ニュースレター(2020年10月23日)ドル安で上げた金価格は長期金利上昇で下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1903.29ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.09%安とほぼ先週の水準を維持しています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり24.78ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から1.72%上げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では914.62ドルと前週金曜日のLBMA価格から5.13%上昇しています。
今週金相場は週半ばまで前週同様にドルの動きに反応して動いていましたが、本日はドルが前日比多少下げる中で、米国債利回りが0.86%と今年6月以来の高さに上昇していることで押し下げられているようです。
この背景は、米大統領線でバイデン前副大統領が勝利する観測が広がる中で、民主党が支持する大型の追加経済対策の実施、トランプ大統領再選でもかなり大型の追加経済対策の実施はあるということで、国債の需給面のバランスの変化が意識されたとも分析されています。
なお、バイデン前副大統領はグリーンエネルギーを支持していますので、太陽光熱発電で多く使われる銀にとってはバイデン氏勝利はポジティブなものとなります。
金は金利を産まない投資商品ですので、金利が上昇することは金にとってはネガティブなものとなります。しかし、インフレを考慮した実質金利は3ヶ月ぶりの低いマイナス数値ではありますが、未だ-0.89%となっていますので、金のサポートではあります。
ちなみに、今年7月に数十年ぶりにこの水準まで下げた際は、金価格はトロイオンスあたり1900ドル前後を推移していました。参考までにインフレ考慮後の米国債10年物利回りと金価格の推移のチャートを下記に添付しますが、明らかに直近では実質金利と金価格が負の相関関係であることがご覧いただけます。
それでは、今週の木曜日までの市場の動きを日々のイベントと共に簡単にまとめてみましょう。
月曜日はペロシ下院議長の米国追加経済対策の早期合意の可能性というコメントでドルが下げて金が上昇する中で、上院共和党重鎮のマコーネル議員の動きなどからも共和党が過半数を占める上院での可決が困難との観測からもその上げ幅を失うこととなりました。
火曜日は追加経済対策の合意観測が再び広がり、それに加え米モデルナ社の新型コロナウィルスワクチンの臨床試験で良好な結果が出れば米政府が12月に緊急使用を認める可能性があると伝えられ、ドルが弱含むことで金が再び押し上げられていました。
水曜日は、ドルが一月ぶりの低さへ下げる中で、一週間ぶりの高さのトロイオンスあたり1931ドルまで一時上昇していました。
これは、米追加経済対策の合意観測とともに、英国とEU離脱のための貿易協定協議中のバルニエEU首席交渉官が合意が近いと述べたことが伝えられ、ポンドとユーロが強含むことでドルが押し下げられたことも、金をサポートすることとなりました。
木曜日は、先に述べた米長期金利が上昇することで、金が押し下げられることとなりました。また、同日発表の新規失業保険申請件数が予想より改善していたこともドルを強含めて金を押し下げた模様です。
ちなみに、今週EUと英国の貿易協議合意の観測でポンドとユーロが対ドル上昇していることで、ポンド建てとユーロ建て金相場はドル建て金相場より押し下げられており、LBMA価格ベースでそれぞれ1.15%安のトロイオンスあたり1458.50ポンドと0.89%安の1609.83ユーロを付けています。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週13日にトランプ大統領が米追加経済対策の与野党協議の合意観測が後退しドル高から価格が下げる中で、パラジウムを除き全ての貴金属で減少していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比8.54%減の373トンと減少していたこと。これは、ロングポジションが1%減少する中、ショートポジションが21%増加していたことから。また、建玉は3週連続で100万枚を割っていたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比3.2%減の5361トンと2週連続の減少で、8月18日以来の低さとなっていたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットショートポジションは、前週比15%増で1.24トンと3週連続でネットショートを増加させ、引き続き2019年7月16日以来のネットショートの規模となっていたこと。
