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【金投資家インデックス】価格急騰で利益確定の売却は記録的な水準となったものの、新規顧客は倍増

 
金価格が月末の最高値を更新したことで、第1四半期に1%の残高の流出となりました。
 
個人投資家が現物の金地金を所有し取引する世界最大のオンライン市場である ブリオンボールトにおいて、3月の銀行への懸念からも金投資を始める新たな個人投資家が急増し、新規顧客数が前月の2倍になったことが明らかとなりました。
 
金価格がドル、ユーロ、ポンド、円建てで月末の新記録をつけたことで、ブリオンボールトの新規口座開設は、 2月の45ヶ月ぶりの低水準から94.8%増、過去12ヶ月平均から41.3%増と、 2022年3月のロシアのウクライナ侵攻で急増して以来最も多くなっていました。
 
しかし、先月の金価格の高騰は、ブリオンボールトの既存の顧客の利益確定に拍車をかけ、1億3500万ドル相当(1億1200万ポンド、1億2600万ユーロ、182億円)の、顧客のために安全に保険がかけられて保管されている金地金が取引され、月間取引量は前月2月から123.9%(英国ポンド:122.8%、ユーロ:123.7%、円:125.6%)増と、昨年の3月以来、最大の取引量となりました。
 
この春の銀行不安が一過性のものであったかどうかは別として、金価格の底堅さは今後も続く傾向にあり、中央銀行の記録的な購入に新たな個人投資家の需要が加わる中で、アジアの宝飾消費者の堅調な需要が市場の底上げを行っています。
 
ブリオンボールトの既存顧客を含め、この3月は、10月以降で最も多くの人々が金現物投資を開始し、金保有量を増加させていました。
 
しかし、金価格が月末終値比でドル建てで8.5%(ポンド建てで6.3%、ユーロ建てで6.0%、円建てで5.5%)高と急騰し、トロイオンスあたり1979ドル(1598ポンド、1818ユーロ、gあたり8465円)とそれぞれ月末における史上最高値を記録しいたことからも、貴金属の売却を選択する人も過去最多となっていました。
 
そこで、買い手の増加と売り手の急増は、個人投資家の金地金現物へのセンチメントを測るブリオンボールト独自の指標である金投資家インデックスを2.6ポイント下げて51.9としていました。この指数は、その月の売り手の数と買い手の数が完全に一致した場合に50.0となり、2月までの12ヶ月間で平均54.5となっていました。
 
世界金融危機の真っただ中にあった2011年9月の71.7をピークに、 2020年3月のコロナ危機の価格暴落時には65.9を記録しています。
 
金投資家インデックスと月末金価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
新規に金を購入する投資家に話を聞くと、今は価格よりも所有権の確実性が重要であるようです。既存の金投資家にとっては、金地金は彼らの期待通りに機能しており、より広いポートフォリオからリスクを分散させ、他の投資資産での損失を相殺するという役目を提供しています。
 
その結果、投資家の金購入の需要は、先月2月の95.8%増とほぼ倍増し、売却量は141.3%増となり購入量を上回っていました。
 
その結果、ブリオンボールトの顧客が、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、トロント、チューリッヒから選択して保管されている金地金の総量は、0.4%減の47.6トンとなり、12月末の過去最高から0.5トン減、9ヶ月間で最小となり、今年の第1四半期で1.0%減となっていました。
 
これは、世界の多くの 中央銀行が保有する金準備高を上回り、 金を裏付けとする上場信託ファンドの世界の158のうち12を除く全てのファンドの残高量を上回り、その評価額においては、ブリオンボールトの月末の新記録となる30億ドル(24億ポンド、27億ユーロ、4140億円)相当となっていました。
 
一方、3月の 銀価格は、金よりもさらに速く急騰し、ドル建てで16.4%(ポンド建てで13.6%、ユーロ建てで13.5%、円建てで17.3%)上昇し、ロンドンの専門市場の世界基準価格でトロイオンスあたり23.89ドル(19.30ポンド、 21.97 ユーロ、gあたり102円)で終えていました。
 
ブリオンボールトの銀地金購入者数は、昨年7月以来最も多く、売却者数は12月以来最も多くなり、これは、銀価格が直近で大きく上昇した際となります。
 
その結果、銀投資家インデックスは2.0ポイント低下して52.4となり、12ヶ月前の平均値52.7と同じ水準となりました。
 
銀投資家インデックスは、売り手が買い手を上回ったため、昨年12月に47.5と過去最低を記録し、2020年3月には、エネルギーと工業製品価格の暴落の中で、ブリオンボールトの顧客が価格の急落を購入機会と捉えたために、75.1と過去最高を記録していました。
 
銀投資家インデックスと月末の銀価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
先月の価格の急騰にもかかわらず、2023年3月は、顧客の売却量を差し引いた重量ベースで、2021年6月以来最も多い銀の需要となり、16トン以上となっていました。
 
その結果、ロンドン、シンガポール、トロント、チューリッヒから顧客が選択した保管場所で貯蔵されている工業的に有用な銀の総量は1,263トンとなり、2023年の第1四半期に前四半期から0.9%増加し、9億7000万ドル(783万ポンド、892ユーロ、1320億円)相当となりましたが、10月末日の史上最高値よりも0.3%少ない量となっていました。
 
2023年第1四半期は、貴金属にとってまたもやジェットコースターのような展開となりました。銀は、2月に2020年秋以来の1ヶ月間の価格の急落を記録し、その後2020年12月以来の急反発を見せて急騰していました。
 
そこで先月3月末の段階で、2005年4月にサービスを開始したブリオンボールトでは、世界175カ国、10万人以上の顧客のために保管されている金、銀、プラチナ、パラジウムを含めた資産の評価額が、過去最高の40億ドル(33億ポンド、37億ユーロ、5590億円)相当となっていました。
 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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