金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2021年8月16日)金・銀先物の強気ポジションは半分以上減少する中で、金は一週間ぶりの高さから下げる

金相場は、ロンドン時間昼過ぎに1週間ぶりの高さから下げていました。
 
これは、投機家が金・銀のネット・ロング・ポジションを50%以上削減しする中で、リスクオフセンチメントが弱まり、米ドルが上昇していたことが背景でした。
 
今朝の金スポット価格は、金曜日に米国指標で消費者センチメントが過去10年で最も低い水準に落ち込んだことを受けて1週間ぶりの高値となる1.5%の上昇を見せた後、本日午前中に0.4%減のトロイオンスあたり1772ドルと下げていました。
 
Metals Focusの南アジア担当シニアリサーチコンサルタントであるハーシャル・バロット氏は、「金曜日の急激な値動きからも、月曜日にも若干の利食いを誘発していました」と述べていました。
 
ドルインデックス(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は、先週金曜日に1週間ぶりの低水準に後退した後、本日ロンドン時間に上昇していました。
 
あるアナリストはMarketWatchに、ここ数週間の急激な下落により金先物は「 売られすぎ」になっていると述べていました。
 
「それ以降に見られる価格の反発は、今回の暴落が単に短期的な市場操作であり、金の需給力学を実際に反映していないという投資家の認識によるところが大きい」と続けていました。
 
金価格は、8月6日に発表された米国の雇用統計が予想を上回っていたことを受けて暴落し、8月9日のアジアセッションの早い時間帯に フレッシュクラッシュ(瞬間暴落)で4ヶ月ぶりの安値を記録していました。
 
最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジの効かせて取引をする投機家は、8月10日までの1週間で、金に対する弱気ポジションを3分の2以上増やし、強気ポジションを5分の1近くに減らしていました。
 
これにより、資金運用者のネット・ロング・ポジションは52%減となり、4ヶ月以上ぶり低さへと減少していました。
 
コメックス金先物・オプションのネットロングポジションと金価格の推移 出典元 CFTCとLBMAデータを基にブリオンボールトが作成
 
また、投機筋は銀のネットロングポジションを54%削減し、15ヶ月ぶりに最小となっていたことが、米国の規制当局である CFTC(Commodities Futures Trading Commission)のデータで明らかとなっていました。
 
また、前週すでにネットショートへと弱気ポジションを急激に増加させていたプラチナのネットショートポジションは更に2倍以上に膨らみ、13ヶ月ぶりの大きさとなっていました。
 
需要の3分の2が自動車触媒をはじめとする工業用途に集中しているプラチナは、先週5%上昇した後、今週月曜日の朝には1.6%減のトロイオンス1016ドルとなっていました。そこで、 金との価格の差であるディスカウントは、4月の最安値500ドルから、先週は800ドル近くまで上昇していました。
 
また、年間需要の約60%を工業用途に使用される 銀の価格は、前週の2.2%の下落に加え、1.4%下落のトロイオンスあたり23.46ドルとなっていました。
 
この銀の下落により、金と銀の相対的な価格を示す 金銀比価はさらに上昇し、75を超えて8ヶ月ぶりの最高値を記録していました。
 
原油は、本日発表された中国の経済データが予想を下回って、デルタ変異種の感染拡大が世界的な需要の見通しを悪くしたことから、3日連続で下げていました。
 
このデータによると、2021年7月の中国の鉱工業生産と小売売上高の伸びは共に急激に減速していました。
 
中国国家統計局は、外部の不確実性の高まり、感染拡大をしているCovid-19や洪水など、さまざまな要因をこの影響として挙げています。同局は、「 経済の回復は依然として不安定で不均一である」と付け加えています。
 
月曜日の欧州株式は、アフガニスタン、中国での予想を下回る経済指標、デルタ変異種の感染力などがリスク選好度を低下させているため、アジア市場に追随して下落していました。
ヨーロッパの先進国の証券取引所上場の上位600銘柄の株価指数であるストックス欧州600指数は、先週金曜日に10営業日連続で上昇をした後に、月曜日の朝には約0.6%の下落となっていました。 
 
そして、価格に反比例して変動する10年物国債利回りは、先週金曜日に記録した1週間ぶりの低水準を更新し、1.3%を下回っていました。
 
市場関係者は、アフガニスタン政府の崩壊が地政学的にどのような影響を及ぼすかを注視しています。週末にタリバンがアフガニスタンを実効支配することとなりました。これは、
米軍と連合軍の撤退により、戦場でのタリバンによる逆転劇が相次いだ後のことでした。
 
Gavekal Capitalの最高経営責任者であるLouis-Vincent Gave氏は、「単一超大国の時代が終わったとすれば、カブールの陥落は、米ドルと米国債市場にとって弱気材料となり、米国の安全保障の傘の下で 守られている国々にとっても弱気材料となるだろう」と述べています。
 
そして、「地政学的な争いが起きているときに、究極の不動の資産である 金にとっては強気になるだろう。」と続けています。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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