ニュースレター(2021年2月12日)プラチナが6年ぶりの高値を更新
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1814.73ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.65%高と2週ぶりの週間の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり27.09ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から2.11%高と上昇しています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1224.62ドルと前週LBMA価格から9.25%高で、今週の6年ぶりの高さの1273ドルからは下げていますが、週間としては2週連続の上昇となっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週はプラチナが6年ぶりの高値を付ける等大きな動きをすることとなりました。これは、プラチナの最大産出国の南アフリカの電力不足による供給不足観測が広がったこと、また一部新型コロナウィルスの南アフリカ変異種に対して、アストラゼネカとオックスフォードのワクチンの効果が小規模な治験結果で疑問視されて、南アフリカ政府がこのワクチンの接種を見送ったことも要因と伝えられています。この間中国の経済回復からもプラチナの工業用途の主である排ガス浄化触媒とバイデン政権が強く打ち出すグリーンエネルギーへの需要増加観測も広がっていることが要因とも見られています。
この間金は、バイデン政権の追加経済対策とFRBのハト派的スタンスでリフレーションと低金利長期化の期待からも上昇はしているものの、株価は史上最高値の更新を続けており、ドルと長期金利が高止まりしていることからも頭を抑えられているようです。
銀は先々週後半のレディットのユーザによる投稿で付けたトロイオンスあたり29.99ドルからは8.9%下げているものの、投稿前の水準からは8%高い水準となっています。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日は先週金曜日の雇用統計の悪化、米議会両院でバイデン大統領の追加経済対策を含む予算決議案を可決し、週末イエレン財務長官が労働市場を改善するために1.9兆ドルの追加経済対策を通す必要性を唱えたことで、リフレーション観測が急激に高まり、インフレヘッジの金を大きく押し上げていました。
火曜日金相場は前日の基調を受け継いでトロイオンスあたり1848ドルまで上昇したものの、上げ幅を多少失い1836ドルで終えていました。
この間ドルインデックスは2ヶ月ぶりの高さから多少ながら下げ、長期金利も引き続き高止まりではあるものの、多少下げていました。また、株価はダウ平均が6営業日連続で上昇後昨日史上最高値を付けたことからも、利益確定で反落していました。
前日はテスラの米証券取引委員会へ提出した資料で、ビットコインや地金や金ETFを投資対象としたことが明らかとなり、ビットコインは前日比15%高となり、同日は金も多少影響を受けていたようです。
水曜日金相場は長期金利が2営業日ぶりに下げ、ドルインデックスも多少ながら下げる中で、一週間ぶりの高さでトロイオンスあたり1855を一時付けていました。
これは、同日発表された米国消費者物価指数が市場予想を下回り、インフレ圧力が弱く、短期的な経済回復は鈍いことと米金融緩和の長期化観測で、長期金利が下げたことからでした。
この背景は前日下げていた米長期金利が上昇に転じていることが要因でしたが、同日は米新規失業保険申請件数が前週より減少していたものの、予想より悪化していた事で、金融緩和の長期化、追加経済政策が成立しやすくなったという見方がインフレ及び大量国債発行観測となったことからでした。
なお、前日のパウエル議長の発言でも、米労働市場について完全回復にはまだ程遠いとし、議会と民間部門の両方に対し労働者支援を呼び掛けるなど、ハト派的なものとなっていたことも、この観測をサポートすることとなりました。
本日金曜日は、一時トロイオンスあたり1810ドルまで下げたものの、前日終値の1824ドルへと戻し推移しています。
この背景は、昨日バイデン大統領がファイザー社及びモデルナ社からさらなる2億回分のワクチン供給契約を結んだことが伝えられてドルが4日ぶりに強含んだことからのようですが、本日発表のミシガン大学消費者態度指数は7ヶ月ぶりの低さへ下げていたことからも、ドルインデックスが反転し前日比弱含んでいることからのようです。
なお、昨日先物・オプション市場を運営するCMEがプラチナの証拠金を上げましたが、プラチナは前日終値で3%上昇しています。
その他の市場のニュ―ス
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今週英精錬大手のジョンソン・マッセイはプラチナの需給見通しを発表し、昨年Covid-19の影響で390,000オンスの供給不足で、今年の需給バランスは投資需要によるとし、過去2年間の高い水準から大きく下げた場合は供給過多へと転換する可能性があるとのこと。ちなみに、昨年は901,000オンスを記録。 -
