金市場ニュース

ニュースレター(2021年11月5日)FOMC、米雇用統計等の重要イベントを終えて、金は1800ドルを超えて上昇

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1802ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.86%高となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.83ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.75%安とLBMA価格ベースで2週連続の下げとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1031ドルと2.23%高と週間の上げとなっています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週貴金属市場は、米ADP全国雇用者数、FOMC、イングランド銀行、米雇用統計と重要イベントをこなす中で、前週末比においては金、銀、プラチナ全てにおいて上昇で終える方向となっています。

米雇用状況を示すADP全国雇用者数と雇用統計はともに予想を上回り、FOMCは予想通り量的緩和縮小開始を発表し、イングランド銀行は予想されていた利上げを行いませんでした。

本来良好な雇用データは金融政策緩和から引き締めへと移行する観測を高めますが、パウエルFRB議長が引き続き利上げは話すべき時期ではないとしたこと、イングランド銀行も利上げは近いとしながらも過去最低の政策金利を維持したこと、欧州中央銀行のラガルド総裁も利上げについてはハト派的コメントを昨日発し、それに加え、本日の雇用統計でもインフレにつながる賃上げ圧力があること、また主要中央銀行が継続近い将来インフレは正常化するとしているものの、当初より長期化する可能性があることを認めたことが貴金属価格をサポートすることなりました。

下記に、金と米国の平均時給の前年同月比の推移のチャートを添付します。ここで、今年4月に0.3%と下げた後に急激に上昇していることが見られます。

金価格と米国平均時給の前年比の推移 出典元 セントルイス連銀

なお、今週銀は金銀比価が火曜日に一時76へと2週間ぶりの高さへ上昇していました。これは、今週の中国の経済指標は景気回復ペースの遅れが見られていることからも、前週火曜日のコメックス先物・オプションのネットロングポジションは49%増加していたことからも、このポジション整理の動きや、銀の最大銘柄ETFのiShareシルバーも残高を減少させているなど、センチメントが多少悪化していたことが背景のようです。

それに対しプラチナ価格は、月曜日4%高と上昇するなど、他の貴金属を上回る上げを見せていました。この背景は、プラチナは、金や銀のようにインフレヘッジの役割と見られていないものの、パラジウムの代替や水素エネルギーの需要への期待などはプラチナのプラス要因となっておりサポートが入っていた模様です。

日々の金相場の動きと背景について

月曜日金相場は、今週水曜日のFOMC後の発表を待つ中で、緩やかに上昇してトロイオンスあたり1791ドルで終えていました。

この間、欧米株価は史上最高値の更新を続け、ドルインデックスはほぼ3週ぶりの高値、米長期金利は前週金曜日に上昇した水準を維持していました。

本来、ドル高、金利高、株高は金にとってネガティブですが、それにも関わらず堅固な動きとなっていたのは、インフレ懸念や前週金曜日の行き過ぎた下げの調整も背景になっていたようです。

火曜日金相場は、翌日の明日のFOMCの結果を待つ中でトロイオンスあたり1790ドルを挟み10ドルほどの狭いレンジの動きで、1786ドルと多少下げて終えていました。

同日は、ドルがロンドン時間午後に上昇したことで金は押し下げられていました。これは、同日豪州中銀が、景気回復とインフレ高からも、債券利回りを低水準で維持する目標を廃止し、早期の利上げへの道を開いたことで、政策金利と資産購入ペースは維持したものの、豪ドルが対ドル下げて、相対的にドルが上昇したことからでした。

水曜日金相場はロンドン午後にトロイオンスあたり20ドルほど下げて1764ドル前後を推移していました。

この昼過ぎの動きは同日発表された米雇用統計の先行指標と見られているADP全国雇用者数が、予想の40万人、前回修正値の52.3万人を上回る57万人で3ヶ月ぶりの高さとなり、早期利上げ観測からもドルが強含んだことが背景となりました。

その後、FOMCの結果が発表され、資産購入月額150億ドル減を11月に開始されることが発表されましたが、すでに予想されていたものでもあり、この発表後にトロイオンス5ドルほど前後したものの、ほぼ発表前の水準へ戻し影響は限定的となっていました。

そして、FOMC後のパウエルFRB議長の記者会見では、インフレについては「供給制約が想定より大きく、長く続いている。2022年にかけて続く」と指摘したものの、「いまはテーパリングのときであり、利上げのときではない」としたことからも、インフレの長期化、近い将来の利上げは無いという観測にサポートされて、金はトロイオンスあたり1776ドルへと上昇して終えていました。

木曜日金相場は、前日のパウエルFRB議長の記者会見後の上昇基調を受け継ぐ中で、イングランド銀行の金融政策発表後大きく上げて、一時トロイオンスあたり1798ドルと付け、1791ドルで終えていました。

イングランド銀行は、近い将来の利上げを示唆したものの、過去最低の金利の0.1%を維持したことで、ポンドが対ドル4週間ぶりの低さへ弱含みドルインデックスは上昇していましたが、米長期金利が下げたことに金は反応することとなりました。

しかし、世界株価は引き続き史上最高値を更新する勢いであり、心理的節目の1800ドルはレジスタンスとなっていました。

本日金曜日金相場は、市場注目の米雇用統計後に一旦トロイオンスあたり1785ドルまで下げたものの、その後上昇に転じ、ロンドン夕方に1800ドルを超えたことでさらなる買いを呼び、1814ドルへと上昇しています。

発表された米雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想の42.5万人を上回る53.1万人で前回数値も19.4万人から31.2万人へと上方修正され、失業率も4.6%と前回の4.8%と予想の4.7%から改善されていました。また、インフレへの圧力ともなるために市場注目の平均時給も前年比予想の4.8%と前回の4.6%を上回る4.9%と上回っていました。

