2020年の現物金地金の購入が11年ぶりの低さの25%減となる
金のETF投資は急増し、アジアの宝飾品需要はCovid-19の不況と金価格の急騰で激減しています。
2020年のディワリ(インドの光のフェスティバル)は、専門家の推計によると、2019年から金購入の需要が25%減少することになり、今年の消費者の総購入額は2009年以来の最低に減少し、Covid-19の流行と社会的規制が消費者の所得と支出に大きく影響していますが、貴金属投資は急増しています。
消費者による金需要の世界的な大幅な減少量は、今年の金地金価格の高騰によって悪化し、過去最高の水準に達したと、貴金属専門コンサルタント会社の Metals Focus社は述べています。そして、今年の宝飾品、金貨と小規模な金地金、工業用用途、中央銀行の金需要総量は3000トンと過去10年の平均に30%劣るものと予想しています。
今年の金地金価格の20%の上昇は、 金を裏付けとするETFへの記録的な資金流入に起因しており、これらのETFは、投資家の需要を満たすために年初から既に1,000トンを超える残高の増加を記録しています。
これは、第2次世界対戦以降初めての世界的な金融危機が起きた際の2009年の金ETF残高増加量の650トンを上回るものです。
その年の世界のGDPは1.8%減少しました。最新の予測では、今年は4.5%(9月の OECD予想)から5.2%(6月の 世界銀行予想)の間へ下げると見られており、来年は4.2%から5.7%の間で回復すると予測されています。
2010年~2021年の金ETFを除く世界の金需要 出典元: Metals Focus
インドの金地金ディーラーの需要は、来月のヒンドゥー教の重要な祝祭シーズンであるディワリ(かつては世界最大の金購入イベントであったが、現在は旧正月に追い越されている)を前に、「徐々に改善し始めている」とし、それは「この祝祭シーズンに金購入が 再び始まるだろう」とムンバイのRiddiSiddhi BullionsのMukesh Kothari氏は述べています。
しかし、8月の金の輸入量が急増したにもかかわらず、2013年以降、中国に押されて金消費国の中で第2位となったインドへの輸入量は、Covid-19危機の最中であった過去6カ月間は、昨年の4~9月と比較して57%も減少しており、記録的な高値が雇用の喪失、所得の減少、経済の不確実性とともに需要を圧迫しています。
中国の卸売の金需要は「 9月に改善し続けた」と金鉱会社のマーケティング団体のワールドゴールドカウンシルの中国のリサーチマネージャーのRay Jia氏は述べ、消費者のジュエリー購入は国慶節の休日の間当初予想よりも落ち込みが少なかった可能性があるとし、それは、外国旅行へのCovid-19による制限が国内観光のブームを引き起こしたことが公式データで明らかとなっており、ゴールデンウィーク中の総小売支出が 昨年10月のゴールデンウィークを4.9%上回っていたことからも考えられるとしています。
巨大な宝飾品メーカーで小売業を営むChow Tai Fook(HKG: 1929)によると、 7~9月期の年間売上高は中国本土で21.1%の伸びを示しましたが、香港とマカオでは51.6%の落ち込みを見せ、第3四半期の美容関連会社であるSa Sa(HKG:0178)がゴールデンウィーク中の中国内の売上が前年比38.7%増となったことと同様の動きとなっています。
中国の消費者の金需要は、Metals Focusのデータでは、2011年以来の最低値であった2019年上半期と比較して、 今年1~6月に48%減少しましたが、上海金取引所の卸売金地金は現在3月以来、途絶えること無くロンドンの金価格を 下回るディスカウントで取引されており、貴金属の世界最大産出、輸入、消費国である中国の自国内の需要を上回る供給過剰を強く示唆しています。
4月にはトロイオンスあたり20ドルという記録を付け、( 中国が金地金の輸出を禁止していることからも)トレーダーが金地金を世界市場に売ることができないことで、世界の金価格がトロイオンスあたり2000ドルを超える急騰を8月に見せた際には、上海黄金交易所のディスカウントは90ドルにまで上昇しました。
2020年の新年を前に、中国の金地金の基準価格はロンドンよりも平均でトロイオンスあたり9ドルのプレミアムを付けて、新規輸入の動機づけとなっていました。週平均では、今年の歴史的なディスカウントは半減し、世界の金価格は8月のピーク時から6%下落していますが、これは、今春の12年来の安値から元高が進み、対米ドルで19カ月ぶりの高値を記録したことによります。
インドの金地金の卸売価格は、12.5%の輸入関税と3%の売上税が課される前に、10月に入って上昇し、世界の相場と比べて1オンスあたり1~2ドルのプレミアムとなっています。。これは、ワールドゴールドカウンシルがまとめ、公表しているデータによると、 過去60ヶ月のうち4ヶ月を除いてインドの金地金価格がロンドン価格よりも割安になっていたことが明らかとなっています。
今週のナヴラートリ祭り (ヒンドゥー教の祭りの始まりで、Dussehra、Dhanterasとその後2020年は11月14日のディワリで最高潮に達する)では、宝飾業界大手のTanishqが インド全土でテレビコマーシャルを展開し、ヒンドゥー教徒のコメンテーターやソーシャルメディアのユーザーがヒンドゥー教徒の花嫁が彼女のイスラム教徒の義理の母から金のネックレスを受け取る映像を流すことにより、 「愛の聖戦」を促進することの会社を非難しています。
「今は白熱した時代です」と #BoycottTanishqキャンペーンのブランド戦略コンサルタントのHarish Bijoor氏は述べています。「消費者は、自分が貫くべき主張を探し、それを擁護し、必要であればそのために攻撃することに積極的です。」
デカン・ヘラルド紙によると、インドの金・銀需要の急落は、地金の輸入を激減させて、前年の4月から9月までで889億ドルであった貿易赤字を235億ドル以下へと下げて、「 国の貿易赤字の縮小に貢献している」と述べています。
ロイター通信社は、「9月の金の流れは東から西への流れが主でした」と述べ、 スイスの貿易データを検証し、スイスの精錬所が集まる地域が先月、「記録的な量の金塊を香港から輸入した」と報じています。この香港では 中国本土からの金塊の密輸が増加していると警察が伝えています。
Metals Focusは、2021年には世界経済の回復が見込まれており、宝飾品の需要は今年の落ち込みの一部を回復すると予想していますが、価格は過去最高記録を更新し続けており、来年は全体としてトロイおオンスあたり平均2000ドル以上になると予想しています。