利が上昇したことで、トロイオンスあたり20ドル下げて多少戻し、ロンドン夕方に1777ドル前後を推移しています。
この背景は、本日発表された米国製造業及びサービス部門PMIが史上最高の上げ幅、そして新築住宅販売件数が2006年以来の高さと経済回復ペースの速さが意識されて、昨日同様にインフレ観測が広がり長期金利が上昇した模様です。
その他の市場のニュ―ス
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スイスからインドへの金の輸出が3月に85トンと2013年4月以来の高さとなっていたこと。2010年から2019年の月間平均は37トン。 -
中国中央銀行が金輸入割当量を緩和したことで、今月から来月に150トンの金が輸入されると予想されていること。ちなみに2020年は月平均10トン、2019年は75トン。 -
中国の金ETF保有量は3月に5.3トン増で72.4トンと史上最高を記録。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週13日に、長期金利とドルが弱含む中で、金を除く銀、プラチナム、パラジウム全ての貴金属で増加していたこと。
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コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、16%減で201トンと下げていたこと。そして、建玉は昨年9月末から100万枚を下回り、70万枚を11週下回っていること。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比16%増の4,4492トンと2週連続で増加して5週ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.82%増の13.9トンと5週連続の増加で9週ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比8%増で11.5トンと5週連続の増加でほぼ3ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2トン(0.2%)増で1022トンと14週ぶりの週間の上昇傾向。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで週間で1.85トン(0.37%)減で497トンで、5週連続の減少の傾向。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で130トン(0.73%)減で17,716トンと11週連続の減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週木曜日に貴金属価格が全般上昇する中で、67台へと銀割安解消へと下げた以外は、ほぼ68台を維持していたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、今週の平均は8.75と先週の8.15から上昇していたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、木曜日までに金と銀で前週を上回っていたものの、プラチナは減少していたこと。また、銀を除き金とプラチナの平均は未だ前月平均を大きく下回っていること。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週はインドやブラジルのCovid-19の感染拡大もあり、リスクオフ基調からも長期金利が下げたことで、金は上昇していましたが、来週も世界のCovid-19感染関連のニュースは重要であり、引き続き長期金利の動きへ市場は注目することとなります。
また、本日ECBの政策金利発表は予定通り政策金利と資産購入プログラムが維持されて市場への大きな影響はありませんでしたが、来週は火曜日に日銀、水曜日にFOMCの政策金利発表が行われ、その後の記者会見は最も重要イベントとなります。
その他、来週は木曜日に米国の新規失業保険申請件数、第1四半期GDP、GDP個人消費、コアPCE、翌金曜日には米国の個人消費支出と消費者物価関連指標が発表され、今後のインフレを判断する上でも市場は注目することとなります。
また、今週の米国20年物国債入札は十分な需要があり長期金利を動かしませんでしたが、来週は月曜日と火曜日に2年、5年、7年物国債入札が予定され、この応礼比率も注目されます。
それでは、詳細については主要経済指標(2021年4月26日~30日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年4月19日~23日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年4月26日~30日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年4月19日)金はインドのコロナ感染者数急増の中でアジアの需要に支えられた7週ぶりの高さから下落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国は、英国の人々が愛してやまないサッカーの欧州スーパーリーグの創設に関して日々ほぼトップニュースとして大きく伝えられていました。
欧州スーパーリーグは、欧州サッカー界を代表する、英国の6つのクラブを含む12のクラブが当初参加するとして18日に発表されていました。
参加を表明していた英国のクラブは、アーセナル、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、トットナム、チェルシー、マンチェスター・シティー。
しかしこの発表に対し、英国の6つのクラブのサポーター、各クラブの著名選手とチームマネージャー、そして英国政府と各方面から非難され、更に国際サッカー連盟と欧州サッカー連盟は、欧州スーパーリーグに参加したクラブや選手は主催大会から除外すると警告していたことからも、発表から2日後の20日には、6つのクラブ全てが撤退することを発表していました。
問題となっていたのは、欧州スーパーリーグに当初参加を表明した創設クラブは降格がなく、不公正な競争になると考えられ、これらの現在実力のあるトップのクラブのみで利益を得るシステムであると見られたためのようです。
また、すでに行われているチャンピオンリーグ等と開催日程がぶつかる可能性があること。試合数が増えることによる選手への負担なども懸念されたようです。
英国の多くの人々は、何世代にも渡りサポートをするクラブがあり、このクラブと共に日々の生活があり、今回の発表は彼らにとっては自分のサポートするクラブの裏切りとも見えたようです。
撤退後にクラブの所有者はクラブサポーターの人々に陳謝していましたが、今回の一件では経営陣とサポーターの距離が明らかとなりました。
ちなみに、パンデミックで多くのクラブは経済的に打撃を受けているとのこと。そのような中で、欧州スーパーリーグに参加を表明したクラブの経営陣は何が知らの手段を見つけなければならなかったようですが、これらのクラブの株価は創設発表直後に上昇していたようです。
今回のイベントは経営陣とサポーターの距離を狭めるきっかけとなるのか、またサッカー業界がビジネス的にトップクラブに限らず草の根レベルから回復をすることができるのか等も、個人的には興味深いところです。