金市場ニュース

ニュースレター(2019年8月16日)世界の景気後退懸念の広がりで金は再び1500ドル台へ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1515.39ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2%上げ、今年の金曜日のLBMA価格のPM価格の最高値を更新しています。それに対し銀価格においては、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり17.16ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.9%の上げで、再び今年一番のLBMA金曜日価格となっています。なお、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では839.92ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.7%下げています。

今週はドイツや中国などの経済指標が悪化していたことや米中貿易戦争の長期化が懸念され、香港やアルゼンチンの地政学リスクも意識されて、金は再び1500ドルへと乗せて堅固な動きを見せることとなりました。それでは、日々の動きを追ってみましょう。

月曜日金相場は、米中貿易戦争の長期化と香港抗議デモの激化などを懸念材料として、再びトロイオンスあたり1500ドル台へと上昇していました。

同日は、前週金曜日のトランプ大統領の「(中国との)合意の準備はできていない」とのコメント等もあり、ゴールドマンサックスが米中合意が2020年の大統領選まで行われることは無いと予想していることが明らかとなり、米中貿易戦争の長期化懸念が広がっていました。

また、ロンドン午前中には香港当局が同日の航空便を欠航としたことも伝えられ、抗議デモの激化による経済への悪影響なども懸念材料となり金を押し上げることとなりました。

そして、週末発表されたアルゼンチン大統領選の予備選で現職大統領が予想に反して野党候補に首位を奪われ、再選が危ぶまれることとなり、アルゼンチンペソが暴落して過去最安値を付けていたことも、市場のセンチメントを冷やしていました。

火曜日はロンドン午後にトランプ政権が中国への関税第4弾の一部特定品目の発動を12月15日へと先送ると発表したことで、トロイオンスあたり25ドルほど下げた後に1501ドルへと戻して終えていました。

同日午前中は前日来激化している香港の抗議デモへの懸念やアルゼンチンペソの暴落、そしてドイツのZEW景況感調査が予想を大きく下回ったことで、金価格は1534ドルまで上昇していました。

しかしロンドン時間昼過ぎに発表された米国消費者物価指数が予想よりも多少ながら良かったことで、FRBによる利下げ観測が後退して下げ始めた頃に先の発表が行われ大きく下げることとなりました。

水曜日金相場は、再びトロイオンスあたり1523ドルまで上昇し、1516ドルで終えていました。

同日は、ロンドン時間午前中に発表されたドイツの第2四半期GDPが-0.1と予想を下回り、しかもマイナス数値であったことで、欧州最大の経済国の景気後退の懸念から欧州株が大きく下げていました。また、同日発表のユーロ圏の鉱工業生産も3年ぶりの低さへ下げていました。

更に、同日早朝に発表されていた中国の鉱工業生産は17年ぶりの低さで小売売上高も予想を下回っていたこと等から、世界経済の先行きへの懸念で英国と米国の2年物と10年物の国債利回りが2007年以来初めて逆転していたことで、この現象は近い将来の景気後退を示唆するとされていることからも、米国株も大きく下げるなどとリスクオフ傾向が強まっていました。

木曜日は発表された米国小売売上高が予想を上回ったことや小売り大手のウォールマートの決算が予想を上回ったことが好感され、そして前日の反発もあり上昇することとなりました。

しかし、同日は中国政府が米国の関税第4弾に対して「必要な対抗措置を取らざるを得ない」との声明を出したこと、またトランプ大統領も中国との合意は「米国の条件で」と述べたことも伝わったことで米中貿易戦争の長期化観測も広がり、金のサポートとなっていました。

また、欧州中央銀行は9月の次回政策委員会会合で「インパクトがあり、重要な意味を持つ」景気刺激策を打ち出す必要があると、政策委員会メンバーのレーン・フィンランド中銀総裁がWSJに語ったことが伝えられ、ユーロが下げ、米30年物国債利回りが2%を始めて割るなど、長短金利の逆転は継続しており国債利回りは全般下げていました。

本日金曜日は欧米株価が今週の下げ幅を削り、世界の主要国の債券利回りが多少ながら上昇する中で、トロイオンスあたり1514ドルと前日終値からは下げながらも、堅固な動きをしています。

その他の市場のニュ―ス


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに4.4トン増加し、844トンとなっていること。今週再び昨年5月末の水準となっていること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで4%増加し、再び史上最高値を記録していること。

  • 金銀比価は今週月曜日に88.75と今週の高値を付けた後、銀も上昇していることから、木曜日まで87台で推移していること。

  • 本日中国がドル流出を抑えるために、5月から金の輸入に制限をかけているとのロイターの独占記事が伝えられていたこと。

  • ブルームバーグによると、マイナス金利となっている世界の債券の規模が16兆ドルと、過去最高に達したとのこと。

  • 月曜日に週末発表されたアルゼンチン大統領選の予備選で現職大統領が予想に反して野党候補に首位を奪われ、再選が危ぶまれることとなり、アルゼンチンペソが暴落して過去最安値を付けたこと。

