金価格ディリーレポート(2025年6月9日)脱ドル化が加速する中で金は3300ドルを維持、米国債入札に注目 2025年6月9日 月曜日 15:15 今週の米国債の大規模な売却を控え、債券市場で長期借入コストが再び上昇する中、金価格は、ドル建てで一時的にトロイオンスあたり3300ドルを割り込んだ後、その水準を取り戻して推移しています。 米国の財政赤字に対する懸念が深まる中、またトランプ大統領の移民強制捜査によるロサンゼルスでの暴力事件が悪化する中、投資家やトレーダーは木曜日に予定されている220億ドルの30年物国債の入札を、米国債に対する市場の需要の 重要なテストとして注目しています。 スイスの銀行UBSでG10諸国の為替戦略の責任者を務めるシャハブ・ジャリノス氏は、「米国債のリスクが高くなり、財政懸念や政策の不透明感から債券利回りが上昇する場合、同時にドル安が進む可能性がある」と指摘していました。 中国の中央銀行が土曜日に発表したデータによると、5月の金準備はわずか2トン増でしたが、7ヶ月連続での増加となっていました。中国の金の需要の実際の規模は過小評価されているとの見方もありますが、人民銀行が保有する金地金の総量は2,296トンとなり、世界第6位の金準備国となっています。 Metals Focusのマネージングディレクターであるフィリップ・ニューマン氏は、先週木曜日、貴金属専門コンサルタント会社の新しい Gold Focus2025を発表し、「ここ数年のドル離れを支えてきた要因は、依然としてしっかりと存在している。」と述べていました。 「史上最高値まで3割ほど上昇した2025年の金価格は、米国の政策を中心とした経済の不確実性と地政学的緊張の継続を背景に、依然として十分にサポートされている。」と続けていました。 Metals Focusは、金の上昇を支える構造的な要因が2025年まで続くと予想し、貴金属の年間平均価格を35%引き上げ、トロイオンスあたり3210ドルとし、6年連続で史上最高値を更新するとしています。 金現物価格は、前週金曜日の予想を上回る米雇用統計の結果を受けて 3週間ぶりのピーク3403ドルから90ドル下落した後、月曜日に0.3%上昇しトロイオンスあたり3321ドルに達していました。 日本貴金属マーケット協会の代表理事池水雄一氏は、「金が3300ドルを維持したことは、3400ドルを突破できなかったことよりも重要でしょう。」と述べていました。 「株式市場のリスクが先行している中、金が大きく下落することなく上昇を続けているということは、金、特に中央銀行の金に対する買い意欲が依然として強いことを示唆している。」と続けていました。 報告されていない公的機関の需要を含めると、世界の中央銀行は2025年に4年連続で1,000トンの金を購入する勢いであり、米ドル建て資産からの分散という広範な戦略を強化しているとMetals Focusは予測している。 トランプ大統領の「解放の日」貿易関税発表後の商品・金融市場の低迷の中、金は4月下旬に日中高値3500ドルをつけた後、年平均ベースで年初来26.8%上昇し、すでに3022ドルに達しています。 トランプ大統領は、5月12日に90日間の関税撤廃で合意した後、中国の副首相が経済協議のために英国を訪問するのに合わせ、今日、側近の3人がロンドンで中国当局者と会談すると発表しています。 また、銀価格は、トロイオンスあたり36.22ドルと0.9%上昇し、 13年ぶりの高値を更新していました。 化石燃料を使用する自動車の排ガス浄化触媒コンバーターに多用されるプラチナは、先週の9.0%の上昇に続き、2.8%上昇しトロイオンスあたり1201ドルと4年ぶりの高値をつけていました。 最終需要の80%以上が自動車触媒であるパラジウムは、2.4%上昇してトロイオンスあたり1075ドルとなっていました。 一方、英ポンド建てとユーロ建ての金は、為替市場で両通貨が米ドルに対して上昇したため、それぞれ0.1%安のトロイオンスあたり2443ポンドと2902ユーロと1週間ぶりの安値をつけていました。 米議会予算局や他の財政アナリストの試算によると、減税の延長、追加減税、社会支出の削減、連邦債務の上限引き上げを盛り込んだトランプ大統領の「One Big Beautiful Bill」は、今後10年間で米国の国家債務をさらに2.4兆ドル増加させると予測されています。