そこで、雇用者数や失業率以上に賃上げ圧力のインフレ懸念が金相場を押し上げる事となった模様です。

また、パウエル議長の近い将来利上げはないというコメントに加え、ラガルドECB総裁もまた同様の発言を昨日しており、良好な雇用統計でも利上げなしという観測で、欧米長期金利はほぼ一月ぶりの低さへ下げていることも金のサーポートとなっているようです。

リアルタイム金価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、世界株価が史上最高値を更新するなどリスクオン基調の際に、金、銀、プラチナでネットロングポジションが増加し、パラジウムはネットショートを増加させていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、46%増の315トンと、8月3日以来の高さへ増加していたこと。建玉は4週連続で増加していたこと。
  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比49%増の4,358トンと5週連続で7月13日以来の高さへ増加していたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、16%増で11トンと、10週連続でネットショート後3週連続でネットロングを増加させて、6月15日以来の大きさとなっていたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは7週連続のネットショートで17%増の8トンと、2006年6月にレポートが発表されて以来の最大規模となっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で6.7トン(0.7%)減で975トンと、2020年4月2日以来の低さで、週間としては先週5週ぶりに増加後に再び減少傾向となっていること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、週間で1.26トン(0.25%)の増加で、5週ぶりに週間の増加の傾向となっていること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で60.30トン(0.35%)減で16,945トンと、週間で減少傾向となっていること。
  • 金銀比価は、前週の74台から75台へと上昇して推移していること。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消:過去5年の平均は80、過去10年は72。)
  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週730台まで下げた後に本日は760台へと上昇して推移していること。
  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対し、プレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、週平均は5.12と前週の2.83から上昇していたこと。
  • コメックスの金、銀、プラチナの先物・オプションの取引量は、今週ADP全国雇用者数とFOMC後に価格が動いたことからも、木曜日まで金と銀は前月平均を上回っていたこと。それに対し、プラチナは前月平均を下回る水準での取引量となっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFOMC、イングランド銀行、米雇用統計とイベントが続いていましたが、来週は米国の消費者物価指数が水曜日に発表され、FRBが一過性と唱え続けている30年来の高さのインフレ率がどのような水準となるのか、今後の金融政策も絡み市場は注目することとなります。

その他の指標としては、火曜日の米国卸売物価指数、水曜日の中国とドイツの消費者物価指数、米国新規失業保険申請件数、金曜日の米国ミシガン大学消費者態度指数等となります。

詳細は主要経済指標(2021年11月8日~14日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

米主要経済サイトのMarketWatchの本日の金の動きをまとめた記事で、弊社リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

ここで、エィドリアンは「FEDはパンデミックの追加量的緩和縮小の可能性を4ヶ月近く明確に示唆をしてきた。そのために、他の資産へ投資をしている投資家同様に、金のトレーダーは十分な準備期間が与えられていた。」とし、「量的緩和縮小の可能性を示唆したコメントは金の向かい風となっていたが、その開始となる11月が近づくに連れて、金を売却する急激な動きは無くなっていった。」と述べています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国ではグラスゴーで行われている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)について大きく伝えられていましたので、その関連ニュースで伝えられていた印象に残る言葉を中心にリストアップしてお伝えしましょう。

  • COP26首脳級会合の開会式でジョンソン首相は「世界の終わりを告げる時計の午前0時まであと1分しかなく、私たちは今すぐ行動しなければならない」と述べたこと。これは、COP26直前に行われていたG20で、産業革命前からの気温上昇を1.5度までにとどめるよう努力することで合意したもののの温室ガス排出を実質ゼロとする時期をめぐり意見集約が難航したことを受けたコメント。 
  • 1日夜のCOP26の首脳級会合の歓迎会で体調不良で出席できなかったエリザベス女王のビデオメッセージが放映されたこと。ここで女王は、私達の子供達、そしてその子供達のために、「目先の政治を超えて、真の指導者とし力量を発揮してほしい。」と述べていたこと。
  • 2日に首脳会議を終了時にジョンソン首相が 「各国の指導者たちはCOP会場を去ったかもしれないが、世界の人々の目があなた方(各国の交渉担当者)に向けられている」と強調。継続する温暖化対策の議論をさらに進展させるよう呼び掛けたこと。
  • そして、同日の記者会見でジョンソン首相は「サッカーの試合だとすれば、人類は気候変動に2対5で負けている」と述べて改めて警鐘を鳴らしていたこと。ちなみに、COPS26直前のG20 のローマへ向かう飛行機の中では、「人類は1対5で負けていると思った」と述べていたとのこと。
  • スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(18)は本日グラスゴーで数千人の若者達とデモを行い、「COPはPRイベントに成り下がった。」と述べ、「リーダーたちは何もしていないのではなく、自分たちに有利になるように、そしてこの破壊的なシステムから利益を得続けるために、積極的に抜け道を作り、枠組みを形成している。」とコメントしていたこと。

COP26は11月12日まで各国の交渉担当者によって継続行われます。首脳会合では森林破壊の阻止や温暖化ガスのメタンの排出量削減などで合意し、気候変動で最も大きな痛手を受けている途上国に対する先進国の資金支援などでも進展がみられたと伝えられています。

しかし、2015年のパリ協定で合意した「産業革命前からの気温上昇を2度までにとどめる」から一歩進んで1.5度に抑えることを2050年までに達成することをこの会議で目指しているものの、各国の事情からも難しそうです。

ジョンソン首相が例えに沿って、これからの協議が延長戦だとしたら、ここで同点まではいかなくとも、少なくとも追加の点を入れることができるのか、これからの一週間の交渉担当者の協議を見守ろうと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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