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金投資:適度な投資量とは

この記事は弊社のリサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュ執筆のウィークリーレポート(英文)を基に作成されています。
 
あなたは、今日金地金を保有しすぎていますか?
 
この質問は、金地金現物の投資サービスを提供している会社としては奇妙な質問かもしれません。
 
しかし、金地金現物のオンライン市場を提供するブリオンボールトは、顧客が金を購入、売却、保有をするかしないに限らず、利益を得ています。
 
そして、長期的なビジネスを展開するうえで、ブリオンボールトは顧客が満足し、利益を得て、利用を続けることを望んでいます。
 
もちろん、個人的なポートフォリオについて、どれだけ(あるいはどれだけ)「持っておくべきか」というアドバイスはできませんし、するつもりもありません。しかし、私たちには共有すべき分析と考えがあります。
 
金の「投資保険」としての可能性については、 こちらをご覧ください。そして、参考までに、2023年夏にブリオンボールトの顧客を対象に行った調査では、 投資可能な資産の約20%を貴金属に投資していることが分かりました。
 
多すぎるか?少ないか?世界中の投資家は、現在、金地金を必要以上に保有している可能性があります。
 
世界のノンバンク投資家による金のインプライド・アロケーション: 世界のノンバンク投資家が保有する株式、債券、現金に占める、金貨、延べ棒、現物金ETF(または類似商品)を保有する中央銀行または個人投資家が投資目的で保有する金のストックの割合で示したチャート。
世界の株式、債券、現金の投資額に占める、金の投資比率のグラフ 出典元 J.P.モルガン
 
「投資家の金への配分は、歴史的な基準から見ると、現時点ではかなり高い。」と、米銀行・投資大手J.P.モルガンのストラテジスト、ニコラオス・パニギルツォグルー氏は述べています。
 
彼のチャートなしでは、この主張は馬鹿げているように聞こえることでしょう。
 
確かに、 中国の壁(証券取引による内部情報の悪用を防汚資することを目的とした方針及び手続のこと)などというものはあります。しかし、なぜ彼はこのメモを発表する前にJPモルガンの地金デスクの同僚に確認しなかったのでしょうか。
 
つまり、2023年に金貨と小口金の需要は、特に欧州で落ち込み、資金運用業者やプライベートバンカーが金投資から離れる中、コメックスの契約に対する投機的な取引は後退し、金を裏付けとする上場投資信託の規模はコロナ危機時の資金流入量を帳消しにする2020年3月以来最小に縮小しているのです。
 
だからこそ、投資家の金への配分を「歴史的な基準からするとむしろ高い」と呼ぶのは、今の状況に反しているように思えます。
 
先週出会った同業者が言ったように、"Tumbleweed(夏の終わりごろに枯れてちぎれて、風に吹かれながら他の枯れ草と密集して球状になりながら転がり続ける様子 "の方が近いかもしれません。
 
しかし、貴金属ディーラーのゴシップ等の外では、このチャートには一理あるかもしれません。
 
例えば、ブリオンボールトで初めて金地金を購入する人の数は、 2023年の夏以降減少している一方で、ブリオンボールトの顧客が保有する金地金の量は増加し続けています。
 
つまり、金価格の強さの中で、その保有資産の価値をも上昇させたということです。そこで、過去6ヶ月のうち5ヶ月が30億ドルを超えています。
 
これは、パニギルツォグルー氏のチャートのように評価額を見ると、2012年にブリオンボールトが保有していた金地金のほぼ2倍となっていることになります。
 
ブリオンボールト顧客の金地金の重量と評価額ベースの保有量のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
それでは、投資家の金地金保有量は最大となったのでしょうか?
 
別の言い方をすれば、今日の高値、そして新規投資家の流入の少なさは、市場が最終局面を迎えていることを示唆しているのでしょうか?
 
そして、2013年に金が明白に(そして痛々しく)急落したように、あるいは1980年代初頭の金マニアの頂点後のように、厄介な暴落の準備をしているのでしょうか?
 
それらの恐るべき弱気相場の後では、0%以上の金を保有することは、今にして思えば非常に悪い投資行動でした。
 
一方、今日、「投資家の金への配分は過去11年間で最も高い水準にある」とJPモルガンのストラテジスト、パニギルツォグルー氏のチャートは物語っています。
 
しかし、このチャートに付随する分析は、重要な問題を浮き彫りにしています。ここには、実際には3つの問題があります。
 
第一に、ストラテジストは特別な種類のアナリストであり、大胆な主張と、複雑な、点と点を結ぶような、神秘的とまでは言わないまでも、世界で起きていることすべてがどのように明らかになるかを予測し、見出しを作ることで報酬を得ています。
 