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コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比15%増で12.34トンと2週間ぶりの増加となっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で7トン(0.6%)減で1265トンと週間の減少傾向であること。そこで、8月の史上最高値以来の12週間で7週の週間の下げとなる傾向。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.87トン(0.36%)増で526トンと5週連続の上昇傾向で、引き続き3月の金価格急落以来一度も週間の下げを記録していないこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週72.34トン(0.42%)減で17,455トンと週間の下げの傾向で、8月の7年ぶりの高値以来12週間で8度めの週間の下げの傾向であること。 -
金銀比価は、今週76から77台を推移していたこと。これは、引き続き8月と9月上旬の70台前半よりは銀割安傾向。 -
上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は29.62と今年7月半ば以来の低さであったこと。これは人民元が対ドル今週19ヶ月ぶりの強さであることも背景。 -
コメックスの金取引量は、今週平均量で前週比1%減少とほぼ横ばいで、今年6月半ば以来の低い水準をほぼ維持していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
この数週間金相場はドルの動きに影響を受けていますが、これを動かすイベントが米追加経済対策となっています。米大統領選前に合意に至る観測は後退しつつありますが、規模的にもこの経済刺激策が成立する観測はドル安、金高となりますので、関連ニュースが注目されることとなります。
また、昨晩(ロンドン時間金曜日早朝)に米大統領候補のTV討論会が行われ市場が注目されていましたが、結局市場を大きく動かすものとはなりませんでした。しかし、11月3日へ迫った大統領選、議会選の結果を動かすニュースがあれば、市場を動かす可能性があるかもしれません。
なお、Covid-19関連のニュース、第2波の経済への影響、ワクチン開発関連は今週ブラジルのアストラゼネカのワクチン治験参加者が死亡したニュースが市場を動かしましたが、今後も動かす可能性がありますので重要となります。
来週の経済指標関連では、日銀とECBが金融政策発表を木曜日に行い、この内容と総裁発言は重要となります。その他、日々の指標予定は主要経済指標(2020年10月26日~30日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年10月19日~23日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年10月26日~30日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2020年10月19日)Brexit協議の楽観論でポンドが強含み、米刺激策合意観測のドル安で金価格上昇 -
2020年の現物金地金の購入が11年ぶりの低さの25%減となる
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。
ロンドン便り
今週も英国は国内のCovid-19の感染の広がりとそれに対する感染率の高い地域への制限強化がトップニュースで伝えられています。
そのような中で、本日はBBC等の主要メディアが認知症の作曲家で元音楽教師のポール・ハーベイ(Paul Harvey)氏について伝えていましたので、このニュースについてご紹介しましょう。
ハーベイ氏は今年80歳の男性で、昨年初めに認知症と診断されたとのことです。そして、現在は介護をしてくださる方が一日に何度か来てくれているようですが、認知症の患者の方は一日のうちでも意識がはっきりしている時と、混乱している時など変動することがあるように、ハーベイ氏もこのような日々のようです。そのような中、ハーベイ氏が多少混乱している時は、ピアノの前に座ってもらうと、ピアノを引くことで意識がはっきりすることがあるために、息子のニック・ハーベイ氏は介護の方にそのように対応するようにお願いされているとのことです。
そして、先月ハーベイ氏が多少混乱していた際に、息子のニックさんがピアノの前にに座ってもらい、彼が子供の頃からお父様が行っていた即興で与えられた4つの音名(例えばド、レ、ミ、ファ)で作曲することを提案したところ、ピアノでまたたく間に曲を作ったことから、この様子を撮影したビデオをツィッターで紹介したところ、大きな反響を呼び、更に心温まるポジティブな波紋が広がっているというニュースでした。
まず、このツィッターのビデオは既に162万回表示されているようですが、その後BBCフィルハモーニックオーケストラがハーベイ氏の曲を元にオーケストラ版を作り、ハーベイ氏のピアノ演奏共に今週日曜日に発表されることとなったとのこと。
そして、この演奏による収益は認知症のチャリティー団体へ寄付されるとのことです。
その後本日は、朝のBBCのニュースでハーベイ氏の教え子でテレビ番組の作曲家や著名ロックバンドのリードボーカルの方、そしてチャリティーでハンディキャップがある人々も含めた合唱団をまとめている人たちが、彼が教えてくれたことで今の彼らがあると彼へ感謝の言葉を伝えているところが紹介されていました。
これもまた、ソーシャルメディアとメディアのポジティブな影響力を示すものかもしれませんが、ハーベイ氏の教え子達と話をしている際の生き生きとした表情と、喜んでいらっしゃる姿から、暖かな気持ちを私もいただいたようで、良い一日のスタートとなりました。