コメックス及びNymex先物・オプション市場を運営するCMEが先週2日の銀に続き、プラチナの証拠金を今週11日に増加させたこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日2日までに(レディットユーザーが銀を標的にした後)の一週間に、全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、8.5%減の329トンと減少していたこと。建玉は19週連続で100万枚以下で、2019年5月以来の低さとなっていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比8.4%減の6,316トンと減少となっていたこと。しかし建玉は昨年9月以来の高さで、小口の報告不要のロングポジションが昨年8月以来の高さとなっていたこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比7.15%減の14.7ンと8週間連続で減少し、昨年11月17日週以来の低さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比57.6%減で3.5トンと4週連続の下げで昨年6月23日の週以来の低さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で14.3トン(1.2%)減で1142トンと5週連続の下げの傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で0.23トン(0.04%)減で525トンと、4週連続の減少傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週は週間で751トン(3.7%)減で19,613トンと3週ぶりの減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週67台後半で推移し、本日前半まで多少減少していること。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は今週ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)となり、木曜日から一週間の春節の休暇に入る前の3日間の平均は8.54ドルと、2019年9月以来の高さとなっていたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、プラチナ価格が6年ぶりの高さへ上昇する中で前週比37%増加し、1月の平均を上回っていたのに対し、金と銀はそれぞれ28%と51%減少し、1月の平均より下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は、中国は17日まで春節の休暇で休場となりますが、主要指標としては、水曜日のFOMC議事録、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日の主要国の製造業及びサービス部門のPMI等となります。
また、引き続きバイデン政権の2月末成立を目指す追加経済対策の議会での進行状況、コロナ感染及びワクチン関連ニュースに市場は注目することとなります。
それでは、主要経済指標の詳細は主要経済指標(2021年2月15日~19日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週プラチナと銅価格が経済の回復観測で工業用途需要から上昇していることを伝える米主要経済サイトMarket Watchの記事で、弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでエィドリアンは、南アフリカの電力不足によるプラチナ産出懸念も要因となっていると述べ、これが今週トロイオンスあたり100ドルプラチナ価格に加えていると続けています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年2月8日~12日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年2月15日~19日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年2月8日)バイデン追加経済対策の早期成立期待で世界株価が史上最高値を付け、インフレ期待が高まる中で、金価格が上昇 -
【金投資家インデックス】金と銀の投資需要が記録を付け、1月として過去最大の需要を記録
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では来週月曜日から導入される入国制限について主要メディアがトップニュースで伝えています。
そして、先行きが見えない中で、航空やホテルなどの多くの旅行関連業界が強い不満を訴え、また運輸大臣の「夏休みの計画を立てるのは時期尚早」というコメントも大きく伝えられています。
そこで、簡単に来週月曜日に導入される新たな規則について説明してみましょう。
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全ての入国者はこれまで同様に10日間の自主隔離が必要ですが、その間に2日目と8日目にPCR検査を自己負担で受けることが新たに必要となります。この費用は120ポンド(17,500円)ほど。検査をしなかった場合の罰金はそれぞれ1回目1000ポンド、2回目は2000ポンド。 -
英国への渡航前に指定された検査を受けたことを証明する書類無く渡航した旅行者を受け入れた航空会社へ一人2000ポンドの罰金。 -
感染リスクが高い国からの入国者は、政府指定のホテルに10日間の隔離。その間の費用は一人1750ポンド(約24万5000円)。この規則に従わなかった場合、最大1万ポンド(約140万円)の罰金。感染リスクが高い国からの入国を偽った場合は最高10年の禁固刑。
このように、英国政府の入国者による、新型コロナウイルスの南アフリカ変異種や新たな変異種入国を防ぐ決意が感じられる内容となっています。
ただ、スコットランドは、3の感染リスクが高い国からの入国者に限らず、全ての国からの入国者を対象としていますので、スコットランド自治政府のスタージェン首相や野党労働党のスターマー党首は先の規則が甘いと強く批判をしています。
英国は、欧州では最多の10万人以上の新型コロナウィルス感染による死者を出しています。これに対して、メディアや野党はジョンソン政権による国境封鎖や都市封鎖が後手後手となっていたことが要因ではないかとも批判しています。
しかし、ワクチン接種に関しては世界で3番目に早いペースでジョンソン政権を進めており、英国は、このワクチンの効果が疑われる可能性のある変異種をどのようなことをしても防ぐ必要があるということなのでしょう。
個人的にも今回の措置は止む終えないだろうと思いますが、すでに昨年末に延期した日本への一時帰国はしばらくは叶うことないと考えなければならないようです。