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日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の1.5兆ドルのファンドで金投資を含んでいたとしたら

1兆5千億ドル(約225兆円)の貯蓄を運用する日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、世界最大の年金基金です。
 
そのため、そのファンド・マネージャーは投資についての知識は高いと思うかもしれません。しかし、彼らは更なる知識を必要としています。
 
令和5年3月に発表されたGPIFの情報提供依頼 出典元 GPIF
 
金を森林や農地のような「流動性の低い」資産と一括りにすることは、GPIFがまだどれほど多くのことを学ばなければならないかを示しています。
 
しかし、知らないことを知ることは知識を蓄えるための第一歩です。2024年に金、ビットコイン、農地、森林を理解しようとしている今、日本のGPIFがすでに理解していることは何なのでしょうか?
 
2つのことで、一言で表すと 分散投資ということです。
 
まず第一に、GPIFは、日本の株式や債券だけを買うのではなく、 国内資産と海外資産を半々に分けて投資しています。
 
第二に、世界最高齢人口の年金貯蓄を株式や債券に振り向けるのではなく、株式と債券に50対50で振り分けています。
 
ここまでは賢明と言えるでしょう。GPIFの分散投資の方針は、日本の年金受給者や退職予定者のトータル・リターンを、株式だけや債券だけ、あるいは日本の証券だけに投資する場合と比較して、平滑化し、高めています。
 
これこそがファンド運用の在り方で、投資をする際に目指す、変動幅を最小限の収め、より高い利益を得るということを実現するための方法とも言えるでしょう。
 
しかし、分散投資について知っておくべき第三のことがあるのです。これが、GPIFが現在学ぼうとしていることです。
 
それは、株式と債券の投資を超える方法です。
 
ブリオンボールトでは、どのような投資方法がお客様にとって最適であるかということをアドバイスすることはできません。また、農地や森林への投資を薦めて保証することもできません。確かに、暗号「通貨」は高騰しています。
 
過去1年、5年、10年、あるいはそれ以上にわたる加熱した市場によって購入をしてきた人々によって急騰した価格でそれらの人々の利益が押し上げられています。
 
しかし、これまでの実績からも、株式を保有するポートフォリオからリスクを分散したい人は、ビットコインが米国株式と正の、そして明確でない相関関係を知っておくべきでしょう。
 
別の言い方をすれば、少なくとも過去10年間の分析では、株価が上昇するとビットコインは上昇する傾向がありますが、株価が下落すると下落する傾向もあるのです。つまり、暗号資産を少し追加することで、トータルのパフォーマンスは上がるかもしれませんが、株式市場が下落した際には、損失を相殺し、リターンを滑らかにするどころか、損失を悪化させることになるでしょう。
 
つまり、ビットコインは分散投資ではなく、強化投資ということになる。あなたがそれを望むのであれば、購入するべきでしょう。
 
しかし、GPIFの政策決定部署にこの投資を薦めるのは難しいでしょう。彼らが求めているのは安定と安全であって、ボラティリティを伴うより大きな収益ではないはずです。
 
では、金への投資はどうでしょうか?
 
GPIFのファンドに金を加えた際の成長率 出典元 ブリオンボールト
 
繰り返しになりますが、日本のGPIFは現在4つの投資商品枠に投資しています。
 
日本債券、日本株式、外国債券、外国株式へ、それぞれ25%ずつというものです。
 
このスプレッドは、GPIFが2001年に現在の形態になって以来、例えば日本国債だけに投資した場合と比べて、年率リターンがほぼ3倍になったことを意味します。
 
しかし、これらの債券の一部を保有することで、2008年の40%の急落はともかく、2018年の日本株による16%という大きな損失を和らげることもできたのです。
 
外国資産を50:50の割合で追加することは、GPIFが日本国内の株式と債券のみを保有するよりも優れていることを意味し、ブリオンボールトの分析では、2001年以来、年間0.5%ポイントの追加利益を享受しています。
 
これは、過去10年間、東京の株価指数であるTopixのヘッドラインリターンが世界の株式(配当込み)を上回り、東京の株式はMSCI All Countries Weighted Indexの8.9%ではなく、12.3%の年複利成長率を示しているにもかかわらずです。
 
なぜなのでしょうか?それは、日本の通貨が急激に価値を失っているためです。
 
マイナス金利と日銀によるQE(金融緩和政策)のために、円は為替市場で下落し、今世紀に入ってからその価値の3分の1を失っています。
 
つまり、外国株はTopixよりも1%ポイント多い13.2%のリターンを日本の投資家にもたらしているのです。
 
言い換えれば、外国株や外国債券を追加することは、特に自国の中央銀行がゼロ金利と容赦ないQEを行っていることによりで通貨安が進んでいる場合に、賢明であることは確かなのです。
 
しかし、上のグラフが示すように、GPIFは金を少し、あるいはもっと追加することで、より良い結果を出すことができたのです。
 
金をポートフォリオに加えた際のGPIFの2000年からの成長率の違い 出典元 ブリオンボールト
 
 
もちろん、GPIFは、光輝く金がすべての通貨建てで史上最高値を更新している今こそ、金を買うという考えに最終的に近づいているようです。 特に日本円においては
 
そのために、逆張り投資家は、今回のニュースが「金が更なる上昇をする」と叫んでいるように聞こえて心配するかもしれません。
 
しかし、GPIFは金を分散投資対象として見ていないのかもしれません。もしかしたら、ビットコインと並んで、金はリスク・リターンのプロフィールを平滑化するのではなく、むしろ激化させると考えているのかもしれません。
 
というのも、GPIFは現在、金についてあまり理解していないようだからです。
 
それは、金が最も流動性の高い資産であることを知らずに、流動性が低いと言っているからです。
 
いずれにせよ、金地金は現在に至るまで、主要な退職金ファンドで取り上げられることはありませんでした。
 
現物の金地金には利子も利回りもつかないため、年金受給者に定期的に利益を送り続けられるような収入の流れを作りたいという論理にはそぐわないのです。
 
このような市場を開拓し、1兆ドル規模の年金基金業界が、その現金のほんの1%でも金に投資するように促すことは、金業界の鉱山業者、プロモーター、ディーラー、カストディ・プロバイダーにとって、長い間大きな野望でもありました。
 
中央銀行もそうです。彼らは10年以上前に金の売却を止め、金を買い始めました。それは、欧米の投資家やトレーダーが利益確定の売却をして保有量を減らしているにもかかわらず、金価格が史上最高値を更新したことからも明らかです。
 
年金基金の資金が加わり、さらに欧米の投資フローが回復すれば、今後金価格はどのようなこととなるでしょうか.。
 
日本のGPIFの情報公開請求は、今から思えばトロイオンスあたり2200ドルを安く見せるかもしれません。
 
個人的な投資戦略に関しては、「バブル」と金融危機に関するこの素晴らしいレビューが、いくらかの希望を与えてくれるかもしれません。
 
パニックや危機がいつ起こるかはわからないのです。

 

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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