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金価格ディリーレポート(2025年5月12日)米中貿易戦争の停戦でS&P500種が急伸、金価格は3%下落

米国と中国が、90日間相互の輸入品への関税を引き下げることで「貿易戦争」を緩和することに合意したことを受け、金価格は先週金曜日価格の過去最高値から3%以上急落し、世界の株式市場が急伸したのとは対照的になっていました。
 
また、インドとパキスタンはカシミール地方をめぐる対立の停戦に合意し、クルド人分離主義組織PKKは解散すると発表し、トルコのBIST100株価指数は3.1%上昇していました。
 
これとは対照的に、金はアジア時間中にトロイオンスあたり100ドル以上下落し、ロンドンで決済された 金地金の週終値の過去最高値3324ドルから3.2%も下落していました。
 
そして、5月1日以来の最安値3208ドルを底に、米国株式市場が始まるまでに3240ドルまで上昇していました。
 
「中国と米国の緊張の緩和は、金のような安全資産への需要を減らしています。」とスイスの銀行のUBSのアナリストのGiovanni Staunovo氏は述べていました。
 
トランプ大統領の4月2日の「解放の日」の関税措置を受けて12.1%急落したニューヨークのS&P500指数は、先週木曜日までにすでにその下げを回復し、月曜日にはさらに2.7%上昇し、2025年の年初来の下げをほぼ帳消しにしていました。
 
米国債価格も、人気の高い長期国債のTLT ETFで追跡されるように、月曜日には年初来でほぼ横ばいで取引されていました。
 
一方、ニューヨークのコメックス金先物取引は、2025年の急騰幅を22.7%に縮小し、ロンドン金地金と同様、金曜の週間新記録の終値から下落していました。
 
コメックスの最も活発な先物取引のドル建て金価格、S&P 500種、TLT国債のETFのチャート 出典元 グーグルファイナンス
 
米中貿易戦争の停戦を受けて、アジア太平洋株式市場は上昇し、中国本土のCSI300指数が1.2%上昇していました。
 
一方、インドとパキスタンが、カシミール紛争地域をめぐるこの半世紀で最悪の戦闘の停戦に合意したことで、インドの株価は4%近く上昇し、パキスタンの株式市場は9%以上上昇していました。
 
フランスの銀行クレディ・アグリコルのG-10 FXリサーチ&ストラテジーの責任者、バレンタイン・マリノフ氏は、「今回の動きは、リスク関連資産や通貨にとっては好材料となり、円やスイスフラン、さらにはユーロのような安全資産通貨にとっては打撃となる可能性がある」と述べていました。
 
ドル指数(主要通貨に対する米国の通貨価値を示す指標)は月曜日、1.5%上昇して1ヶ月ぶりの高値となり、年初来の損失は6.2%に縮小していました、 
 
米国債10年物利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借入コストの基準金利であり、年率4.45%と2ベーシスポイント上昇し、この1ヵ月で最も高い金利となっていました。
 
CMEデリバティブ取引所のFEDWatchツールが追跡しているFRBの政策金利予想によると、米FRBが6月に翌日物金利を引き下げる確率は、わずか1カ月前には80%と見られていましたが、月曜日には10%を下回っていました。
 
上海黄金交易所(SGE)の金価格は本日、1gあたり766円と2.5%下落し、4週間ぶりの安値となっていましたが、ドル建てではロンドン相場を上回って取引を継続し、貴金属の第一の消費市場への新規地金輸入を促していました。
 
このSGEの金のプレミアムは、月曜日にトロイオンスあたり20ドルへと、12ヶ月ぶりの高値であった前週金曜日の50ドル以上から沈んだものの、一般的なレベルの2倍以上となっていました。
 
ユーロ建てロンドン金価格は1.8%下落し、一週間ぶりの安値2902ユーロとなり、ポンド建て英国金価格は2.1%下落し、一週間ぶりの安値2446ポンドとなっていました。
 
銀価格は、年間使用量の60%近くを占める工業用需要に牽引され、1オンスあたり1.3%下落の32.29ドルとなり、銀の年初来の上げ幅を10.9%に縮小していました。
 
ウクライナのゼレンスキー大統領は一方、ロシアのプーチン大統領に対し、木曜日にイスタンブールで和平交渉のために直接会うよう述べていました。
 
トランプ米政権の支持率向上に支えられたと見られるゼレンスキー大統領のプーチン大統領への挑戦は、週末にプーチン大統領がウクライナと欧州の同盟国による30日間の停戦提案を拒否したことを受けたものでした。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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