たとえば、10年前のソシエテ・ジェネラルのディラン・グライス氏や(現在は元)クレディ・スイスのストラテジスト、ゾルタン・ポスザール氏を思い浮かべてみてください。
 
一方、パニギルツォグルー氏は、顧客(そしてZeroHedgeの読者)に金を買うように勧めるのではなく、金に対する警告を続けるなら、ZeroHedgeのヒット数を増やすのに苦労するかもしれません。
 
しかし幸いなことに、彼は2022年春にビットコインが金に代わって世界の「代替通貨」となり、14万ドル以上で取引されるようになると予測したことで、フィナンシャル・タイムズ紙のブロガー・チームからすでに「現在活躍している、より興味深い投資ストラテジストの一人」と呼ばれています。
 
しかし、ビットコインは、25,000ドルで15%以上下落しています。
 
それはそれとして、彼の金投資のチャートは同様なモデルで表示されており、必ずしも現実的ではないかもしれません。
 
第二に、JPモルガンのストラテジストのチャートは、2010年後半以降の投資家のアロケーションの大きさしか示していません。
 
それ以前の比率はどうだったのでしょうか?2012年のピークは特筆すべき高値で、長期平均や最近のピークをはるかに上回っていたのでしょうか?
 
「私が80年代初頭に貴金属を始めた時、私は、個人顧客が資産の約3%を金の延べ棒とコインで保有すると理解していました。」と2010年にロンドン貴金属市場協会の年次総会で、ある貴金属取引の責任者は言っていました。
 
2010年9月にベルリンで開催された同じイベントで、「事実上、すべての米国の年金基金が資産の0.30%未満を金で保有している」と別の講演者は述べ、その比率はピークというよりも長期的な低水準であると呼んていました。
 
そして、同じ時期に、ブリオンボールトでは、金地金投資のレベルを歴史的な標準と比較することを試みました。
 
歴史上採掘された全ての金の総価値は、おそらく7.6兆ドル相当であったため、世界の投資可能な富の合計の入手可能な最善の推定値との対比を行いました。
 
その結果、わずか3.9%であり、1920年代の20%をはるかに超える数字とは対照的でした。
 
これは、現在とは確かに違う時代の評価です。
 
しかし、この配分は、昨年末までに実際に減少しており、これまでに採掘されたすべての金の最良推計と、2022年の世界の総資産の最良推計を比較すると、総資産は12兆ドルを超えているにもかかわらず、2.8%まで減少しています。
 
もちろん、すべての金が投資のために保有されていたわけではありません。金の宝飾品を購入することは、価値の保存と投資の動機も含んでいることが非常に多いということを認めなければ。
 
したがって、JPモルガンのストラテジーレポートが提起した疑問にとって、私たちの指標は、彼らが作成したチャートよりも重要ではないかもしれません。
 
そして、最後のポイントは、彼らが使っているデータには、一般的な「投資」の意味には当てはまらないタイプの「投資」も含まれています。なぜなら、JPモルガンのデータは中央銀行が果たす役割を特徴づけ、強調しているからです。
 
中央銀行の金準備の外貨準備高に占める割合 出典元 ブリオンボールト
 
パニギルツォグルー氏は、「中央銀行による金地金購入のペースが、金価格の将来的な軌跡を測るカギを握っていることは疑う余地がありません」と述べています。
 
その分析は真実かもしれません。私たちの市場内部のほとんどのアナリストやトレーダーは、ここ数ヶ月以上の間、それが価格にとって重要であったことに同意するでしょう。
 
しかし、中央銀行を金の「投資家」に含めることは、民間資本が貴金属に関して示してきた、より戦術的で素早い取引と中央銀行の動機や行動を混同させる危険があります。
 
(例えば、2013年春の金ETFからの資金流出と、1980年代後半から90年代にかけての欧米の中央銀行の保有金からのじわじわとした売却を対比するなど。)
 
そして、それはまた、世界金融危機のピークよりもさらに遡ることを正当化することになります。
 
そうすることで、上のチャートと同様に、中央銀行グループが21世紀に金購入の傾向を大きく変化したことがわかります。
 
金価格が数十年来の最安値を記録した2000年代に入ってから過去3年間の金価格のピーク(コロナの第一波、ロシアのウクライナ侵攻、今春の銀行株のミニ危機)以外では、それ以来の金準備の割合が大きくなっています。
 
JPモルガンの指摘は覚えておく価値があります。というのも、2023年のこれまでのところ、金への民間投資の流入は非常に弱くなっており、ETFにとってはマイナスになっているからです。
 
そのため、消費者は宝飾品需要で価格を支えることになり、金を買い入れる中央銀行が高値を維持するために介入しています。
 
では、9月初めのウィークリー・レポートでも述べたように、民間の投資需要が戻ったとき、金価格はどうなるのでしょうか

 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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