  • 先週末に発表されたコメックスデータによると、貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週火曜日に前日中国が人民元を対ドル7台へ下げることを容認して急落した株価が落ち着きを取り戻し反発する中で、金以外の全ての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。

  • コメックスの金先物・オプションの資金運用業者の建玉は、先週火曜日は100万枚を再び越え、史上最高値をつけていたこと。

  • コメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週23%増加し886トンと2016年7月5日以来の高さでこのレポート形式になった2006年6月以来2度目の高さとなっていたこと。

  • コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に8週連続でネットロングであったものの、24.2%減の7,704トンと3週間ぶりの低さであったこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3週連続でネットロングではあったものの、25%減で12トンとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションの資金運用者のネットロングポジションは123%減の34トンとなっていたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はドイツの第2四半期GDPがマイナスとなったこと、中国の鉱工業生産と小売売上高が予想を下回ったこと等で世界経済への懸念が高まりました。

そこで、来週もドイツ、ユーロ圏、中国、そして貿易戦争を推し進める米国の経済指標に市場は注目することとなります。

また、水曜日のFOMC議事録、そして世界の中央銀行総裁が一堂に会する木曜日と金曜日のジャクソンホール・シンポジウム、特に金曜日のパウエルFRB議長の演説は今後の金融政策について触れる可能性もあり重要となります。

その他個々のデータとしては、月曜日のユーロ圏の消費者物価指数、火曜日のドイツの生産者物価指数、水曜日の中古住宅販売件数、木曜日のドイツ、ユーロ圏、米国のMarkit製造業PMIと米国の新築住宅販売件数、金曜日の新築住宅販売件数等となります。

ブリオンボールトニュース   

欧州の主要経済サイトInvestmenteurope.netがブリオンボールトにおけるドイツからの顧客が急増していることを「ドイツの投資家が金へ向う」の記事で取り上げています。

ここで、弊社におけるドイツからの顧客が2019年に英国に次ぐ数へと急増しており、特にドイツ国債の10年物利回りが-0.59%へと8月9日に大きく下げている背景もあり、7月と8月に至っては全体の20%まで増加していることを紹介しています。

また、弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュのコメント「ユーロ圏の主要国で貯蓄すると投資家は金利を支払わなければならないというのは信じられないことだ。そのために、悪化する経済状況などからも金の安全資産という役割が魅力となり、弊社のように費用を押さえて安全に専門市場同様に認可されている保管場所で貯蔵するという金投資方法へと向かっているのだろう。また、ドイツの顧客は、国外で安全に特定保管(所有権を保有)で投資できることは魅力でもあるようだ。」を取り上げています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

また、今年に入り定期的に弊社リサーチダィレクターのエィドリアン・アッシュに代わり、弊社ディリーレポート(英文)をまとめていますので、先週からその翻訳版を下記のように市場分析ページに掲載しています。

ロンドン便り

今週は英国で環境問題関連のニュースがいくつか目に留まりましたので、それらのニュースをお届けしましょう。

まず今週水曜日に環境活動家として地球温暖化阻止を訴えるスウェーデンの16歳のグレタ・トゥーンべりさんが、ニューヨークで9月に開催される国連の寄稿サミットに出席するために、温室効果ガスを全く排出しないヨットで英国南西部のプリマス港を出港したことが伝えられていました。

トゥーンベリさんは、ご存知かと思いますが昨年9月に毎週金曜日に学校を休み、スウェーデン議会前で政府に温暖化対策を訴える抗議活動を開始し、「未来のための金曜日」という活動を世界各国にSNSを通して拡散し、今年3月15日には英国を含む135か国で200万人以上の学生がデモに参加していました。

ちなみに、二酸化炭素(CO2)排出を懸念するトゥーンベリさんは菜食主義であり、飛行機の利用をやめています。

そのようなニュースの中、昨日は環境問題についても活発に意見を発している英国王室のヘンリー王子とメーガン妃が第一子のアーチ王子と共に、プライベートジェットを使ってスペインのイビサ島へ休暇へ出ていたとのことで、環境問題の活動家を含め英国国民一部が非難していることをメディアが伝えています。

奇しくもメーガン妃は先月ファッション誌ヴォーグのゲストエディターとして、「変革をもたらす勢力」という企画をして、変革者として世界にポジティブな影響を与える総勢15人の女性を取り上げ、その一人が環境活動家のトゥーンベリさんでもあったのでした。

またもう一つのニュースは、英国では芸術関連で著名なロンドン大学ゴールドスミス校が、今週環境保護の取り組みの一環として、9月から始まる新年度から全ての牛肉を排除するほか、ペットボトル入りの水やプラスチック製カップに10ペンス(約13円)の追加料金を課すというものでした。ちなみに、牛肉の排除は生産過程で温室効果ガスを多く排出するすることが理由とのこと。

環境のために菜食主義となり飛行機に乗ることを一切行わないことは一般の人々にとっては難しいかとは思いますが、自身の行動で人々に環境問題を考えるきっかけを作っている若きトゥーンベリーさんの行動力に敬意を表したいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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